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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者はピノッキオと戦う


クロウが六華を助け、ピノッキオとの戦いが始まったころ。クロウと引き離されたシェルフ達の方はというと、戦闘が一段落ついていた。


「これで打ち止めかな?」

「でしょうね。追加の戦力も来てませんし、結構な数を倒しましたし」


襲い掛かってきたピノッキオの手下たちを倒し、束縛し終えた遥と雷亜が武器を下ろす。


『いやぁたくさん来ましたね…』

『どれくらい来たよ』

『百は超えてるな』

『それを二人で無傷で制圧しておりますよ』

『そりゃこのお二人もS級ですし…』

『クロウさんが派手で何となくリーダー的な動きしてるから目立っているだけで、このお二人もすごい実力者なんだよなぁ…』

『S級は伊達じゃない!』


少し前までは二人のS級の戦いに驚いていたリスナー達も時間が経てば慣れる物で今では軽い雑談ができるレベルにまでなっている。まあ、ここ最近のクロウの非常識っぷりを見ているから耐性がついているだけかもしれないが。


「さて、これからどうしようか」


とりあえず襲ってきた人は全員確保し、ついでに混ざっていた魔物に関してはすべて倒して魔石と素材は回収済みとなっている。襲撃が収まった以上、次の行動を起こさないといけないのだが…。


「やはりクロウさんと合流するのが第一目標ですかね?」

「だね。となると、やっぱりこの転送装置がまともに使えるかどうかを調べないといけないかな」


詩織の問いかけに対して遥が頷いて雷亜のほうを見た。


「どっちが行く?」

「そうですね…。あちらの状況がわからない以上、僕より遥のほうが適任でしょう」

「そだね。じゃあ私が行って来るねー」


雷亜の答えに遥が頷き、腕輪の効果で転移をした。


「いいの?遥さん一人で行かせて」

「彼女ならどこに飛ばされてもどうにかするでしょう。本当なら私も一緒に行ったほうがいいのですが、あなた方を置いていく方が問題ありますので」

「まあ、俺達がいるとはいえまがりなりにもここはアンタらで言うところのS級ダンジョンだからな」


S級クラスの実力を持っているフィンとリルが共にいるし、ここはS級ダンジョンとなってはいるが、出てくる敵はC級モンスターがほとんど。戦闘に関しては問題ないだろうが、その特異性から守るにはいささか心もとないところがある。


『その特異性って転移周波数の事だよね?』

「おそらくそうですね。そのせいで私達もうまく動けていないので」

『あの腕輪の機能が正常なら行けるって話だけど、大丈夫なのかな』

「それに関しては大丈夫かと。あれだけ戦闘していて私達のうち誰も転移していないということは、腕輪が正常に作動しているということでしょうから」

『あ、確かに』

「むしろ警戒するのは…」


言葉の途中で雷亜が槍を手にし、素早く振り返るとそこに突如として現れた魔物が即座に両断されてそのまま追撃の雷によって黒焦げになった。


「こんな感じで脈略無く転移してくる魔物の方だね」

『そう言いつつ転移前に対処していたんですがそれは』

「脈略はないけど揺らぎはあるからね」

『さすがS級やぁ…』

『説明終わったかい?』

『あ、遥さんだ』

「ああ、終わったよ。すまないね待たせて」


転移した遥が配信のコメントを通じて連絡をしてくる。


『構わないさ。こちらも状況把握したかったからね』

「それで、マスターはどんな感じ?」

『細かなことはわからないけど、六華ちゃんは今は眠った状態で守られているね。そしてクロウはピノッキオと戦闘中』

「そちらに行ったほうがいいでしょうか」

『やめといた方がいいよ。魔法攻撃の応酬ではあるんだけど、ピノッキオからの攻撃に関しては全部何かしらの状態異常が付与されている』

「自力で対処できない場合足手まといになりそうですか」

『おそらくね。クロウとしては傀儡の魔法に関しての対処はしているだろうけど、他の状態異常まで対処しているかはわからないからね』

「彼の事ですから対処していそうですが、あくまで思いつく物だけでしょう。想定していない物があれば途端にそこが弱点になってしまいますね」

『そんなわけでこっちはこっちで落ち着いたら呼ぶからそれまで待っててねー』

「わかりました。シェルフさん、みらいさん達に同じ旨を伝えてもらえますか?」

「はいはーい」

『あ、一応私も配信機材持ってるから少ししたら配信しておくねー』


雷亜の指示でシェルフがスマホを手にしてみらいの配信の方へとコメントをしはじめる。

それを見て情報共有のために遥も配信準備をし始めたようだ。


「ところであちらの様子はどんな感じなんだい?」

『あちらはS級二人が大暴れしてひどいことになっております』

『氷の壁が乱立しているわ、地面に穴ぼこ空きまくっているわ、それを見てみらいちゃんが苦笑浮かべているわ、マーサさんがあきれているわ…』

「……襲ってきた人たちは生きているのかい?」

『さあ…?』

『氷漬けになってはいるけどあれは生きているとみていいのだろうか…?』

『コールドスリープって言うのもあるし…』

『それと同じにしていいのか…?』


全くと言っていいほど違う二つの配信に二窓しているリスナー達が困惑していた。


「………まあ、たぶん大丈夫でしょう」

『あ、投げた』

『いや、まあその気持ちはわかるけどね…』

『あの二人を制御しているクロウさんっていったい…』

『たぶん制御してるんじゃなくてあっちなら好きにしろって丸投げしてるんだと』

『ああ…』


リスナー達のいささかひどい言い分に否定しきれない雷亜は苦笑を浮かべていた。


「さて、それではこちらも後始末をするとしましょうか」


そろそろ終わりが近いと感じた雷亜は帰還のための準備を始めるのであった。



空中ではじけるような音共に飛び交う魔法弾がぶつかり合う。


「さすが♪一筋縄ではいかないね」

「ほざけ」


楽しそうに踊るように動き回るピノッキオに対してクロウは短く吐き捨てる。

ピノッキオが展開している魔法弾。それらはすべて様々な状態異常を引き起こすものだ。

魔力阻害だけでなく、麻痺や毒、睡眠のような物だけでなく、獣化のような思考低下する物や、能力低下のような物まで混じっている。しかもそれだけでなく、当たりそうなものをクロウも撃墜しているのだが、撃ち落とした魔法弾だけでなく、外れて別の場所で爆ぜた魔法弾から見えないレベルで細い糸が伸びていき、それがクロウの動きを阻害する蜘蛛の巣のように張り巡らされている。

それらを斬りつつ、ピノッキオへと迫るが、それでも魔法弾や糸に対しての対処が入るせいで数手遅れてしまい、逃げられてしまう。そんな追いかけっこが続き、若干クロウもイラついていた。

魔法陣を展開しようにも魔力阻害の魔法弾に妨害されてしまう。それに固執すると数手遅れてこちらが魔法弾を直撃してしまう。イラつきつつも頭は冷静に、どうしたものかと考え始めた。

そんな時、遥が少し離れた場所に転移してきたのを察したが、こちらに手を貸そうとはしていない。おそらくこちらの様子を見に来たのと戦況の確認をしに来たのだろう。なんか配信の準備をしているみたいだが、それは放置しておく。

展開されていく魔法弾に罠のように張り巡らされている糸。見えにくい糸は魔力の揺らぎとなってクロウの目に映っている。それがどんどん増えていることも気づいている。

六華に関してはエレメンツと防御魔法によって守られているから問題ないし、遥に関しても自らで対処できるから気にする必要はない。

とはいえ数が増えると厄介なのは確かだ。だから…。


「久々にやるか」


クロウがまだ魔法を覚え始めたころ。魔法陣が使えるようになる前は普通に様々な属性の魔法を使っていた。今も使ってはいるが、それでも魔法陣のほうが頻度が高い。以前あったミスリルアントのように魔力に対しての耐性が高い場合に使うだけだが、それ以外はそうそう使うことはない。そしてこれからやることもここ最近やることはなかった。

理由としては手がわずかに遅くはなるが、魔法陣でも十分対処できる敵がほとんどだということと魔法のほうが手が早いのは確かだが、その分威力が落ちてしまうので強大な敵では威力を上げるには相応の工夫が必要になってしまうからだ。

とはいえ、今必要なのは威力よりも手数の速さ。そうなると魔法陣よりも通常の魔法のほうが得策だろう。


「ウィンドストーム」


右手に小さな竜巻が生まれる。


「ストーンバレット」


左手に石のつぶてが生まれる。


「合成魔法…」


両手を合わせ、二つの魔法を混ぜ合わせる。


「『ウィンドバレット』!!」


両手を広げて魔法を展開するとすさまじい竜巻と共に鋭い石のつぶてが竜巻に乗って回転しながらピノッキオへと向かって行く。


「わわっ!?」


周囲に展開される糸を切り裂き、風で巻き取り、つぶてで巻き取りピノッキオへと向かわせていく。それを慌てて回避する。

巻き付けた糸はピノッキオが放った状態異常の属性を持つ魔法球から展開されたもの。その糸にも微量だがその属性は宿っており、その糸に触れればわずかではあろうがピノッキオにも影響が出てくる。多少は無視できるだろうが、あくまでそれは状態異常のみであり、ダメージとなるとそうもいかない。


「ライトニングボルト」


バチリと右手に電気が走る。


「アイシクルストーム」


左手に冷気が渦巻く。


「合成魔法」


再度両手を合わせて二つの魔法を混ぜ合わせる。


「アイシクルボルト!」


放たれた魔法は猛吹雪となってピノッキオへと襲い掛かっていく。数は多くてもつぶてであれば回避はできた、しかし今回は猛吹雪、風に乗った雪を回避することはできず、少しずつピノッキオの体へとまとわりついていく。そして…


バチィン!!


「あぎゃ!?」


雪に帯電していたライトニングボルトがまとまり、巨大な雷となってピノッキオへと襲い掛かった。



「派手にやるねぇ…」

『相変わらずですなぁ…』


そんな戦闘の様子を遥は離れた位置から見守っていた。

ドローンによって配信はされているが、あまり近づくと戦闘に巻き込まれるので、配信画面としてはズームで見せている。


『さっきからクロウさんがやってることって何?』

「合成魔法。異なる属性の魔法を組み合わせて放つ魔法だね」

『そう言えば何度か使ってる人見たことあるな』

『あれってそれぞれ属性の相性とか威力のバランスとか取らないといけないんだっけ』

「そうだねー。結構バランスが大変だから、普通は使うにも結構集中力が必要になるんだけど…まあ、クロウだからね」

『それ万能よな』

『クロウさん、大丈夫ですか?』

『あ、みらいちゃんだ。やほー』

「ん?ああ、みらいさんか。そっちは大丈夫かい?」

『あ、はい。一応戦いは終わりましたので』

「そか、まあ、あの二人がいるなら安全ではあるけど気を付けてね」

『はい!マーサさんもいますが気を付けていますので!』

「うん、よしよし。さて、それでクロウだけど…まあ、問題はなさそうだね。参加はできないから終わるまで待つことになるけど…たぶんそろそろ終わるよ」


そう言ってクロウのほうを見る。

ウィンドバレットによって周囲の糸を取り除き、アイシクルボルトによって相手の動きを阻害、感電によって動きを止めさせた。

そこへと即座にクロウは止めを刺すために魔法を展開する。


「さぁて久々だ。魔法陣よりかは威力は下がるが問題ないだろう」


そう言って手を合わせ、魔力を練ってから広げるとその間に八つの属性が並び立つ。


火魔法:エクスプロージョン


水魔法:アクアストーム


風魔法:ウインドストーム


土魔法:ロックブラスト


氷魔法:アイシクルスピア


雷魔法:ライトニングストーム


光魔法:シャインテンペスト


闇魔法:シャドウホール


八つの異なる属性。そしてそれぞれ強力な魔法。それをパァン!と手を叩くと共に一つにまとめる。


「八属合成魔法」


ヒュンと風を切る音と共にクロウの姿が消える。そして一拍後にその姿はピノッキオのすぐ前へと来ていた。


「なっ!?」

「『ビックバン・エイト』」


会わせた八つの魔法をピノッキオの腹部へと押し付ける。そして一歩下がった瞬間。


ドゴォォォォォォォォン!!


とてつもない爆発と共に周囲へとすさまじい衝撃が広がっていく。


「おおっと」

『何事ぉ!?』


その衝撃が本来安全圏にいた遥達の方にもいき、浮遊しているドローンを揺らした。


「派手にやるねぇ…」


苦笑を浮かべつつ六華がいる場所を見ると、そちらの方はエレメンツによって衝撃から守られていたようだ。

そんな派手な魔法を使ったクロウはというと、離れた位置から先ほどまでピノッキオがいた場所に向けて手を伸ばしていた。その手にピノッキオの魔石と素材が引き寄せられていく。


「討伐完了っと」


その手に素材と魔石を掴み、クロウは一息ついた。




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