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第1話 雑魚キャラ、問題児美少女に喧嘩を売られる!

 地方都市・天馬市にある住宅街の一軒家。

 黒髪ワカメヘアーの少年はベッドから起き上がり、昔からの癖でメガネを探す。

 テーブルに黒縁のメガネが置いてあり、かけると部屋の中が見える。


「は? ここはどこだ?」

〈どう見ても俺が住んでいるボロアパートじゃないよな!?〉


 冷や汗を流す少年はテーブルに置いてある手鏡を手に取る。

 そこに映ったワカメヘアーの髪型を見て、口を大きく開けた。


「え、いや……マジで? 俺はあのトバリになってないか?」


 トバリが焦る中、立ち上がり部屋を見渡す。

 すると勉強机の上のノートを見つけ、そこには『阿笠トバリ』と書かれていた。


〈マジじゃん!?!? 確か阿笠トバリって、テスタメントソウルのチュートリアルボスの取り巻き2で、主人公の初期操作を覚えさせるための敵で、フルボッコにされるはず……。どうしよう〉

 

 冷や汗がダラダラのトバリが真っ白な天井を見上げる。


「モブ以下かよ……。ん? そういや、なんで金眼なんだ?」

〈確かテスタメントソウルで目の色が黒色以外だと属性魔法が使えたんだよな。いやでも、ここがゲームそのままの世界の確証がないよな〉


 頭の中で考えるトバリは軽く息を吐く。


「あ、うん、金色の目は日本人っぽくないし、黒のカラコンを買いに行くか」


 現実逃避したトバリは、部屋にある私服や財布を手に取った。

 そのままトバリは朝早くに外に出て、近くにコンビニの看板を見つけたので足早に向かう。


「ついでに朝ごはんでも買うか……」


 財布の中には5千円札が1枚と小銭が入っており、トバリは軽く息を吐く。


〈この世界のことはまだわからないけど、サラリーマン生活よりは楽しく生きたいな〉


 少しだけ頬を緩めたトバリは、コンビニの中に入りカラコンや必要なものを購入。

 そのまま、コンビニのトイレで黒いカラコンをつけた。


「これで大丈夫なはず」


 トイレの洗面台で目の色を確認した後、トバリはビニール袋片手にコンビニの外に出る。


〈しっかし憑依しても金眼とか、どんだけ俺はゲームに引っ張られているんだよ〉


 苦笑いを浮かべるトバリは、大通りを歩く。


「トバリって確か、チュートリアルが終わった後は雑に殺されてどのルートでもフェードアウトだったよな……。え? 俺、死ぬの?」


 近くに公園があり、トバリはベンチに座り体を震わせた。


〈あ、あくまでゲームで、学園に入学しなかったらいいはず。いや待てよ、俺が学園に入学しなかったらストーリーはどうなるんだ?〉


 朝の涼しい風が公園に吹く。


「シンプルに学園に行かなければ死亡フラグは回避できる。まあでも、何かあった時のための自衛なら、俺にできるのはこれしかないよな」


 トバリは右手を握ったり開いたりした後、軽く息を吐く。


〈頼む! 使えてくれ!〉


 念じるように祈ると、右手にバチバチと金色の雷を纏えた。


「やった! やったぞ!!」

〈レア魔法の雷属性! って、原作のトバリって属性魔法を使えなかったはずだよな?〉


 嬉しさと困惑でトバリが立ち上がる。


「……って、マジで雷が使えるんだけど?」

〈雷魔法は単騎決戦では属性魔法の中で最強クラスだけど、燃費が悪いから数の暴力は少し苦手だったはず。なら、どうやって使うか考えないとな〉


 口元に手を置いたトバリは、軽く息を吐き空を見上げた。


「まあでも、今は判断材料が少ないよな……」


 トバリはホッと胸を撫で下ろす。

 朝早い公園には人が少なく、トバリは座り直してコンビニで購入した朝食を食べる。


〈学園に行くと、主人公との負けイベはともかく、死亡イベだけは潰さないとやばいよな。それと、ゲームに似た世界に来たら、やっぱり最強になりたいよな〉


 水を飲み、ニヤリと笑う。


「って、修行って絶対に痛いししんどいよな……。んー、下手に習うより最初は独学でやって、無理なら師匠を探す方針でいくか」


 トバリはおにぎりを食べ終え、ゴミを袋に入れた。

 

「よし、やることが決まったな」


 トバリは近くのゴミ箱にゴミを捨て、やる気を出す。

 そのまま公園から離れたトバリは、街の地図を見ながら外れの山の中へ足を進めた。


 ーー


 サラリーマンの青年がトバリに憑依して1週間後。

 トバリは森の中で雷魔法の練習をしていた。


〈基礎のサンダーボルトが使えるようになったな〉


 大きな木に雷魔法のサンダーボルトを撃ち込み、威力を確認する。


「大体、3発で木が折れてるから威力は高いのか?」


 周りには折れた木が倒れている。


「サンダーボルトってゲームでこんな強かったか?」

〈いやでも、集中して右手に雷を集めるよりドリルみたいに螺旋状に回転させて撃つと、貫通力も上がるし強くなるよな? んー、もしかしてやり込み要素か?〉


 木を避けつつ、トバリはリュックを背負い休憩のために川へ向かう。


「雷魔法はかなり楽しいし、もっとやり込めばいろいろとやれそうだな」


 トバリがニヤリと笑う中、歩みを進めると大きめの川へ到着する。

 そこには黒髪ロングで、体操着姿の女子が滝行をしていた。


「……え?」


 彼女の年齢は今のトバリと同じ14歳ほど。

 

〈あいつ、どこかで見覚えが。いや、そんなわけないよな〉


 滝行をしている黒髪女子をよそに、トバリは大きな岩に座り込む。


「うん、水が美味しい!」

  

 滝の周りに水飛沫が飛ぶ。

 トバリがミネラルウォーターを飲んでホッと息を吐くと、そのタイミングで滝行をしていた黒髪女子が目を開けた。


「「……あ」」


 目が合う二人。

 トバリは露骨に目を逸らし、空を見上げた。


〈よし、今日も平和だな〉


 死んだ魚のような目を浮かべるトバリへ、黒髪女子が鋭い目で睨みつけた。


「貴様は何者だ!」

「通りがかりの取り巻き2です!」

「貴様、ふざけるな!?」


 黒髪女子の睨みつけに、トバリが焦りながら言葉を返す。

 そのままトバリは大きな岩に座りつつ、雷魔法で迎撃できるように右手だけは構える。


〈使いたくないけど、命には変えられないよな〉


 ズカズカと川の中を歩く黒髪女子は足を滑らせて転んだ。


「「……え?」」


 固まる二人は同じタイミングで目を合わせた。


「ゆ、許さん!」

「なんでだ!?」


 敵意を剥ぎ出しにする黒髪女子に、トバリはメガネを直しつつ全力で突っ込むのだった。

 


 

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