14 岩崎警視正の雄叫び
「チェイング!」
動画を最後まで視聴した岩崎警視正が叫んだ
「ばかな!」
その声の大きさに捜査一課は静まり返った
エリート様に逆らえる現場の人間はいないからである
方や警視正の国家公務員
方や巡査や巡査部長の地方公務員
どこかの
「事件は原版で起きているんだ!」
と叫んだドラマを思い出せばそのヒエラルキーはご理解いただけることだろう
下っ端は
「はい」
以外の選択肢がないという旧日本軍も真っ青な組織なのだから
しかし、岩崎警視正が叫ぶのも無理はなかった
名古屋市内で連続して起こっている人体放火事件の重要な内容がよりにもよって動画サイトで公開されているのだ
ガソリンをビニール袋に入れる
というのは容疑者を犯人と断定するための材料として捜査本部で秘匿されていた
犯人しか知りえない証拠
それを知っていたということで自白が成立する
昔から容疑者を尋問する際の手段として使われてきた
検察も起訴するための材料として使っている
ところがその秘匿情報を動画サイトで公開しているのだ
捜査本部の責任者として岩崎警視正が叫ぶのも当然であった
気がついたときにはもう何万人もの人間が見ていたのだ
これでは証拠にならない
犯人断定の材料がなくなってしまった
つまりは捜査が暗礁に乗り上げたどころか、頓挫したも同然なのだ
立て直しができるのか?
誰もがそう思うレベルのやばさであった
それだけではない
動画サイトではいじめの被害者ではなく
その周りで見ていた人間に対して犯罪を唆していたのだ
犯人を捜すのが余計に困難になっていた
通常犯罪を唆すというのは教唆に当たる
でも動画サイトで数多くの人間に対して言うのは微妙である
特定の人間に対してならいざしらず相手もなくカメラに向かっていった録画を投稿しただけ
おまけにその前にいじめを見ても黙っていて何もしなかった卑怯者と糾弾しているのだ
人間性の悪さに苦言を呈す
その一環としてだと言われてしまえば微妙なラインになる
また
「教唆の意思はなかった」
と言われれば裁判では教唆として取られない可能性もある
いや取られないだろう
検事なんて勉強しかしてこなかった法律バカばかりなのだ
男性優位の職場なのをいいことに同僚の女性にセクハラをするという幼稚園レベルの精神性
もはや負ける以外の選択肢がなくなったといっても過言ではないだろう
少なくとも
第三のキラ
と呼ばれる連続放火犯の逮捕は遠のいた
一度の失敗ですべてを失うというのが警察なのだ
すべてが減点主義
一度のミスが命取り
某お笑い番組ではないが
失敗してはいけない
である
優秀な分それがわかる岩崎警視正ゆえに叫ぶしかないのであった




