フルータの場合 22
「これは見世物じゃないんだけどな……」
この配置は料理長が決めたのだ。
この仕事が始まる前に、いつもブイヨンを作っている釜から、この、調理場の片隅の場所に移動をされたのだ。
最初はいきなり移動をされた意味がわからなかったフルータだが、後ろでサリルがいもの皮むきを始めたのを見て、料理長の意図に気づいたのだ。
周りを見回してみるとこちらの事を気にして様子を伺っている他の料理人達に、やたらと離れた場所に配置をされたレイティを見て、『これは、ボクとサリルを一緒にするための配置だ』と、思ったのだ。
「周りの料理人さん達も、『がんばれ』と、言ってくれました。私はがんばります」
サリルの声を背中越しに聞き、フルータは顔をしかめた。
「フルータ……昼食は外で食べようか……」
昼の休みになると、レイティに声をかけられたフルータ。
「ああ……行くよ……」
それに従ったフルータは、サリルの様子をチラリと見ようとしたが、その素振りを見せただけで、レイティが怒った。
「フルータ……」
その声がやけに恐ろしいため、すぐにサリルの事を見るのはやめる。
その様子を、サリルは決意の篭った目で見つめていた。
ここは王宮の裏庭。今の時期、少しずつ涼しくなっているとはいえ、まだ日陰にいるのにちょうどいいくらいの気温だ。
手入れをされた芝生の上に、シートを敷き、そこにフルータとレイティの二人が座っている。
厨房で着ていた服を脱ぎ、服の腕の部分を縛って腰に取り付けているフルータ。そのフルータに向けて、自分の作ったお弁当を見せたレイティ。
気合を入れて作ってきたのがよくわかる感じで、いくとものバスケットに分けて入れられていた。
「こんなに、二人じゃ食べきれないよ……」
恐ろしい量の昼食を作ってきたレイティに向けて言うフルータ。レイティはそれを見て、ニコリと笑った。
「フルータがどんなものが好きか分からなかったから、得意料理を手当たり次第に作ってきちゃった。全部食べなくてもいいよ」
ニコニコしながらそう言ってくるレイティ。
「本当……こういう時は可愛いんだけどな……」
思わず口に出すフルータ。それを聞いて、レイティは顔を赤く染めた。
「そんな恥ずかしい事を言わないでよ。照れちゃうじゃない……」
そう言って、レイティは、フルータから顔を背けた。
「本当にこういう時は可愛いんだけど……」
もう一度言うフルータ。二回目ともなると、レイティも言葉の意味に気づいたようだ。
「どういう時なら、可愛くないっていうの……?」
それを聞くと、フルータの背筋は、一気に凍ってくる。
「やっぱ、サリルと話している時とかは、恐ろしくなるよな……」
本音を言うフルータ。レイティはそれを聞くと、目をギラリと光らせて言う。
「当然でしょ! なんではっきり断らないのよ! ほかの人たちも、サリルの事を応援する感じになっているし! 私が一体何をしたっていうのよ!」
『やはり、レイティにとって、この話は地雷か……』
フルータはそう考えるが、レイティは、弁当の中から一つを摘んで、それを口に放り込んだ。




