ラディンの場合 25
「レクステさん。ラディンさんの事をどう思いますか?」
洗濯物の最中、いきなりアディセは聞いてきた。ラディンの名前を聞くだけで、レクステは頭が沸騰しかけるのを感じたが、それを、息を呑み込んで耐えた
「あいつは……卑怯で、スケベで、自分のことしか考えていないゲスだぞ……」
レクステが言うのに、アディセは驚いた顔をしていた。
「ですけど、一緒になって喫茶店に……」
アディセが言うが、話の途中であるにも関わらず、レクステは返事を返す。
「あれは、あいつの希望だ。私に決闘で勝ったら一緒にお茶をするという賭けをしていた。それだけだ」
アディセは面食らったようにしていた。
「だけど、ラディン様にはいいところも……」
「私が感じる、あいつのいいところなんて、悪知恵が働く事くらいだ」
「ふん……」と鼻を鳴らすレクステに、アディセは、困惑顔をしていた。
「用はそれだけか?」
これで話は終わり。そう言わんばかりに洗濯物を持ち上げたレクステ。
「ラディンさんは罠にかけられようとしています!」
レクステの背中にアディセの声がかけられる。その言葉に、思わずレクステは振り返った。
「あいつが罠なんかにかかるのか……?」
あの悪知恵の働く男は、むしろ、人を罠にかける側ではないか? そう思うレクステ。
だが、アディセの言葉は真実のようで、ある。
「私はラディン様のお食事に薬を仕込むように言われました」
その言葉を皮切りに、アディセは自分の感情をぶちまけるようにして、次々に話し出す。
「私はラディン様みたいな人には初めて会いました。騎士様だというのに、私にこんなに優しくしていただいて……」
そして、アディセは語る。友人もいて、理想的な男子なのだという印象である事。卑怯な手を使う隊長達が許せないが、自分は何もすることができないのが一番悔しいのである。
「一使用人である私にできる事なんて……」
そこまで言うと、アディセは唇をギュッと結んだ。
目の端から一筋の涙が流れていくのを見たレクステ。
レクステは、アディセの事を抱きしめた。
「その気持ちは良くわかる……私だって無力なんだ」
自分が使っていた洗濯道具を見つめるレクステ。こんな事、絶対に騎士の仕事ではない。その考えが浮かぶと、自分が無力である事を思い出した。




