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第十四話:裏切った女

 細胞バンク支部。迷路のような構造になっている館内は余程方向感覚がなければ迷ってしまう。

 しかし、地図を見ている暇などバスターにはない。そしてもし迷ったときには必ず相手の気配を感じ取る。重要な場所ほど強い奴は出て来るものなのだから……


「お嬢さん、お困りかい?」

「困りはしないわ。道に迷わない限りね」


 陽子はそっけなく言い放つ。彼女が使った催眠術に応じなかっただけあってなかなかの気力を持つバスターであることは間違いない。


「そうかい。だが、俺はお嬢さんの抹殺が任務でね、ここで死んでもらわなければ困るんだよ」


 男はにたりと笑った。


「そう。だけど、私も任務遂行のためにあなたを殺さなければならないわ」

「殺しを認めないTEAMが言っても説得力はないが」

「そうね、だけど「影」は殺しの許可が下っている。全ては掃除屋の均衡を保つためにね」


 そして舞い散る血の雨。ほっておけば間違いなく死ぬ。


「なっ!」


 斬られたことすら分からなかった。しかし、自分は血を流している。


「あともって一時間。私は子供だから直接殺したりはしない。だからここで私と戦って寿命を縮めるかどうかはあなた次第。動けば30分も持ちはしないけど」


 子供とは思えない冷たい視線が男に突き刺さる。しかし、ここで男はその場に腰を下ろすと、


「酷なもんだな。掃除屋という業種は任務のために命をかけなければならないとは」

「それが私達の成すべきことでしょ」

「いや、違うな」


 男は懐から小鬢を取り出しそれを一気に飲み干すと、見る見るうちに再生していく!


「再生能力……性質が悪いわね」

「いや、少しばかり違うな。これはお前の一つ上の兄、相川学だ」


 陽子は声を抑えた。動揺を見せれば相手の思う壷だ。


「ほう、やはり訓練は積んでいるようだ。だが、これは信じるしかないだろう?」


 カツカツとハイヒールの靴音が近づいてくる。そして陽子は目を疑った!


「ごめんね、陽子ちゃん。お兄さん二人とも殺しちゃったわ」


 片手で引きずられた兄達の死体。それを引きずっていたのが香だった……




お久しぶりです!ようやくこっちも書けました。楽しんでくださると幸いです。

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