フルータの場合 25
そこに、声がかけられた。
「フルータ。私の得意のお菓子を作ってきたんだ食べてよ。そんな奴の料理なんて、食べなくてもいいから」
サリルの声である。
「そんな奴? 何様のつもり? パティシエ崩れ……」
レイティは、サリルに向けて、冷たい声で言う。
それに、一歩下がって身を引いたサリルだが、レイティの気迫に負けないようにして一歩前に出た。
「そんなに作ってどうする気なの? あなたの料理はブタのエサにもならないんじゃない? そのへんに捨てたりしたら、土が汚染されるから、自分で食べてね」
フルータは、サリルのいきなりの変わりように驚いていた。
「君……そんな言葉を使う奴だったのか?」
いきなり、汚い言葉をつかうようになったサリル。サリルは俯いて、恥ずかしそうにしながら言った。
「お父さん譲りなの……敵にはこんな言葉を使うべきだって……」
サリルは言う。その様子を見ると、言葉の意味をまったく分からずに使っているような感じがする。
「どうかな? 変じゃないよね?」
サリルが、そうフルータに向けて聞いてくる。
「変すぎる……そんな言葉を使う子は、ボクは嫌いだよ」
そう言うと、サリルは泣きそうな顔をして驚いた。
「そんな……戦場でのマナーとか、周囲への示しをつけるためとか聞いていたのに……」
『天然か?』と、思うフルータ。だが、女はそういう態度を一番嫌うのものである。レイティは、サリルの言葉に随分イライラしていたようだ。
「何よあなた。意味も分からずそんな言葉を使っていたの? 本当は分かっていたんじゃない? 分からずに使っていたなんて、かわい子ぶっちゃっているだけでしょう?」
「本当に分からなかったんです。信じてくださいフルータ!」
「今、フルータの名前を呼び捨てにしたわね!」
サリルの、天然なのか? それとも分かってやっているのか? が、分からない言い様で、どんどんレイティの琴線に触れる言葉を言い続ける。
レイティは、サリルに向けて突撃をしていった。
「ブリッ子ぶるのはやめなさああぁぁぁあい!」
「やめないもん! フルータは私のものなんだから!」
サリルもレイティに合わせて構えを取った。サリルも武道の心得があるのだろう。ついでに、レイティも護身術を習っていたと言っていた。
「これは取り返しのつかない事になるんじゃ……?」
セルダがそう言った。
「やっぱ、そう思うよな!」
フルータは、二人に向けて駆け出した。
「危険だよ! ああなったレイティは止められない!」
セルダが止めようとしてそう言うが、フルータは止まらず二人の間に割って入っていった。
フルータは、サリルの肩を掴んでサリルを引き倒した。続いて、フルータはレイティの足を引っ掛け、レイティを転ばせた。
「二人共、頭を冷やせ!」
その言葉が、鶴の一声になった。一気に引き倒された二人は、それからいがみ合うのをやめて大人しくなっていく。




