ラディンの場合 13
「どうしよう……」
アディセは、廊下を歩きながら考えていた。
足元には赤い絨毯。窓から見える外の風景は、綺麗な庭園。ため息を吐くほどに美しい光景なのだが、それを見てもアディセの気持ちは沈んでいた。
自分はラディンの弱みを見つけねばならない。だが彼は、何も悪いことなどしていないし、真面目で勤勉でもある。アディセ自身、彼の事を好青年だと思うくらいだ。
「友人だって多いようですし……」
あの宮廷料理人の少年と、話していた時の姿を思い出す。
本人達は、仲が悪いだけだとはいうが、あのようなやりとりは、それこそ仲が良くなくてはできないやりとりである。
それに、王宮騎士のレナードという彼とも親密な付き合いなのであろう。
そう考えたアディセはため息をついた。
「あの人の弱みを握るなんて……」
アディセは苦悩しながら言った。
「あの、アディセって子。本当はキミに惚れていると見たね……」
今は城の庭園にいたラディンとレナード。浸りは、ほかの騎士達に混じって、剣の素振りをしている。
訓練の最中に、レナードが言った言葉。剣の素振りをするのに集中していたラディンは、その言葉を聞き逃した。
「なんだって?」
ラディンは、剣を振りながら言う。
「アディセはキミに惚れているって言ったのさ。まったく……あの子の事は諦めるかな?」
「待て待て……」
ラディンは言った。
「俺は、あの子の事なんて狙ってないぞ……前にも言っただろう? レクステの方が気になるって……」
「ふーむ……あの子はやめたほうがいいと思うけどな……」
『まあ、厄介な状況になっているのは自分だって分かっているつもりだが……』
そう口に出そうとして、その言葉を飲み込んだラディン。
恋愛に打算的なところを見せると、レナードは途端に不機嫌になる。その事を身をもって知ったラディンは、余計な事を言うべきじゃないと、考えたのだ。
「だったら、もう言ってしまおう……」
レナードが言う。それを、ポカンとした顔で聞いたラディン。
「言うって……?」
「言葉通りの意味だよ」
そう、レナードが何でもないような顔をして言うと、ラディン達を同じく、剣の素振りをしているレクステに向けて、歩いて行った。
「ちょっと待て! レナード!」
そう言い、レナードの事を引き止めようとするラディンだが、レナードはそれを聞いて、ラディンに向けて爽やかな笑顔で親指を立てた。
「まて! そんなのはいらん!」
ラディンがそう言うよりも先に、レナードはレクステの隣にまで行き、話をし始めた。
「おい!」
ラディンは、レナードに、後ろから組み付いた。
「言わんでいいって言ってるんだよ!」
ラディンは、そう言って、レナードの事を、レクステから引き剥がした。
「いいぞ」
レクステが言った。
「は? 何を……?」
レナードとラディンは、ふたり揃ってそう言った。
「私のことを好きにしていいと言ったんだ」
レクステが言う。それを聞くと、レナードは、ラディンに視線を向けて親指を立てた。
「そんなのはいらんと言ってるだろう」
ラディンは、言う。それに合わせ、レクステは言う
「ただし、それは私に勝つ事ができたらだ」




