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王宮内 宰相執務室
コンコン「失礼致します」
「アンバード子爵が至急御目通りを願いたいと尋ねてこられております」
「アンバード子爵?」
「よい」の返事を返し、今回の尋ね人について、思い返す。堅実な商売をし、中々のやり手だという認識。中立派であり、王家に仇名す動きもしない、そのような人物だったと認識しているが、果たして火急の用とは。色々と考えを巡らせ、ノックされる扉を見つめた。
「ハール宰相。今回は急にも関わらず御目通りをいただき誠にありがとうございます。アンバード子爵でございます」
「アンバード子爵。それで、火急の用とは、いかがいたしましたか?」
「それが…」
夜会などで会った時とは印象の違う、煮えきれない態度を不思議に思う。やがて、決心したかのように私に顔を向けてきた。
「実は、私の娘が『番』に選ばれまして、そして娘も承認いたしました」
なんのことはない。ただの番報告かと安堵する。
「そうですか。かしこまりました。娘というと貴殿には確か…」
「はい。2人おります。下の娘の方でして、4つになります」
「なるほど。番報告でしたら、何も私でなくても構いませんよ。文官辺りに話を通していただければ、手続き可能です」
何故、私だったのか。至急という割には拍子抜けである。通常通り、片付けようとしたが、子爵に遮られる。
「いえ、それが、その…」
「…まだ何か?」
不思議に思っていると急に爆弾がくる。
「龍人だったのです。娘の相手が」
「……は?」
「龍人でございます。しかも『王』と本人は名乗っておりました」
動揺のあまり、手にしていたペンをバキッと折ってしまった。
「子爵。それは、その、誠か…」
「はい。私も冗談であったらいいと何度も思いましたが、一晩寝ましたが、状況は何一つ変わっておりません」
そこにいたのは、私より覚悟を決めた顔の男だった。
「今すぐ陛下に御目通りを願う。子爵、同席を。それに当事者も同席させたいのだが…可能か?」
「はい。娘はきちんとわきまえておいででした。龍人の方も娘の言うことはきちんと聞いております。今タウンハウスに控えております。すぐ呼んで参ります」
頭を下げて退出していく子爵。
宰相を務めて1番動揺していると心から感じた。
王宮 謁見の間
「陛下。本日は急な御目通り、誠にありがとうございます。本日は「よい。宰相から事は聞いておる。そこにおわすのが『龍人』で間違いないか」
「はい。そして娘のレティシアでございます」
お父様が急いで戻ってきて、私とリュークと共にまたお城に行く。
そして通されたのは謁見の間。
お父様が一番いいドレスに着替えときなさいと言ってくれて本当によかった。
これが陛下かと、本来なら頭を下げないといけないのだろうけど、リュークに抱っこされててそれもできないなと色々考えてしまう。
リュークに視線を向けてきてる陛下。それをものともせず、私ばかり見るリューク。
「あの、リューク。陛下が見てますよ。リュークについて聞きたいことがあるんじゃないですか?」
私の言葉に鬱陶しそうに陛下に視線を向ける。
「人の国の王と聞いた。ここに来ねばレティシアと番ぬと聞いたので、来た。我に用があるのか」
リュークの物言いに陛下が言葉に詰まる。
「いいか、人の王。我を謀るな。我は従う気もお前らと交流する気もない。ただレティシアが望んだのでここに来ておる」
そう集まった面々に威圧的に告げる。
「だが、龍人よ「やめた方がいいと思いますよ。リュークバルド様は心の機微に聡い。よからぬ考えを見抜くのは得意なお方。邪な気持ちで近づけば、燃やされますよ」
陛下の言葉を遮って現れたのは、またも見目麗しい男性。
どこから現れたのか辺りを見回すと、天井にある小窓が開いていた。
「グルド。何しに来た」
「そりぁあ我が主人が人間の王と謁見すると聞いて、お供しようかと。ガイルも来てますよ」
上と指差すと小窓から覗いているもう1人の龍人。
少し気まずそうに姿を現した。
「…主人。心配で来た。勝手、悪かった」
伝説上の龍人が3人も現れ、謁見の間は騒然としてしまう。
私が驚いていると「…あいつらは部下だ」と教えてくれた。
「はぁー」とため息をつきつつ、好きにしろというように先程グルドと呼ばれた青年に向かって手を振る。
そうすると心得たとばかりに彼が話し出す。
「初めまして。人間の皆様。私グルドと申します。こちらの龍人の王、リュークバルド様に仕えております、龍人でございます」
愛想のよい雰囲気で和やかに話し出すグルド様に場の雰囲気が和む。
「それで、どなたです。我が主人を利用しようとする輩は」
ニコッと笑顔で毒を吐くグルド様に皆が固まる。
「リュークバルド様は、心の機微にとても聡いのです。邪な考えなどすぐにバレてしまいますよ。人の皆様。生きていたいでしょう。なら、その考えをおやめください。我らとて、無闇な争いはしたくありません」
グルド様の言葉に何人か顔を伏せた面々がいた。多分
図星の方達なのだろう。
「しかし!」
諦めずに陛下が対話を望もうとするが、リュークがそれに反応する。
「人の王よ。我は、レティシアと共にあるならば、多くは望まぬ。主らと共にあるかはレティシア次第といえよう。レティシアが今は人の世にいたいと言うので我はここにおる。そして、主らと話せと言うのでここに来た。人の王よ、失望させるな。我はレティシアの望むものは全て与える。レティシアが望むなら、主らに力をやろう。全てはレティシア次第」
なんかとんでもない発言が飛び出した気がする。
後の2人の龍人もうんうんと頷いている。
つまり、私の言葉次第でこの国の行末が決まるったこと?
多分、「この国きらーい」と言えばすぐに滅ぼしてくれるんだろうな。
あはは。笑えなーい。
多分リュークに抱かれながら私は遠い目をしていたと思う。
そしてお父様は真っ青な顔をしていた。




