恐竜くんと勉強
カツカツ、カツ
トンットンッ
「よってこの式の解は6になる訳だ。」
窓際から気持ちのいい風がそよいで、先生の声とチョークの音だけが響く授業中。
俺の隣の席は決して穏やかではない。
残像が見えるほどの速さで鉛筆を動かしノートを取っている女の子"勉強 夏奈"。彼女はいつも狂ったように勉強している。ガリ勉なんて言葉では足りない化け物だ。
「ん。じっと見てどうしたの?分からないところでもあった?」
俺の視線に気づいた彼女が手を動かしたまま爽やかな笑顔で聞いてくる。割と恐い。
「分からない事しかないけど…」
主にあなたの事がね。
「難しいところだもんね。部活の時間にでも教えてあげるよ!」
「あ、ありがとう。」
授業始まってまだ10分しか経ってないのに何をそんな書くことあるのだろうか?彼女と俺は同じ部活で、たまに勉強を教えて貰っているのだが、ノートだけは頑なに見せてはくれない。恐竜の次くらいに謎が多い生態だと思う。
長くて綺麗な黒髪、黒くて大きな瞳。そしてそれらとは対象的に白く透き通っていてほんのりと桃色の肌。授業中以外は完璧な美少女だ。
しかし、授業中の腕の動きを見てしまったらもう近距離型スタンドにしか見えない。
「あっ」
スバコーーーンッ!
「ごめん!すっぽ抜けちゃった!」
彼女の手から放たれた鉛筆が俺の顔面に直撃する。
(遠距離も行けるタイプかぁ…)
バタンッ
もうヤダ…白亜紀に帰る。
勉強したくない(切実)




