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82『後始末』

 今回のお話には個別の病気、症状、状況などに過度な表現、そしてそれに関しての批判などが出てきますが、これはすべて小説上のフィクションです。

 気分が悪くなると思われた方はブラウザバックをお勧めします。

 この件についての批判はお受けしませんのでよろしくお願いします。




 ロドス伯爵令嬢リリスは【隔離】という建前の幽閉が決まった。

 そして早晩、その命は刈り取られるのだろう。

 伯爵家の、貴族としての対面が伯爵からすでに娘の存在を消し去っていた。

 彼にとって今、大事なのは目の前の【錬金薬師】殿の知識だった。


「学院長様、在校生と新入学生及びその保護者は現在も留め置かれているのでしょうか?」


「うん? そのはずじゃが?」


「学生はともかく、保護者の方々にはこの後のご都合もお有りでしょう。

 ユングクヴィスト様、先に【解析】を済ませてしまいましょう。

 公爵様と伯爵様にはまことに申し訳ございませんが、しばしここでお待ちいただきたいと思います」


 伯爵にはアンナリーナにすがるしか道はない。

 公爵としても先ほどの含みのある話の振り方に胸騒ぎがしてしょうがない。

 二人ともこの場でアンナリーナの帰りを待つのに否やはない。


「伯爵様、もしも可能ならばこの王都に来てからのお嬢様の外出先を調べておいていただけますか?」


「わかった。

 領地からこちらに移った3月ほど前からの事だな。

 直ぐに家令に連絡する」


 立ち上がった彼は部屋の隅に行き、従者に指示を与えている。


「では公爵様、少しの間席を外させていただきます。

 テオドール様、公爵様のお相手お願いします」



 アンナリーナとユングクヴィストが手分けして【解析】した結果、幸いにも菌を放出し難いタイプだったのか感染者が出ることはなかった。

 だがその結果、走り回ったアンナリーナに疲れの色が見える。



「リーナ……」


 ユングクヴィストと二人、戻ってきたアンナリーナの顔色を見て、テオドールが慌てて駆け寄る。


「おまえ……また無理をして。

 いい加減にしないと倒れるぞ」


 抱き上げて、問答無用で寝室に向かおうとするテオドールの腕から身を乗り出して抵抗する。


「駄目駄目!

 公爵様をお待たせてしまったのだもの。

 ちゃんとお話ししなきゃ」


「【薬師】殿、本当に見るからにお顔の色が悪い。

 私ならまた、出直して来ましょう。

 お気になさらず」


 エレアント公爵としては、娘の事で話があると言われて気にならない訳でもないが、それよりも今日この部屋に招待されてから見聞きし、味わったものの方が貴重だった。

 この体験がもう一度出来るなら、たとえ明日もう一度来訪することになっても、時間の無駄だとは思わない。



 魔法学院は入学式から5日間、休みとなった。

 だが生徒は学院内から出ることを許されていない。

 アンナリーナは2日寝込み、3日目の今日また、自室にエレアント公爵を迎えていた。


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