第二話:転校生
名門・箒星学院。今日も朝から生徒たちが朝練に明け暮れる中、高一のバスタークラスでは一つの速報が飛び込んで来た!
「大変よ! 快君が知らない女の子と歩いていた!」
「なっ……!」
カレカノ同盟全員が言葉を失った。今や世間で篠原快の名前を知らぬものはいない。掃除屋・TEAMの天才高校生バスターだ。
しかし、箒星学院では、彼の容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群が人気の理由だが。
「ちょっと翡翠! あんた快から何も聞いてないの!」
同じTEAMのバスターである山岡優奈は快の思い人であるはずの風野翡翠に尋ねたが、
「特に何も言ってなかったよ?」
さらさらのボブカットがわずかに揺れた。特に気にしないのも長年の付き合いだからこそ。何かあれば快が言ってくれると信じているからこそ、翡翠は特に嫉妬しない。自分の彼氏でもないのだから……
そしてすぐに噂の主はいつも通り教室に入って来るのだ。
「ちょっと快君! 昨日一緒に歩いてた女の子誰!」
「篠原! お前翡翠がいながら何を考えてるんだ!」
「そうよ! 見損なったわ!」
次々と浴びせられる批難。そして反論させてくれないのもこのメンツならでは。しかしそれを打ち破ったのは意外な人物であった。
「おい、お前説明してなかったのか?」
剣道部の朝練から教室にやって来たのは時枝修だ。それに快も相槌を打つ。
「ああ、こいつらすぐに突っ掛かってきてよ。箒星小の奴らなら絶対知ってるのによ」
それを聞いた幼なじみ達は驚く!
「おい、まさか陽子が戻って来たのか!」
「ああ、それにうるさいのもな……」
快は心の底から溜息をついた。そして予鈴が鳴るのだった……
予鈴から一分後、色鳥白真は猛ダッシュで教室に飛び込んで来た!
「快ちゃん! あいつが帰ってくる!」
白真は嬉しさ全開だ。しかし、それとは対称的な態度を快はとる。
「あいつ? あいつじゃ分からん。一体誰のことを指してるんだ?」
まるで答えたくもなさそうな表情をして、快は深い溜息をついた。
「龍二だよ! 瀬野龍二! それに咲もうちのクラスに入るって!」
「咲ちゃんが戻ってくるの!」
翡翠は歓喜の声をあげた。九条高校は寮制のため、しばらく篠原邸に戻ってこなかったのである。そんな彼女が帰ってくるというのだ。
「賑やかになりそうだな」
「全くだ……」
修の言葉に快はこれまで以上の溜息をついた。
「お前達! さっさと席につけ!」
担任の大原がチャイムより早い声着を出す。これで座らないものがいないだけ、このクラスは平和である。
「今日は転校生を紹介する。知っているものも多いと思うが瀬野、和泉、相川入れ」
そして三人の生徒が教室に入ると大歓声が上がった!
「うわあ! 可愛い!!」
「美人! 彼氏持ちか!?」
「TEAMのとこばっかりずるいぞ!」
「一人ぐらいうちに寄越せ!」
瀬野龍二以外を除いて二人の美少女に注目は注がれる。
「黙れ! 咲は俺の婚約者だ! 近寄るんじゃねぇ!」
元気少年瀬野龍二からの爆弾発言。少し頬を紅く染めた和泉咲を見てクラス中が絶叫した!
「ええ〜〜〜っ!!!」
しかし、それを笑みを浮かべて相川陽子は聞いているのだった。




