第19話 それは変形魔道具ではありません。
トミがトントンとけんちん汁に入れる具材を刻んでいる時だった。
「あれ、それ、さっきはハサミじゃなかったかい?」
1人の冒険者が不思議そうに首を傾げた。
「いや、俺が見た時はナイフだったぞ」
「いやいや、俺が見た時は……栓抜きだったぞ?」
冒険者たちが顔を見合わせる。
「ああ、これかね。
これは十徳ナイフっていっての、1本でいろんなことができるんじゃ」
トミは冒険者たちの前で、器用に十徳ナイフを広げてみせる。
「まさか……形を変える魔道具?」
「そんな御大層なもんじゃないよ、十徳ナイフじゃ」
「これ、鍛冶屋の親父が見たら、偉い事になるぞ」
「そういうもんかねぇ?」
トミは鍛冶屋の所に十徳ナイフを持っていった。
「素晴らしい!
これを再現できれば、革命的な道具になるぞ!」
「なんだい、この国には十徳ナイフはないのかい?」
「バーチャン、これを暫く貸してくれないか?」
「いいけど……ビクトリノックス製だから壊さんでおくれよ」
そして数日後。
鍛冶屋が本気出してジットク・ナイフを作った。
しかしそれは、色々な刃物が1つにまとまっただけのものだった。
「あんれまぁ、こりゃまた大きい十徳ナイフができたもんだね」
「うむ……あのサイズにまで軽減するにはもっと研究する必要がある」
さらに後日。
鍛冶屋がさらに本気出して「ジットク・ナイフ(改)」を量産した。
日本では銃刀法に引っかかる場合があるので、そこんとこは気をつけて持ち歩いてください。




