プロローグ:終焉と転生
雨の降りしきる夜、廃ビルの屋上。コンクリートの割れ目から立ち昇るどす黒い瘴気が、女子高生退魔師・みずきを包み込んでいた。
はぁ、はぁ……っ。しぶといわね、この化け物……!」
みずきは、破れた制服の袖で頬の血を拭った。目の前には、数多の目がうごめく異形の巨大妖魔。
「グガガ……人間、キサマ、ノ、命……喰ラウ……ッ!」
「食べたらお腹壊すわよ? 私、結構スパイシーなんだから!」
強がりを言いながら、みずきは懐から一束の符を取り出す。指先が微かに震えているのは、恐怖ではなく霊力の枯渇だ。
「これでも封印できないなんて、計算外もいいところ。……でも、これで終わりよ。アンタを野放しにしたら、明日の登校時間までに街が一つ消えちゃうもんね」
みずきは金剛杖を地面に突き立て、印を結ぶ。
「天にまします神々も、地を駆ける八百万の霊も、今だけは私に貸しなさい! ――秘術・九字連鎖封印陣!」
指先から放たれる青白い閃光。妖魔の絶叫が雨音をかき消す。
「ガ、アアア! ナン……ダ、コノ、力ハ……!?」
「私の全霊力、全部持っていきなさい! これで――チェックメイト!」
勝利を確信した瞬間だった。
封印の光が妖魔を飲み込む直前、空間がガラスが割れるような音を立てて歪み始める。
「えっ……? なに、これ。封印の術式が反転してる!? 嘘、嘘でしょ!?」
「……連レテ、行ク……貴様モ……異界ノ、底ヘ……!」
妖魔の黒い影が、みずきの足を掴む。地面にぽっかりと開いた「虚無の穴」。
「ちょっと待って! 話が違う……っ! まだ課題も終わってないし、アイスも食べて――」
叫びは、突如として断絶した。
視界が上下左右を失い、色彩が混ざり合い、みずきの意識は深い闇の底へと吸い込まれていった。
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