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剣と厨房。二人の成り上がり。  作者: 岩戸 勇太
ラディンの場合 5
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ラディンの場合 25

「レクステさん。ラディンさんの事をどう思いますか?」

 洗濯物の最中、いきなりアディセは聞いてきた。ラディンの名前を聞くだけで、レクステは頭が沸騰しかけるのを感じたが、それを、息を呑み込んで耐えた

「あいつは……卑怯で、スケベで、自分のことしか考えていないゲスだぞ……」

 レクステが言うのに、アディセは驚いた顔をしていた。

「ですけど、一緒になって喫茶店に……」

 アディセが言うが、話の途中であるにも関わらず、レクステは返事を返す。

「あれは、あいつの希望だ。私に決闘で勝ったら一緒にお茶をするという賭けをしていた。それだけだ」

 アディセは面食らったようにしていた。

「だけど、ラディン様にはいいところも……」

「私が感じる、あいつのいいところなんて、悪知恵が働く事くらいだ」

 「ふん……」と鼻を鳴らすレクステに、アディセは、困惑顔をしていた。

「用はそれだけか?」

 これで話は終わり。そう言わんばかりに洗濯物を持ち上げたレクステ。

「ラディンさんは罠にかけられようとしています!」

 レクステの背中にアディセの声がかけられる。その言葉に、思わずレクステは振り返った。

「あいつが罠なんかにかかるのか……?」

 あの悪知恵の働く男は、むしろ、人を罠にかける側ではないか? そう思うレクステ。

 だが、アディセの言葉は真実のようで、ある。

「私はラディン様のお食事に薬を仕込むように言われました」

 その言葉を皮切りに、アディセは自分の感情をぶちまけるようにして、次々に話し出す。

「私はラディン様みたいな人には初めて会いました。騎士様だというのに、私にこんなに優しくしていただいて……」

 そして、アディセは語る。友人もいて、理想的な男子なのだという印象である事。卑怯な手を使う隊長達が許せないが、自分は何もすることができないのが一番悔しいのである。

「一使用人である私にできる事なんて……」

 そこまで言うと、アディセは唇をギュッと結んだ。

 目の端から一筋の涙が流れていくのを見たレクステ。

 レクステは、アディセの事を抱きしめた。

「その気持ちは良くわかる……私だって無力なんだ」

 自分が使っていた洗濯道具を見つめるレクステ。こんな事、絶対に騎士の仕事ではない。その考えが浮かぶと、自分が無力である事を思い出した。

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