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2-22  反攻作戦  その3 クルトフ奪還。だが・・・


 各方面軍の幹部や勇者のパーティが招集された。

殿下が説明を始める。

「魔道銃部隊も体裁が整ってきた。

現在の所ハンドガンとライフルそれぞれ

500丁づつが行き渡っている。

それに各分隊に1丁の割合で魔道障壁担当を割り当てている。

これらの部隊を投入してまずクルトフを奪還する」


 皆がざわついている。

ついにやるのか!と言う雰囲気だ。


「静粛に。今まで通り正攻法で正面から当たっても効果は薄いと思う。

今回は魔道銃部隊をうまく運用する作戦を皆で考えたいと思う。

階級は関係無しにどんどん挙手して発言してくれ」


 ここが殿下の尊敬できる部分だ。

今までなら王族、貴族の言うことは絶対であり

命令は完全なるトップダウン方式であった。


 トップの判断が間違いであれば命を落とすのは前線に出る将兵だ。

特に世襲制の貴族の中には威張り散らすだけで無能と評価されている者もいる。

殿下は自分の魔王討伐軍には貴族階級であるという理由だけで

無能を登用したりはしなかった。


 平民から貴族まで分け隔てなく殿下と人事担当のブラン将軍の

お眼鏡にかかった者だけが採用されている。


 実際ここに集まっている軍人の中には姓を持たない平民であるのにも関わらず

佐官クラスまで出世している者もいるのだ。


 一人の若い軍人が手を挙げる

「重い鎧を着なくても良くなった分、機動力が増しました。

北部の山沿いにルートを作り海側にも部隊を配置して

挟撃するのはどうでしょうか?」


 違う軍人が発言する。

「魔道ライフルですがかなりの遠距離攻撃ができます。

狙撃兵の育成にも力を入れていただきたいです」


 書記官が皆の意見を書き留めていく。

最後に殿下がまとめた。


「今日の意見を参考にして新たな部隊編成と作戦の立案を行う。

次期は未定だが近いうち、とだけ言っておく。

解ってると思うが箝口令を敷くぞ。

皆いつでも出られるように準備しておいてくれ。以上だ!」


 会議が終わり殿下の側に行くと先にセシリアが話をしていた。

「場合によっては聖女隊も小分けにして各部隊に

配置しては、と思いまして」

「おお、聖女殿。ナイスアイデアですぞ。

しかし能力の高い上位クラスはどこにでも駆けつけられるように

自由な立ち位置に居た方が良いかもしれませんな」


 セシリアと目が合った。

彼女は軽く俺に会釈してスタスタと歩いていってしまった。

「殿下、砂金ならぬ砂ミスリルの採取予算の計上ありがとうございました」

「いや、当然だよ。鉱脈探しはどうなっている?」

「難航してますね。教授と話し合って継続しますね」

「勇者殿にこんな事を頼んでしまいすまないな」

「いえ、必要なしかも俺にしか出来ない仕事ですよ」


「ところで、その、エリック」

「なんでしょう?」

「セシリア殿はなにか変わったところはないか?」


 う、感づかれたか?

実はあの後たまにではあるがこっそり二人で会っている。


「えっと。特に変わった様子は・・・・と言うかなぜ俺に聞くんです?」

「う、うむ。図書館での調べ物チームのよしみというか、その、なんだ」

 

 うわ、殿下、顔真っ赤だよ。

俺、バレたら絞首刑かも。

「え、ええ。なにか気がついたら知らせますね」

「すまんな」


 すぐに誰かが殿下に話しかけてきたので俺もその場を立ち去った。

何時かセシリアとの事ははっきりさせなきゃならないと思うのだが。


 今は戦時中だし俺もセシリアもそれなりに重要なポジションにいる。

普通に考えれば勇者と聖女のカップルってお似合いと言うか

ありがちと言うかカミングアウトしちゃえば

それなりに周りから祝福されんるじゃないかと思う。


 が、現実は厳しい。

俺もセシリアも周りの誰かを傷つける事を恐れて

コソコソしてしまっている。

そのくせやめられない。

しかもお互い好きだとか愛してるとか言わずに

ずるずると関係を続けてしまっている。


 真面目に考えると気が重くなるばかりだな。

そうだ、後回しにしてしまえ。


~~~~~~~~~


 作戦が決まった。

魔王討伐軍の魔法部隊の中でくうを使える50名ほどに

魔道銃とライフルが渡され訓練が施される。


 この部隊は北の山脈沿いに進みクルトフの西側まで行く予定だ。

くう使いと言っても地上を数百メートル単位で移動できる位の能力なので

多少時間はかかる。

東側の正面から攻撃を開始すれば西側は手薄になるはずだ。


 正面突破部隊は最低限二人一組となりお互いの背中を守るように訓練を行った。

突然空間から現れる魔人に対処するためである。

この場合はハンドガンの方が威力があるだろう。


 クルトフ近くまでの街道はさらに広げられ

軌道馬車を利用した大部隊の移動はかなりの速度で行われる。

前線に着くまでの将兵の疲労はかなり軽減されてきた。


 今回は王都から一気に大部隊を送り込むワケではない。

常駐しているクルトフ方面軍と少しずつ交代していく形が取られた。

魔道銃部隊も配置につき始めている。

くう部隊は既に第一陣が出発していた。


 そしてついに殿下の号令が下った。


 城壁の上に居る魔人達は狙撃兵の餌食となる。

どこから弾丸が飛んでくるかも解らぬまま魔人達は倒れていった。

高い城壁の真ん前にある平原はいつも通り通常部隊が隊列を組み威圧する。


 空間を繋ぎ平原に降りてくる多数の魔人も

魔道銃部隊の餌食となっていった。

散弾状にバレットを発射したり、カマイタチ状の風を操る魔人も居たが

ほぼすべてが魔道障壁に阻まれる。


 攻城兵器が門を破壊し始めた。

魔人はあきらめたのか数が少ないのかは解らないが

今回は邪魔してこない。


「門が開いたぞぉぉぉぉぉ!」

大量の将兵がクルトフ市街地になだれ込む。

「一般市民は戦闘が終わるまで建物から顔を出すな!

全隊!魔人が占拠してる中央役場まで一気に突っ走れ!」


 ほぼ同時刻。西側に回り込んだ部隊も城壁を乗り越え中央を目指した。


 数時間後。

役場前の広場に皆が集まった。

生存者の確認と怪我人の保護が優先される。


「殿下!奪還作戦成功ですね!」

俺は殿下に走り寄った。

「エリック、いろいろ腑に落ちない点があるぞ。

城壁を突破した時点で魔人軍は撤退を決めたらしい」


 町中も役場も、そして魔人に接収されていたブラン家の屋敷も

もぬけの殻だったのだ。


「幸いこちらの軍は消耗していない。

このまま偵察部隊をパールバディア国境まで送り込んでみる」


 殿下が命令を下した。

偵察部隊は馬に乗り国境を目指して出発していった。


 確かになにかがおかしい。

今まではクルトフの維持にかなりの力を入れていた魔人軍がこうもあっさり

撤退していったのにはなにか理由があるハズだがそれがわからない。


 答えは数日後にやってきた。

「大変です!ツイーネにいた魔人軍がエスタンを落とし

ウーファまで侵攻してきました!」




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