(5)
⒌
「なら死んでくれ……!」
司が吼え、疾る。
「そら!」
クラリッサが無数の氷の矢を頭上に放り投げると、そこから急角度で司の進路正面から右側面を塞ぐように高速で降り注ぐ。
「っ!」
司は速度を落とさず楕円を描く軌道でこちらへ向かってくる。
「司……!」
僕は氷の矢が途切れる所を狙って走り込む。
司が振りかぶった腕が、肩が、全身が。骨格ごと歪に形を変えていく。
あんなのに直撃をもらったら頭部が無事でも身体が残っているかわかったものじゃない。
あれは立川が変容したのと同じ……やっぱり吸血種の因子だけじゃない、人でないものが混じりすぎてる。
「――疎は大地……」
「ああぁぁぁ!」
「疎は……盾!」
剛腕の一撃が降り抜かれる寸前、目の前に精霊魔術による盾を発現させる。
人間の身体だった時の僕の魔術の出力であれば間違いなく役に立たないけれど、今ならだいぶマシになってるはずだ。
これで防げれば御の――
淡い期待を懐いた瞬間、盾は拳を一瞬押し留めた直後にガラスが砕けるように崩壊した。
――躱せない。
直感でそう思った。
もう盾で勢いが殺がれたことを信じるしかない。
「疎は――」
そのまま異形と化した司の拳が咄嗟に前に出した左手を容易くへし折る音がした。
「ぎ……い……!」
けれど……!
「疎は……剣……!」
折れていない右手から焔の剣を発現させる。
「うあああッ!」
短剣だった時とは違う、今の全力で生み出した長剣による斬り上げ。
この距離では司も回避は間に合わない。
しかしそれが司の胴を薙ぐ直前、
「ざっけんな……!」
司ももう一方の腕でその一刀を受け止める。
「……!」
焔の剣は肥大した腕の半ばまでめり込んだところで止められてしまう。
「悪ぃな……俺の方がバケモン歴長いんでよ……!」
そう言った司の口元が吊り上がった次の瞬間だった。
「なら、私の方がもっと長いな」
クラリッサがパチンと指先を弾く。
足元から生えた何本もの氷柱が、司の身体を下から刺し穿った。
「……あ……ぐ……!」
大腿部から肩口までをまっすぐ貫かれ、司が苦悶の声を上げる。
けれど、まだ止まらない。
司の身体は、今狂気と執念が動かしている。
「こんなモンで……このバケモンの身体が死ぬわけ――!」
僕が司にとって偽物ではない本当の友人になれていたらこうまでならずに済んだんだろうか。
けれどいくら悩んでみたところで、現実にここに居る僕だけでは、司を止めることはできなかった。
――だから。
「……リソース充填……強制再起動……」
「両手使えないてめぇに何ができんだ……!」
僕の左腕を粉砕した方の腕を再び振りかぶる。
――だから僕は、最後の一撃を、彼女に託した。
「ララ!」
「……なっ⁉」
司が振り返る。
そこには、輝く拳を振りかぶりながら司の眼前に飛び込む、魔導人形の姿が在った。
「……バニッシュメントリボルバー、残弾・1。撃ち込み開始します」




