フルータの場合6
四部 料理長にとってよい料理人になろう
厨房で多くの料理人が作業をしている。喧騒の中で、フルータは自分の作業を黙々としてやっていた。
芋の皮むきをやっていたフルータは、視界にチラチラと映るランダルの様子を見ていた。
「新入り! 今日は、もうできているんだろうな?」
ランダルが、フルータに向けて言ってくる。
「はい、この芋で最後です」
そう言い、フルータは包丁でいもの皮むきをやっていた。
「ふん……少しは早くなったが、まだまだ遅いな。芋の皮むきも満足に出来ないのか?」
威圧的な態度でそう言ってくるランダル。
威圧的な態度に、少し怖がるような態度をしたフルータは、おずおずとしながら皮をむき終わった芋をランダルに渡した。
「ふん、今度こそは早くやれよ!」
そう言い、振り返るランダル。またもや、振り返る直前に顔がニヤついているのが見えた。
『こう、何度もだと、そろそろウザいな……』
今度は本気で早くやったつもりだった。だがそれも無駄なことであった。ランダルは、さっきからフルータの事をチラチラと確認し、芋の皮を剥き終える直前を狙ってこちらにやってきているのだ。
フルータが、それに気づかないフリをしていると、そろそろ芋の皮むきが終わりそうという状態になってから、ランダルが顔をニヤニヤさせながらフルータのところにまで歩いてきていたのが見えていた。
『こんな人のご機嫌取りよりも、料理長の方が問題だな……』
完全に職人気質の料理長。お世辞やゴマすりをとことん嫌う人なのだという。
「慎重にやっていかないとな……聞く限り、頑固者のようだし……」
普段から『料理人なら実力で勝負しろ』と言ってはばからない人なのだという。
実力で言えば、フルータはまだここの人たちと比べられるものではない。
だが、それは、飽くまで宮廷の料理に対する理解がないだけで、その料理は、すぐにでも覚える自信がある。
「だが、まだあんまり覚えていないし、料理長に会うのは覚えてからだな」
小さく言うフルータ。その隣にレイティが芋を置いて、芋の皮むきをし始めた。
「ねぇフルータ。あなたはどんな女の子に興味がある?」
それを聞くと、フルータは、眉をひそめた。
「そう言われると、特にどうだ? って事はないかな……」
高貴な家の出で、逆たまなんかを狙えるような子だったらいい。
そう口からでかかったフルータだったが、その言葉は露骨すぎて言うわけにはいかないと、考えた。




