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日常

『⋯⋯ここはどこだ? 真っ暗で何も見えない。それに地面が無いな。まだ飛んでいるのか⋯⋯はっ! 巨大隕石はっ!?』


 何も見えない真っ暗の空間でオラグは意識を取り戻し、上下左右がわからないままフワフワと漂っていた。


『やぁオラグ、気がついたかい? 君って奴は本当に無茶しちゃって。やっぱり僕が一緒にいて良かったよ』


 拳ほど小さく、豆電球よりも弱い光がオラグの前に現れた。

 その光は、いつもと変わらない口調でオラグに話しかけている。


『リッシュ⋯⋯僕は失敗してしまったのか?』


 光にしか見えないけどオラグには、その光がリッシュだとすぐにわかった。


『ん~⋯⋯失敗してしまったのかと聞かれると答えは少し難しいね。巨大隕石は撃破出来なかったけど、軌道は変えられたから世界に被害は出なかったし、君は今こうしてるしね』


『そっかそれは良かったよ。でも、ごめん⋯⋯リッシュも巻き込んじゃった』


 オラグは世界よりもリッシュの事の方が大切だと酷く落ち込んだが、リッシュは周りをクルクルと光が周りながら楽しそうに話す。


『おいおい、何か勘違いしてしまっているようだね? 僕達は死んじゃないからここは天国でも地獄でも無いよ』


『えっ?』


『ここは君の精神の世界さ』


 オラグはそれを言われて、今の状況がわからなくなってしまった。そんなオラグの肩にちょこんと光は乗っかるとゆっくりと話し始める。


『キミは精神の極みで自分の中の魔力を暴走させ、そのお陰で世界は守られた。でも、その反動で精神の歪みに囚われてしまう所だったんだよ』


『⋯⋯精神の歪み? 精神の世界じゃないの?』


『精神の歪みは精神の世界の通り道さ。精神の世界に行ってしまえば肉体は消滅してしまう。精神は一生さまようことになってしまっていたね』


『ならなんで⋯⋯?』


『僕のおかげさ。僕の中にはキミの魔力があるだろ? それを使って食い止めたのさ。そのおかげでここではこうしてキミと話しが出来るけど、ここから離れたら言葉を失ってしまうよ。だから戻ったらまた魔法をかけておくれよ』


 光となったリッシュの表情はわからないが、オラグにはその光が微笑んでいるように感じていた。


『あぁ、もちろん。それじゃさっさとここから出ないと』


『今のキミは精神と肉体が分離しかけている状態だから、それを安定させないと目覚められないよ。だからやることはわかっているね?』


『座禅だね。いつも通りさ、任せてよ』


 そうして世界を救ったオラグは元の世界に戻る為、そしてリッシュの恋愛を成就させる為、この何も無い空間で静かに座禅を組始めた。

 本来ならば恐怖で肉体と精神は分離してしまっていただろうが、リッシュという存在のおかげで不安定になることなく座禅を組めたのだろう――――


 ****


「ねぇねぇ、見て見て! 知ってたこの銅像、完成したんだよ」


「知ってるよー。私だって先週見たもん」


「え~、ずるいよ。僕のが先に見たかったのに~」


「残念でした~」


「でも、この銅像の人カッコイイよね」


「ね~!」


 幼い子供たちが完成したばかりの銅像を見ながら会話をしている。

 広場の一角に建てられた銅像には【世界の英雄 オラグ】と表記されていた。


 しばらく銅像の前で話しをしていた子供たちは、どっかへ行ってしまった。そんな子供たちを少し離れて見ていた一人と一匹。


「銅像が建ってしまうなんてキミはスゴいね。本当に流石だよ」


「何かトゲがある言い方だね⋯⋯」


「そりゃそうさ、キミの座禅はいつも長いけど、まさか三年もかかるとは思っていなかったさ。これじゃあの子は今頃は別のリスに取られちゃってるよ」


「それはわからないじゃないか。行ってみようよ!」


「あんまり乗り気じゃないな。それよりもまずは家に帰ってただいまって言うのが先じゃないかな? きっと両親はとっても心配してるよ」


「それはそうかもね。じゃあ家に帰ってただいまって言ってから森に向かうからね!」


 ~fin~

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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