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ハルさんちのねこ。  作者: 百瀬百田
Ⅳ お前もう辞めろよ…辞めていいんだよ…?
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2 それNGワードだから!




 タララン♪タララン♪タララン♪


「お、客か?」

「さあ?」


 室内に鳴り響いたお馴染みのインターホンに応答すべく、みず菜を切り終わった手を洗ってモニターに近寄る。画面を覗くと、そこには噂の少女が映っていた。

 思ったよりも早い帰宅だ。


「あれ?もう帰り?」

「はい。今日は始業式だけなので」

「あぁそっか。じゃあエントランス空けるね」

「お願いします」


 短い会話を交わし、エントランス前のドアロックを解除する。

 同居が決まってからみあには合鍵を渡してあるので、こうしてわざわざインターホンを鳴らさなくても部屋には入れるのだが、みあ曰く「帰ってきましたという合図になります」だそうだ。

 ちなみに、この方法が実践されるのは今日が初めてで、昨日の晩にみあから言い出して決めたことだ。その時に、「帰って来られて不都合がある時は応答しなくて大丈夫ですから」とも付け加えられたが、不都合がある時なんてほとんどないと思う。


 …やりかけのエロゲーやらなんやらを保存して閉じるくらいの時間は、エントランスからエレベーターホールを通ってエレベーターを上がりこの部屋に着くまでの時間を考えると余裕で出来るしな。


 付属の受話器を置いて料理を再開しようと踵を返すと、目の前に目をカッと見開いた早川が立っていた。


「おわっ!ちょ、何だよっ!」


 気配もなく忍び寄っていた早川にちょっとゾッとさせられる。

 つか、近過ぎだから!!


「誰、今の…」

「はぁ?てか離れろっ!」

「誰の声か聞くまでは離れない!絶対にだ!」


 うわぁ…めんどくさ…


「分かった!教えるから離れろっ!」

「離れたぞ!」

「ったく…誰っていうか、今のが例のみあちゃんだけど?」


 俺の家にあんな可愛らしい声の少女が他に訪ねてくる筈ないと考えれば分かるだろう。訪ねてきたら大問題だ。そしてそれはきっとゲームの世界だ。


「お前いないって言ったじゃん!」

「もう学校終わったんだと」

「そ、そうか!早くて良かった!」

「お前、ひょっとして顔見るまで帰らない気だったな?」

「今時の女子高生はあんなに可愛い声をしてるのか…」

「勇、俺の話聞いてる?」

「なんて俺好みの可愛い声!」

「聞けよ!」




 タララン♪タララン♪タララン♪



「キターーー(゜∀゜)ーーー!!」

「勇はここで待ってろ」

「えー!」


「待ってろ」


「りょ、りょうかーい…怖ぇ……」


 背後から呟く声が微かに耳に届いたが、全力で無視する。

 全く、こうなることが分かっていたから早川をみあに会わせたくなかったのだ。みあが早川好みの声の持ち主であることは良く理解している。

 いや、声だけじゃないか…。


「おかえり」

「ただいま…です」


 玄関のドアを開けると、白と紺のセーラー服に身を包んだみあがちょこんと立っていた。俺と生活を始めて1週間の間は出かける時も帰ってくる時も一緒だったから、こうしておかえりと声をかけるのは何だか照れくさい。少し俯いて耳を赤くしている彼女も、どうやら俺と同じ気持ちのようだ。

 玄関に足を踏み入れたみあは、最初に見慣れない靴が目に入ったらしくきょとんと首を傾げた。


「お客様ですか?」

「俺の友達だよ。紹介するけど、絶対俺の傍を離れないようにな?」

「?は、はい」


 みあを後ろに連れて歩く中、リビングにいるであろう親友の顔を思い浮かべる。みあを視界に捉えた瞬間のヤツの反応は想像に容易かった。

 俺がみあを守ってやらねば。



 俺は意を決してリビングの扉を開けた。



「おっ、おかえりー」


 見るからに上機嫌な早川だったが、それを悟られまいとしているのか、はたまたイイ男でも気取りたいのか、ソファーに腰掛けて滅多に見ない新聞に目を通していた。片手には勿論、コーヒーを持っている。

 新聞を読んでいるとみせかけて、チラチラとこちらに視線を這わせていることに気付かれていないと思っているらしい。その光景に俺は溜め息を吐かざるを得ない。


「勇、紹介する。俺の知人の娘さんで同居人の眞城みあちゃんだ」


 そう言って、ヤツの視界にみあが入るように俺は左に少しだけ移動した。みあは俺の言葉と同時に例の如く深々とお辞儀をしてみせる。


「は、はじめまして。眞城みあと申しま



  「ロリ…っだと…っ!?!」



 顔を上げたみあを見た瞬間、早川はガタッと音を立てて立ちあがり目を見開いて叫んだ。その声に驚いたみあは顔を上げた姿勢のまま硬直している。俺は思わず右手で顔を覆った。


「勇、頼む。落ち着け」

「は、遥!お前高校生と同居してると言ったよな!?あれは何か、俺を欺くための嘘か!?」

「だから落ちつけ。それ以上言うな」



「どう見たって中学生だろ!!!」

「バカっ!それNGワードだから!!」



 慌ててみあを見ると、彼女の肩は小さくプルプルと震えていた。マズイ。何とかフォローを入れなければ…!


「み、みあち


 「ちゅ、中学生じゃありません…っ!」


 彼女は珍しく(彼女にしては)大きな声を出したかと思うと、自室へ続く室内階段めがけて駆け出した。更に階段を駆け上がりながら

「じゅ、17歳なんですから…っ!」

と続ける。毎度思うことだが、彼女のこういう妙に俊敏な動きは実に仔猫を連想させる。って連想している場合じゃないけど。


「ロリッ子JKだと…」

「お前少し黙ってろ!」



 そう早川に告げて、俺はみあの姿を追った。





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