第12話 枕元に備えておきんさい
フォルテナが開けてくれた異次元接続ポイントの前で、トミはじーーーっと、目を凝らす。
「お。見つけた見つけた。
この穴は便利じゃのう」
穴の中から、体操着が入りそうな巾着を取り出す。
「これも必要だからの」
その紐を、ベッドの柱にしっかりくくりつける。
「バーチャン、その巾着はなんだい?」
「そうさね……」
トミは、ここに来たばかりの頃を思い出す。
「寝ている時に、魔獣が襲ってきた時の為のもんだよ」
「魔獣が?」
「ああ、靴じゃ」
「なんで枕元に靴なんだ?」
「割れた窓ガラスの上を裸足で歩く気かい?」
「部屋履き履けば……」
「そんなもん、大きく揺れたら吹っ飛んじまうべ」
冒険者達は巾着の中身に興味津々だった。
「これは?」
「ヘッドライトだべ」
頭に巻き付けて、ボタンを押す。
カッと光が弾け、部屋を明るく照らした。
「バーチャンそれは、灯り石かい?」
「まあそんなもんさね。
頭にくくりつけると両手が空いて便利だべ」
「バーチャンみたいな冒険者になると、いつ魔獣が襲ってきてもいいように準備してるのか!」
冒険者の1人が手をポンと鳴らす。
「冒険者?
よう分からんけんど、夜に魔獣が来たことはないのかい?」
「時々驚いて飛び起きるよ」
「そん時、周りのもん、全部吹っ飛んでるべ?」
「ああ、毎回酷い目にあってるよ」
「そんなら、吹っ飛んで困るもんは……」
袋の中身を見せる。
「全部この中に入れとくんじゃ」
冒険者の1人が笛を取り出す。
「これはなんだい?」
トミは息を吸い込むと……
ピィィィィィ!
皆思わず耳を塞ぐ。
「これは合図に使うもんじゃ」
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後日――
道具屋が本気出して、笛を量産した。
そして、枕元に巾着をくくりつけるのが流行った。
私の各部屋に備えてある初動セットバッグの中身は……
・軍手
・ヘッドライト
・ホイッスル
・老眼鏡のスペア
・ハンカチ、ティッシュ、ウェットティッシュ、絆創膏、マスク
・3日分の常備薬、常備薬の詳細と資格確認証のコピー
・耐水メモ用紙と油性ペン
・ミニラジオ
……こんなもんですかね。
他に踏み抜き防止インソールを仕込んだルームシューズとヘルメットですね。




