世紀末のチンピラと、どこが違うんですか?
追放されたジンは、 歴代勇者の痕跡をたどる!
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アーデンティア帝国の端にある、マイリン村。
横長の巨大な倉庫で、錆びついた鉄扉が、ギギギと、軋む。
「ふぅううううぬぬぬ!」
「ぐぐぐ!」
動き出せば、多少はスムーズ。
真ん中で体ごと押している女2人は、爆撃機が出てきそうな横長の大扉を半分ほど動かした。
本来は、左右にずれていき、大きな開口部を見せるのだが……。
息を切らしているイヴリン・リュトヴィッツは、汗を垂らしつつも、張りついた紫色の髪が色っぽい。
知的だが、流れていく汗が滑り込む谷間はない。
いっぽう、ロリロリしたベティ・フォン・トロッケルは、ピンク色の長髪を垂らしつつ、下を向いたまま。
「はーっ! はーっ! いや、勘弁せい! ウチら、とんでもないところに飛ばされたな?」
両膝に手をついているベティは、イヴリンよりも谷間がある。
するりと滑り込んだ汗は、そのボディラインをなぞり、下を目指す。
むせるような空間に、女の匂いが増えた。
この2人は、サーヴァス会戦で大型の蒸気機関を壊されたことで、懲罰人事。
技官ゆえ、銃殺や最前線での使い捨ては免れたものの、予算と設備がない僻地への赴任。
いざ来てみれば、何もない。
「中は……カビと錆びの臭い! しかも、動かすだけで一苦労ですよ!?」
「ウチら、今日から研磨して過ごすんやな……」
げんなりした様子のベティ。
無理もない。
広い倉庫に眠っていたのは、黒色や茶色、赤色で新たに塗装された車や部品ばかり。
ガンロッカーにはマスケット銃もあったが、触りたくもない。
歩けば足跡が残るほどの埃が積もっていて、軍の部隊プレートには虫の巣。
そこかしこで、風による砂山。
「動けるようにしても、上や他の部隊が知った途端に奪われて、代わりに動かない不良品を宛がわれるんでしょうね?」
「まあな! でも、ウチらが自衛するための武器と逃げるのに使う車は、早急に整備しないと!」
仮にも正規軍であるのに、もはやサバイバルだ。
ちなみに、一昔前の軍の整備班は、別の隊のエリアにある廃棄車両からまだ使える部品を抜き取りに行ったとか……。
やっていることが、不作で隣村から米を奪うみたいな感じ。
話を戻すと、2人は誰も行きたがらない駐屯地の穴埋め。
整備もできるから、厄介払いされたのだ。
「次に何かあれば、終わりですね?」
「そやなー! なくても、他のやつらの罪を押しつけられそうや……」
――しばらく後
生命線であるマイリン村に慣れつつ、現地の男たちのアピールをかわす日々。
「諦めませんね?」
「こんな僻地で美少女が2人もおったら、目の色を変えるわ! 寝るときも護身用の銃を手放さず、戸締りをしたほうがええで?」
いつ砂漠に呑み込まれてもおかしくない、別の意味で限界集落だ。
若い女が移住してくるのは、貴重どころではない。
こういった田舎では、夜這いが日常。
文字通り、ヤッたもん勝ち。
軍の基地での施錠はあり得ないが、そんなことを言っている場合にあらず。
2人は寝室にすると決めた部屋に、DIYで鍵をつけた。
センサーや仕掛けによる警報も。
息を吐いたイヴリンは、頷く。
「分かってます……。ここ、タスレドル砂漠と接しているんですね?」
同じ方向を見たベティも、不安そうな顔へ。
「せやな……。ティルは、本当に砂漠を越えたんかねー?」
「どうでしょう?」
その時に、遠くから砂埃と、蒸気機関による走行音。
2人が見れば、縦一列で数台の車が向かってくる。
近くで停車した屋根のない車両から降りてきたのは、偉そうな軍服の中年男とその部下。
帝国軍の上官と分かり、2人は右手で敬礼。
答礼がないものの、時間が経ったことで降ろす。
それを見た中年男は、ジロジロと見たあとで、部下に告げる。
「始めろ!」
「……ハッ! おい、かかれ!」
士官の命令で、数人の兵士が走り出した。
嫌な予感がする2人に、少佐の階級章がある中年男は自己紹介。
「ワシは、フィラブー守備隊の司令だ! 第35駐屯地の視察に来た」
「光栄です!」
「……お迎えせず、失礼しました」
直立不動の2人は、中央と比べて貧相な一行を見た。
(これで、司令……)
(副官の士官が1人で、万年少佐か! こりゃ、大変やで)
少佐は偉いが、しょせん中間管理職。
砂漠と接するエリアに放置された守備隊なぞ、島流しと同じ。
すると、離れている兵士が叫ぶ。
「車一台、使えます!」
「他は、使い物になりません!」
「小銃についても、同じく!」
そちらを見た中年男は、当たり前のように命じる。
「では、車一台をこちらへ渡すように!」
心の中で息を吐いた女子2人は、思う。
(デスヨネー!)
(やっぱり、これが目的かあ……)
返事はないが、中年男は構わずに続ける。
「貴様らには、その車を運転しつつ、フィラブー要塞へ来てもらうぞ? 我々のほうにも整備するべき機材が山ほどある! 仕事があることに喜べ!」
「「ハッ!」」
士官待遇の技官にすぎない2人に、選択の余地はない。
帰っていく縦列の最後で、横に並んで話し合う。
「ねえ、ベティさん? さすがに、食事と寝床はありますよね?」
「……あのオッサンに聞いてやー!」
投げやりなベティは、憂鬱そうだ。
「あると思うけど、ウチらはヤラれるわ……」
中央で通用する美少女、美女が来て、階級と立場は下。
そうもなる。
朝から晩まで整備に明け暮れ、夜はHな大乱闘となれば、持つわけないが。
「逃げたいですねー!」
「……ま、着いてから決めようや」
過去作は、こちらです!
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