ラディンの場合 19
「この場所で、そんな事を言うんじゃない……」
そう言い、周りを見回すラディン。周囲を見てみても、周りの客たちは自分達の事は、気にとめていないようだ。
「一応親衛隊は、『皆の規範になる高潔な騎士達』で、通ってる。内情を他所に漏らすような事をするな」
「う……そうだな……」
レクステがそれで、小さく縮こまってしまった。そこに、ラディンは一応、メニューを使ってレクステの頭を叩いておく。
パンッ! という音を聞き、周囲からの視線が一瞬だけラディン達に集まった。だが、そんなものならば気にしなくていい。
「なあ、私はどうすればいいんだ?」
また同じ質問をしてくるレクステ。それを聞くと、ラディンは「うーん……」と、考えながら首をかしげた。
「普通に、戦場に行きたいと、隊長に言えばいいんじゃないか?」
「隊長なんかに物を頼むのしゃくだ」
それを聞くと、イラッときたラディン。
「なら、隊長ではなく、時々この王宮にやってくる軍司令に頼むとか……」
「軍司令は、親と繋がっている。そんな事をしたら、親に引き止められるぞ」
ラディンは、それで、奥歯を噛んだ。
「なら、俺と恋人にでもなっちまうか?」
「なんだと……?」
「俺は、隊長達に嫌われてる。すぐにでも前線送りにされても不思議はないからな」
「前線か……」
そう言い、レクステは顎に手を当てて考えた。それを見たラディンはニヤリと笑う。
『こういう奴は、単純すぎる……』
ラディンは別にレクステと一緒に前線送りになる事なんて、考えてはいない。適当に言いくるめて、レクステを隊長に献上するのもいいかもしれない。それくらいに考えているだけだ。
『なあに……こいつだったら、上手く言いくるめちまえば結構素直にハイハイ言うかもしれん』
心の中でそう考えるラディン。だが、それは顔に出さない。顔をニヤつかせるのは隠さなくてもいい。今は冗談半分でものを言っている状態だ。
「まあ……いいかもしれん……」
レクステは言った。あまりにあっけなくレクステがそう言ったので、ラディンは拍子抜けしてポカンとした顔をした。
「なんだ! その反応は!」
ラディンの表情を見て、レクステが言う。
「まさか、こんなにあっさりといくとは思わなくて……」
ラディンが言うのに、レクステは「ふん……」と、鼻を鳴らす。
「だが勘違いするなよ! 前線に行きたいからそうするんだ! お前の事なんて、これっぽっちも好きでも何でもないんだからな!」
「それは重々承知だ……」
レクステの気迫に押されるラディンは言う。




