43話・エピローグ
個室カフェ・タイキック。
一通り話がまとまり、トバリが落ち着いたようにモンブランをスプーンですくった。
「やっぱりシオンとトウカはそっくりだよな」
「確かに似ているが、わたしはいろいろと巻き込まれるなら嫌だぞ」
「お前、俺にやっていることを思い出せよ!?」
「わたしはトバリにしか迷惑をかけてないだろ」
「俺の負担が大きいんだけど!」
楽しそうにするシオンへトバリがジト目を向ける。
その姿にヒョウカが、驚いたように目を見開く。
「シオンさんは本当にあのカレン先輩の妹なの?」
「ん? ああ、姉様はかなり苛烈な人だしわたしと違うぞ」
「おおう……。ほんと春の青月山で出会えたのがシオンでよかったわ」
「わたしもトバリと出会えてよかったぞ」
「2人とも、おれを忘れないでほしいッス!」
「「ごめん!!」」
ソラが不機嫌そうに頬を膨らませた。
「なんてか、トバリさんはオモチャにされやすいんですね」
「俺をオモチャにしてるお前には言われたくない!」
「これは失敬です。それで話変わりますが、シオンさんは姉のカレン様がいるシンラ学園を受験されるんですか?」
「もちろん! コイツらも一緒だぞ」
「「おいこら!?」」
スイレンの質問にシオンが頷き、トバリとソラが突っ込んだ。
3人のやり取りにスイレンが青い瞳を光らせる。
「これは面白いことになりそうですね」
「俺は最悪ですけど。で、噂のシンラ学園ってどんなところなんです?」
「トバリさんは知らないんですか!?」
「外から見るのと、実際に通っている人で違いますよね」
「確かに……。ボクもお姉様からシンラ学園の話を聞きたいです」
トバリ、ソラ、シオン、スイレンの4人がヒョウカの方を見る。
「と、言われてもね。弱肉強食の超実力主義としか言えないわよ」
「シンプルな回答ありがとうッス」
「あ、うん、やっぱり俺は普通の高校に行きたいな」
「「寂しくなるからダメ!!」」
「なんでだよ!?」
シオンとソラが真面目な顔でトバリの肩を掴む。
「やはりトバリ君は、2人にモテているのね」
「言っておきますが、胃が痛いですよ」
「そ、そう」
ヒョウカが疲れた顔でドン引きする。
部屋の中に微妙な空気が流れる中、コーヒーを飲んでいた河原が口を開く。
「さてと。我々は天馬市に帰らないといけないので、ここを出させてもらいますね」
「もう少しゆっくりしていきませんか?」
「お言葉はありがたいですが申し訳ないです」
〈河原さんありがとう!!〉
河原が近衛姉妹に一礼した後、トバリ達は残りのスイーツやドリンクを飲んで立ち上がる。
「そうですか……」
「ええ。近衛さん、ありがとうございました」
「ふむ。君達がシンラ学園に入学するのを待っているよ」
「「はい!」」「え、ええ」
ヒョウカが軽く息を吐くと、シオンとソラが元気よく頷いた。
トバリは苦笑いを浮かべつつ、財布を取り出してお金を置いていく。
「では失礼します!」
「また来てくださいね」
「お前のオモチャにはなりたくない」
スイレンの言葉に、トバリがため息を吐く。
そのまま4人は近衛姉妹を部屋に置いて、足早に個室カフェ・タイキックの建物から出ていく。
「……また面倒な人に絡まれたね」
「あ、ああ。河原さん、早く地元に帰りませんか?」
「うん」
河原とトバリが短めのやり取りをした。
「しっかしあの2人、わたし達をかなり探っていたな」
「如月家関係はともかく、トバリさんが絡まれるのが謎ッスね」
「だよなー。まあでも、今は考えたくない!」
車の助手席に乗り込んだトバリは、渋い顔を浮かべた。
そのまま運転席に河原、後部座席にシオンとソラが座る。
「あ、そだトバリ。帰ったらわたしにご褒美をくれよ」
「……お前、俺に何を求める気だ?」
「抱き枕!」
「ちょっ!? おれもトバリを抱き枕にしたいッス!」
「貴様はすでにやっただろ!」
「もっとやりたいんスよ!」
シオンとソラが後部座席で騒ぐ中、河原が呆れ顔で車を発進させた。
「2人とも、騒ぐのはいいけどトバリは1人しかいないぞ」
「なら真っ二つにしたらいいだろ」
「シオンは鬼か!?」
トバリが全力で突っ込んだ。
「やっぱりトバリはトバリッスね」
「おいソラ! お前もたまには止める側に回って欲しいんだけど?」
「限度を超えない限りは嫌ッスね」
「ええ……」
ソラの楽しそうな笑顔に、振り向いたトバリが頬をひきつらせた。
4人が乗った白のワンボックスカーは高速道路に乗り、天馬市に向かって進んでいく。
〈元アラサーサラリーマンの俺の人生がもうめちゃくちゃだな〉
前を向き頭を抱えるトバリだが、少しだけ口元を吊り上げているのだった。




