ラディンとフルータの戦場 19
「敵が攻めてきたら、この駐屯地を放棄するのもいい。敵の補給線が、その分伸びるし、数は、敵の方が多いんだ。まともにぶつかったら勝てないっていう考えもある」
そう補足をしたラディンは、フルータの事をチラリと見る。
『ボクに説明をするためか……ラディンに一本取られたね……』
顔を伏せて、そう考えるフルータ。
「戦うか? って部分にも、補足を入れてくれ」
サーファスはそう言った。フルータの事をチラリと見たサーファス。フルータが言葉の意味を分かっていないのを、見抜かれたようだ。
「敵はハラベコの軍隊です。数はともかく、戦ってみたら、意外に脆いかもしれません。もしかしたら、勝てる戦いなのかもしれない」
そう言うと、サーファスは、「うんうん……」と言って頷いた。
「だが、希望的観測は危険だ。敵の数は、正直怖い。だから、置き土産だけを残して逃げようと考えている」
「それで、いいと思います。安定行動かと……」
フルータは、顔を伏せた。
サーファスとラディンの二人は、ニヤリと笑いながらフルータの事を見つけめた。
「最後の意味くらいはわかっている! この駐屯地を空にして、罠だらけにでもしてやれって意味だろう!」
フルータは、大きな鍋で、ビーフシチューを作りながら言っていた。
「どうしたの? いきなりそんな事を言い出して……?」
隣で料理を手伝っているレイティが言う。
「隊長に呼び出されてから、やたらと機嫌が悪いようだけど……?」
レイティが、おそるおそるという感じで聞いてきた。
「ああ! そんな罠くらいボクだって考えつく!」
そう言いながらビーフシチューを作るフルータだが、中身の材料はほとんどないし、調味料で味付けだけをした、具のないビーフシチューだ。
「それを兵士達に出す気?」
こんな手抜き料理を出すと、いままでよかった評判を一気に落としそうである。
「敵の兵士にね!」
そう言うフルータ。その言葉に、レイティは小首をかしげた。
「フルータ様。言われたとおり、簡易トイレを作っておきましたよ」
テントに中に入ってきたサリルが、声をかけてくる。
「ご苦労さん」
そう言うフルータ。
「何のために簡易トイレを?」
そう言うレイティ。サリルは笑顔のまま小首をかしげて「さあ?」といった感じにしていた。
フルータはサリルの手が汚れているのを見る。
「調理場にはドロを持ち込まない! すぐに手を洗って!」
不機嫌なフルータが、サリルに向けてそう言う。
「では失礼をします」
そう言って中に入ってきたサリルは、水瓶の水で手を洗った。




