はじめての休日①
その日エリスが起きて一階の食堂に降りると、アンネもドグラスもなんだか嬉しそうな顔をしてエリスを待ち構えていた。
「えっと、おはようございます……?」
「エリス、そろそろここの暮らしには慣れてきたかい?」
「はい。お二人にとっても良くしてもらっているので!」
「そうかいそうかい。でも、エリスはここの村のことをまだあんまり知らないだろ?」
「今日は休みにするから、見てきなさい」
実の親でもないのに、こんなに良くしてもらっていいのかな、と思いつつ、エリスは素直に喜んで休暇を受け入れた。確かに、ノストヴァインに来てからずっと美食亭にいたせいで、村の全体のことはあまりわかっていなかった。
「で、一人で放り出されても困るだろうから、あいつに頼んでおいたよ」
「あいつ?」
「そろそろ来るんじゃないかね」
いつもの通り元気よく扉が開いて、イェンスが入ってきた。いつも通り魚のたっぷり入った袋と一緒に入ってきたものの、普段着ているよれよれのシャツではない。どうやら新品らしい、というところにエリスが気がついて首を傾げていると、イェンスは恥ずかしそうに笑っていた。
「マルガレータが新品を着ていけって聞かなくて……」
「いいじゃない。いつもより数割男前だよ」
「いつも男前だろ!」
アンネとイェンスが言い合う中でも、ドグラスはいつも通りに朝食を用意していた。昨日の残りをアレンジしたものらしい。まかないメシも好きなんだよ、と言いながらイェンスは座って食べ始めていた。新品のシャツにスープがはねるんじゃないかと心配になりつつ見守っていたら、イェンスの服の襟の部分に小さく白い花の刺繍が入っているのを見つけて微笑ましい気持ちになった。きっとマルガレータが選んだものなのだろう。それにしても、どうしてそうやって服装に気を付けてきたのか、エリスにはさっぱりわからなかった。
「えっと、話が見えないんですけど……」
イェンスの隣に座って一緒に食べながらエリスが確認すると、アンネが豪快に笑っていた。一人首を傾げるエリスが可笑しいらしく、アンネはしばらくゲラゲラと笑って、それからやっと話してくれた。
「今日はイェンスがこの村を案内してくれるよ」
「案内するほどのものはないけどね」
散々アンネが笑ったせいか、イェンスは苦笑いしながらそう言った。エリスの村よりはずっと大きいものの、ノストヴァイン自体はさほど大きな村ではない。案内、と言うこと自体少し気恥ずかしそうにしているイェンスを見て、さっき言っていた『あいつ』がどうやらイェンスのことらしいと理解して、エリスは勢いよくイェンスの方を見た。
「いいんですか!」
「うん。今日は特に用事もないし。マルガレータも本当は一緒に来たがってたんだけど、今朝は咳が止まらなくて」
「大丈夫なんですか?」
「うん。よくあることだし、薬は飲ませてきたからあとは寝てれば治る。また今度遊んでやってよ」
マルガレータが一緒に来たがってくれたという事実がエリスにはもう嬉しかった。今度はマルガレータと二人で遊べたらいいなあ、と思いつつ、エリスはイェンスに手を引かれて、村へと飛び出したのだった。
更新が遅くなりました。書きだめがだいぶ減ってきていますが頑張ります




