ラディンの場合 14
「意外と、レクステは脳筋だった……」
お互いにレクステと向かい合いながらラディンは言った。
「誰が脳筋だ! お前が望んだ決闘だぞ!」
「決闘を望んでいたワケじゃないんだが……」
ラディンはレクステの行動に、なかば引いていた。
まさか、『私をモノにしたいなら、私に勝ってからだ』などと、言葉にする人が今の時代に存在をしていたとは思えなかったのだ。
「レクステは、シャムロックに勝っているんだ、一筋縄じゃ行かないぞ!」
レナードがそうラディンに声をかける。
『そういう事を言うのはやめてくれないかな……』
横目で、隊長とシャムロックの事を見るラディン。明らかに、隊長達の顔は、怒りで歪んでいた。
「なんだ? 私がシャムロックに勝ったからって怖気づいたのか?」
『俺だって、シャムロックには勝っている』とも思ったが、それを口に出すわけにもいかないラディン。またも横目で隊長達の事をみると、どうにも気に入らなさそうな顔をしていた。
ラディンは諦めて、レクステに視線を向けた。
彼女は、まるで鬼のような表情で、こちらを見ていた。この試合が、彼女にとっては負けられない大事なものなのだろうというのが伝わってくる。
「合図はどうする?」
ラディンは、レクステに向けて聞く。剣をかまえ、今にでもラディンに向けて飛び込んできそうなレクステが言う。
「まず、お前が構えろ」
そう言われ、しぶしぶといった感じでラディンは剣を構えた。
「いくぞ!」
レクステが言うと、一気にラディンに向けて飛び込んできた。
「早い! だが、動きが単純だ」
ラディンは、そう言い、レクステの振り上げた剣を切り払った。
それで、驚いた顔をしたレクステは、大きく後ろに下がった。
「多少はやるようだな。だが、私の剣術は、幼い頃から血まめを作って体に叩き込まれた剣術だ。お前なんかに破られるものではない」
『それを言ったら、俺だって、幼い頃から剣を振っていたよ』
そう言いたいラディンだが、隊長達の様子を見て、言うのをやめておいた。
『いっそ負けてしまうか……?』
レクステの事を好きにできるというのならば、自分にとっては、かなり有益な事であろうが、隊長の前で嫌味になるような戦いを見せるというならば話は別だ。
わざと負けて、隊長の敵意をレクステに集中させるのもいいかもしれない。
「何をやってる! 戦いに集中しろ!」
目の前のレクステが、そう言ってくる。
だが、そんなものは無視して、ラディンは頭を回転させ始めた。
「フルータの奴だったら、どう考えたか……?」
そう、小さく言って、目を瞑る。
自分知る限り、一番嫌味で世渡りの上手いコウモリ野郎の事を思い出すラディン。
隊長のご機嫌をとり、その上で、レクステに勝つ方法は無いか?
レクステに勝つ事自体は、難しい事ではないと思う。レクステが、ラディンとの戦いに負ける事自体は、隊長達の望むところだろう。
考えがそこにまで至ったら、頭の中に考えが浮かんだ。
「やっぱりあいつは嫌味なやつだ……」
フルータはどうするだろうか? そう考えただけで、この妙案が浮かんだのだ。今はあの嫌味な友人に、心の中で感謝をする他はない。




