プロローグ 2
「次に会うのは、二人共が偉くなってからだな」
「そうだね。キミは親衛隊の隊長。ボクは宮廷料理の料理長」
そう言うと、外から、声が聞こえてきた。
「いい話だね。友情は大事にしなよ」
この荷馬車を動かしている老人は言った。
「私にも、昔は友人がいた。だが、大人になっていくと、疎遠になってね……家族と一緒の時間も増えるし、仕事に子供の世話ばかり」
老人の言葉を聞く二人。
「そして、子供達も独り立ちをしてしまってから、家には何も残らんかった」
このように、荷馬車の御者の仕事などしていると、家にいる時間も少ない。妻との関係もぎこちない自分にとっては、こうやって、御者の仕事をしているのが、一番、気持ちが落ち着くのだという。
「まあ、君らも、今の友情を大切にしなよ。もしかしたら、この先、二人で力を合わせなければいけないような事にもなるだろうからね」
ラディンとフルータは、お互いに顔を見合わせた。
「ボクたちは全く別の場所に行くんですよ。顔を合わせる事だってなくなるっていうのに……」
ラディンもそれに合わせて頷く。
「もしもの話さ。この先、何が起こるか、分からないからね」
そう言うと、御者をしている老人は、馬を止めた。
「今日はここで野宿するよ。明日には、王都に着くからね」
そう言うと、老人はむしろを敷いて、地面の上に寝転んだ。
「そういえば、私はたまに行くのだが……」
寝転んだ老人は、遠くに見える、丘を、指さした。
「あそこに登ると、王宮が見えるんだ。街の光も見えるし、綺麗だよ」
そう言うと、老人は体を地面に預けて寝息をたて始めた。
「あの人の言ったとおりだ。ここからなら、王都がよく見える」
フルータは言う。丘の上には一本の木が立っていた。その木に登り、枝に腰掛けながら、ラディンは王都の様子を見た。
「ここからの方がよく見えるぞ」
その場所から見ると、街灯の付いている王都の姿がよく見えていた。この時間でも、外を出歩いている人がチラホラ見えていた。
「僕らの街じゃ、考えられないな……」
夜の街に出ても、遊ぶところなんて無い。酒場があって、そこに向かうのは、大人たちだ。自分達は行ったことが無い。
「ボクらの目指す先は、まだ遠いけど……」
フルータは言う。ラディンは、王都の中心にある王宮に向けて手を伸ばした。
大理石で作られているという王宮は、夜の闇の中でもはっきり見えるというのが、噂であった。
王宮に松明が灯される。そうすると、ポツポツと光が起こり、王宮が夜の姿に変わる準備が始めるのだ。
「掴めないワケじゃない。絶対にボクらは掴むよ」
フルータも、王宮に向けて手を伸ばした。
なんでもできるような気がする。料理長になるのなんて、簡単な事のような気がする。
『それは自分達がまだ若いからだろうか? ただの自信過剰なのではないだろうか?』
そんな考えが頭をよぎるが、フルータは首を横に振った。
自分の腕には自信がある。何度倒れても、何度でも起き上がる覚悟もある。それは、絶対に自分の事を助けてくれるだろう。
あの王宮の中で成り上がって、料理長の地位を手に入れた、未来の自分を夢想しながら、フルータは、遠くに見える王宮に、手を伸ばし続けた。




