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「さて...」
尋が風呂を上がるまでに夕飯を作ろう。溜めてないから今日はもうサッと流しただけで上がるかもしれないし、俺も腹が減ったからな。だから今晩は得意の時短レシピだ。
まずはお湯の準備。沸かしたてが良いし、ポットに残ってるのじゃあ足りない。
次に包装をはがす。俺は分別をしない奴は燃えるゴミだと思っているので、プラ包装は右の袋だ。そして──
「あっ」
──カチッ
最後に、沸いたお湯を注いで3分待つ。正しく3分計測できた試しはない。
「あーーっバカ俺!!時間経つと麺伸びちゃうじゃん!!早く上がってくんねぇかなぁ...」
という訳で時短ラーメンの出来上がり。掛かった時間は3分と、あっという間だけの素晴らしいメニューだ。尋が来なかったら2つとも食べよう。
「おいっす。どーも」
「元気いいね、何かいい事でもあった?」
「久々に水を浴びて活性化した。芽生えそう」
「ちゃんと土流せよ」
黒いジャージを着た尋は、無言で椅子に座りカップ麺をすすり始めた。
「頭と体同時に洗った。早いでしょ」
「早すぎ。シャンプーとか教えてないのによく分かったな」
「分かんなかったよ。だから同時に洗ったの」
「混ぜたのか......?」
その後、2人とも黙々とラーメンを食べた。テレビも無いので、ただ麺をすする音だけが広いリビングに響く。あまり家に人を入れない俺には、不思議な時間が過ぎた。
「祥太ってさ、どうやって生計立ててるの?」
カップ麺を平らげた尋は髪をかきながら部屋を見渡す。山よりは狭い家なんだけど、そんなに気になるのか。
「俺NicoTuberなんだよね」
「NicoTuberって、動画のやつ?あれってそんなに稼げるの?」
「そうそう、爪楊枝を何回折れるかっていう動画が20億回再生されて、主にその広告収入で生活してる」
「えぇ...そんな動画を再生するなんて、世の中暇人だらけだね」
さらに定職に就いてないじゃん、とまで言われた。しかしうちの学校はバイトすら禁止だ。まぁそんな校則、俺には理解できないし律儀に守るつもりは無いけど、テキトーに動画をあげたらバズってしまったんだから仕方ない。
「じゃあ私ヒモになるわ。よろしく。その気になったときに自立するよ」
「その気になったときか...まぁとりあえず明日は生活用品一式どっかでそろえてくれ。俺は学校」
そういえば明日までの数学の課題が出されているんだった。四次方程式の解の公式を利用して五次方程式の解の公式を導き出せ、というやつ。まだプリントも見てないよ。出来たら評価が凄く上がるらしいから早く取り掛からないといけないのに、遅くなってしまったな。
「ホントにいいの?マジあざす!」
風呂に入った後、ソファで丸まって寝ている尋を無視して部屋で寝た。久々にぐっすりと眠れた夜だった。




