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2-16 終わりなき攻防戦 その1 エリック編 新兵器


 クルトフは奪還できていないし

ツイーネの国境線も突破できないで居る。

膠着状態が続いていた。


 だがサフラスからグレンヴァイスに抜ける街道の整備は着々と進んでいた。

相変わらず魔人軍はこの二国に関しては無視している状態である。


 グレンヴァイスの首都は海から少し内陸に入った

平野部にある小高い丘の上にあった。

 

 だが今は北の山岳地帯の中腹に政府機能を移動している。

もともと温泉地で王家や貴族の別荘が建ち並ぶ観光地であったため

新たな建設はあまり必要ではなかったため移動はさほど手間でもなかった。


 まずはサフラスを通り抜けこの温泉地までの

街道を広げている最中だ。


~~~~~~


 勇者としての俺の仕事は魔王との直接対決である。

だが俺自身まだまだ未熟な点が多々ある。

なので交代でクルトフやツイーネ国境に行き来する合間を縫って

老師の指導を受けていた。


くうふうすいの基本魔法に関しては

申し分ないじゃろ。だがまだまだ発想が貧困じゃな」

「発想ですか」

「そうじゃ。例えばこんな事も出来るぞい。

カミーラやってみせてくれ」


 カミーラは数メートル離れたところに自分の身長程度の火柱を生成。

その火柱は龍の形となりゆらゆらと動きながらこちらを見ていた。


「おお、生きているみたいだ。カミーラどうやってるの?」

「炎の出力を調節しながら風魔法で整形してるの」

「器用だな。だがそれ戦場で役に立つの?」

「こけおどしにはなるわね。見てて」


 練兵場の中央には巨大な火柱が立ち上り

高さ数十メートルはある龍が生成された。

「直接これが戦場で役に立つ場面はないと思う。

でも魔力制御の練習になるのよ」


「『発想』が大切なんじゃよ。魔法や剣の訓練ばかりでなく

例えば普段の生活や娯楽なんかも大切じゃな。

発想のヒントがどこに転がっているかわからんじゃろ。


 仮にあったとしても気がつかずに素通りしてしまう事もある。

ま、ワシの人生そんな事ばかりだったので

弟子達には同じ苦労はさせたくない。


 どんどん見せるから学んでいけ。

よしエリック、ワシに向けて石弾を発射してみよ」


 俺は黙って小石程度の石弾を当たっても死なない程度の威力で射出した。

が老師の手前数メートルのところで見えない壁に当たってはじかれてしまった。


「老師、今のは?」

「魔力障壁じゃ」

老師は詳しいメカニズムを教えてくれた。

バリヤーとかシールドとかいう名前でSF小説や

漫画にでてくる奴そのもじゃないか。

老師は仕組みを説明してくれた。


「なるほど、その『魔素』っていうのはすべての魔法の元素?

みたいなものでしょ。

それを自在に操れれば思いつく魔法はなんでもできちゃう

みたいな?」

「その通りじゃ。

じゃが基本魔法を極めないと魔素のコントロールは難しい。

エリック、お主ならその境地にたどり着けるかもしれん」

「いや、かも、じゃなくてたどり着きたいですね。是非とも」

「がんばれ」


「ところでツイーネ国境での戦闘でマリアンが似たような魔法を

魔道具を使って見せてくれたんだけど老師が関わってるんですか?」

「女王からの依頼を受けての。制作は苦労しとる」

「俺も加わっていいですか?」

「うむ、勇者の申し出なら女王も断るまい」


 マリアンが見せてくれたのは結果だけだ。

本体は見せてくれなかった。

おそらく固定化にも固定する魔法使い独自の発想が必要になってくるのだろう。

老師もそこには苦労しているみたいだ。

もしかしたら前世の知識が役に立つかも知れない。


~~~~~~~~ 


 老師、俺、カミーラ、マリアン、マチルダ女王が

王城の中に設えた実験室に集まった。


 女王が小さな四角い箱を取り出す。

金属製の弁当箱くらいの箱だ。

ドワーフに作ってもらった錆びない鉄で作られているらしい。

見た目や感触はステンレスだな。

なにかこの世界にステンレスが存在する事が不思議に感じた。


 女王が説明する。

「戦場で何度も連続して使用することを想定するとこれくらいの大きさになるのよね。

それに発動するきっかけもわかりやすいものが欲しいの」

「これの中身はどうなっているんですか?」

「中身は魔石がつまっているだけね。

固定に使う部分と燃料に使う部分に分かれているけど」


 熟練度の高い魔法使い、例えば老師なら触媒も詠唱さえも必要としない。

だが魔道具に固定するとなると魔法が使えない者が使えるように

設計しなければならない。


「固定化に使う魔石はどれくらいなんですか?量ですが」

老師が教えてくれた。

「これくらいじゃな」

手の親指くらいか。

「案外小さいんですね。残りは燃料か。

燃料は近接してないと駄目なんですか?」

「そうじゃな。固定化に使用する部分とつながってなければならん」

「じゃあこうやって繋いでみては?」


 俺は図を書いた。

前世で見た拳銃の形を書き線を延ばして弁当箱に繋げている絵である。

「この変な形の発動装置に魔法を固定化して線で繋ぎます。

この導線は中身を魔石で作り燃料ボックスに繋げばどうでしょうか?」

「導線に仕込むのは大変じゃな。魔石は鉱物みたいなもんじゃからの」

「例えば魔石を細かく砕いて魔素で柔軟性がある紐状に

繋いでみることなんて出来ませんかね?」


 カミーラがつぶやく。

「そんな話聞いたことない。老師なら出来るかも知れないけど

大量生産は無理でしょうね」

「うーん、駄目かー」


「あのー・・・・」

マリアンがおずおずと手を挙げた。

「確か例のメダルってミスリル鋼に魔石を混ぜて作った物ですよね」

クレイグの仕掛けた精神干渉魔法を防いだ奴だっけか。

「ミスリル鋼と魔石を混ぜて細い糸を作り、編み上げて頑丈な太い紐にすれば

柔軟性を持たせる事ができるのでは、と」


 俺はワイヤーをイメージした。

「なるほど、実験してみる価値はあると思う。俺は賛成」

女王も相づちを打つ。

「そうね、ドワーフに頼んで作ってもらいましょうか。

ところでエリック、この発動装置の形なんだけどあなたが考えたの?」


 やばい、言い訳を考えてなかった。

「え、えーと・・・そうです。ここを握って人差し指が当たる小さな、

えー、引き金?を引けば発動するようにすればいいんじゃないかなって」

「ならこのこの突き出てる部分は?」

銃口の部分か。

「コレは発動したい場所に照準を合わせやすいのと射出孔を開けておけば

他の魔法、例えば石弾を発射することもできるかな、と思いまして」

うはー汗かいてきた。


 ここで老師が助けてくれた。

「エリック、それが『発想』じゃよ。その調子でどんどん頼むぞ。

石弾を射出する魔道具はなかなか良いな」


 女王がまとめた。

「それではマリアンはドワーフへの依頼をお願い。

発動装置の仕組みも相談しましょう。

エリックはマリアンと話し合ってくれるかしら」


~~~マチルダ視点~~~


 皆が実験室を出る。

私はマリアンを伴い執務室に行った。

「ねえマリアン、なぜあの子がハンドガンの形状を知っていたのかしら」

「いやー、私もそれを先輩に聞こうと思ってたんですよね」


 我々が使う個人装備のレーザー銃も基本的な形は同じである。

エネルギーパックに導線で繋ぐ方法まで一緒だ。

「あれを『発想』で作れるものなのかしら」

「今はそう信じるしかないでしょうね。

エリックの素性は間違いなくこの国の生まれだし」


「もしかしたら星間連合が送り込んだスパイとか?」

「それは飛躍しすぎでしょうね。

もしそうならあんな提案しないでしょう、

ばれるきっかけになっちゃいますから」


「そうね、ちょっとナーバスになりすぎたかしらね。

しばらくこの件は保留にしましょう。

でもそれとなく観察をしてみて頂戴ね」


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