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2-15 魔人の国のお姫様  アケミ編 その2


 魔人の国での生活が始まった。

与えられた部屋は魔王城の一室。

見晴らしが良いし広くて快適。

ベッドもクイーンサイズだし。


 数日は城の中を探検したり付き人さんに案内して貰って市街地を歩いたりした。

どうせこの国から出られないからもっと遠くまで足を伸ばしてもいいよ、

と言われていたので農村地帯や観光地となってる湖なんかも行ってみた。

が、それも次第に飽きてしまった。


 観察してみると日本、そしてルド王国での暮らしとの違いが否が応でも目に付く。

特に着る物と食事の違いは大きい。


 食事に関しては私が拉致された頃にルド王国に潜伏していた

スパイのレポートが話題となっていた。

通称ニナ・レポート。


 見せて貰ったが筆者がルド王国内、主に首都で食べたもののいわゆる食レポだった。

おおまかではあるが原材料まで併記されている。

が、文章の主軸はいかに美味しかったか、

であるため製法が解らないメニューに関しては憶測を呼んだ。


 魔王から相談を持ちかけられニナ・レポートにあるメニューの再現に

手を貸すことになった。


 とは言え私もただの女子高生だったしそんなに詳しくない。

魔王城お抱えのコックさん達と試行錯誤することになったのだが、

これが意外と楽しかった。


「まずはデミグラスソースに挑戦しましょー!、おー!」

「「「「お、おー」」」」

心なしかコックさん達のテンションが低い。


 うろ覚えだけど家庭科の授業で習った知識をたぐりながら試行錯誤してみよう。

確か1番フォンから作るんだっけ。

この国で手に入る野菜類は案外ルド王国と変わらない。

ニンジン、タマネギ、ニンニク、トマト等は手に入った。

塩、こしょうもある。

牛肉はこちらでは水牛を食べるらしい。

すじ肉を用意して貰う。


 炒めて煮込めば良いだろう的なかなり適当な作り方で最初は失敗。

トマトは後からの方が良いみたいだし、アクを取って長時間煮込んで

さらに粗い布でこさなきゃならない。

2番フォンも似たような要領で作った。

 

 小麦粉とバターを使ってエスパなんとか・・・忘れた、

を作って混ぜて煮込んでアクとって煮込んで煮込んで・・・・


「んー、なんかちょっと違う気もするけど一応ソースっぽい物ができたわ。

コックさん、試食してみて!」

「コレは濃い味ですね。パンに付けてもイケルし肉にも合う」

「ジャガイモ、ニンジン、タマネギと牛肉を入れて煮込めばシチューができるかも。

やってみて」


 そんな感じで試行錯誤の末メニューを増やしていった。

「後は余った野菜の皮とか肉の切れ端とか捨てないで全部煮込み続けてみて。

それだけでもソースが出来るかも」


 出来上がった中濃ソースもなんかちょっと違うけど、だいたいオッケー!

小麦粉はあるし豚肉?もある。まあイノシシ肉だけど。

コレはアレが出来ますよ。

お好み焼き。

「鉄板作ってもらおう!」


 簡単な金属製品なら魔人だけでも作れるそうだが

鉄工業の核となるべき部分はドワーフという種族が担っていた。


「そう言えばルド王国にもいたけど。魔人国にも居るの?」

付き人さんが言うにはドワーフは鍛冶仕事があれば請負で引き受けてくれるので

敵味方関係なく仕事をするそうだ。


 簡単な図を書き作ってもらうためにドワーフの工房を訪れる。

「こんにちは!これ作ってもらいたいんだけど」

手書きの設計図を見せる。


「姫様の依頼なら断れないなあ。

いいよ、作るよ。しかしこりゃまた簡単な仕事だね。」

「ありがとう、おじさん!」

「ところで姫様は俺たちの言葉がしゃべれるんだね」

「うーん、ちょっと違うけど会話は成立するわね」

「普段は通訳がいないと細かい話は伝わらないし、さらに細かい注文だと

すりあわせが難儀でね」

「そうなんだ」


 ここであることを思いつく。

「ねぇねぇ、お願いがあるんだけど。

私がドワーフ族と会話できることは内緒にしてくれない?」

「隠す必要ないと思うが。まあ、姫様がそう言うなら秘密にするよ」


 そんなこんなでニナ・レポートの解説本とも言うべき

本格レシピ本の第一弾が出版された。

魔人の国ではちょっとしたブームとなり食生活に劇的な変化が訪れたのだった。


 それと同時に服飾関係改革にも着手。

自分でも言うのもなんだが、裁縫は苦手っす。

コレは職人さんたちに描いた絵を見せて作ってもらうことにした。


「姫様、この布地を極端に節約したスカートですが子供用ですか?」

「まさか。全年齢対象」

裾が広がっている普通のミニスカートを作ってもらい

スタイル良さげなモデルさんを見繕って来て着て貰う。


「あらー、やっぱし足長いと格好良いわね」

私の評価にモデルさんがちょっと照れている。


「こんなに大胆に足見せちゃっていいんですかね?」

大胆と言うほどでもない。膝上5cmくらいだし。


「もっと短くても良いかもね」

「それはちょっと・・・・」

「でも涼しいでしょ?」

「はい!ちょっと恥ずかしいけど快適ですね!」


 魔人の国は密林の中にあるので湿気が多い。

夜は涼しくなるけど昼間は結構蒸し暑いのだ。


 このほかにタイトとフレアを作ってもらった。

が、色のバリエーションが少ない。


「じゃあ次は染め物ね」

一般的には草とかを染料の原料にしているみたいだけど、

色合いがグレイとか茶色とかくすんだ緑色とかが多くて暗い感じのものばかり。


 明るい色合いのために染料となる植物を探すところから始めないと。

以前TV番組で見た桜の木でピンクが作れるのを思い出した。

桜はないけど替わりのもを探してみよう。


 綺麗な花が咲く草木は片っ端から試してみてかなりのカラーバリエーションが増えた。

女性用だけでなく男性用のシャツもカラフルな物が売られるようになった。


 ミニスカートも好奇心旺盛な十代前半の女の子から流行り始め

町は華やかになっていった。


 とまあ、こんな感じで結構忙しく過ごしているウチに1年ほどたってしまったのだ。

この国を脱出出来ないまでもなんとかエリック達に連絡を取りたい。

その手段としてドワーフ族にとあるお願いをしていた。


 ドワーフ工房の親方が教えてくれたことがある。

「ここから北に行きガウンムア王国の国境沿いにある山脈からはミスリル鋼が取れるんだ。

そこにはガウンムアや北の大陸からも同胞がミスリルを採掘に来るんだよ」

「勝手に国を出入りしていいの?」

「ドワーフだけは特別扱いなのさ。届け出は必要だけどね」

「じゃあ北の大陸、出来ればルド王国からきたドワーフ族に

私からの手紙を託す事はできるかしら?

あの・・・・出来れば秘密で」

「うーん、魔王様にばれたら怖いなあ。でも手紙を託すくらいならやってあげよう。

姫様からの依頼の鉄板が結構売れてるんだ。儲けさせてもらったお礼に承るよ」

「ありがとう!」


 手紙はエリック宛に日本語で書いた。

これなら盗み見されてもわからないだろう。


 魔王は私にそっくりなこと、自分はお姫様扱いで丁重に扱われてること

奴属の首輪のおかげで魔人の国から出られない事、等々を書いた。

手紙をドワーフに託す。


「どうかエリックに届きますように」



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