山口県:後編 舞のヒントと千畳敷での鬼ごっこ
舞視点
界のXが更新された翌日一郎・佐那の自宅にて
「この監視カメラに写ってるのは舞と望と界だよな?」
突然やってきた兄さん(雄一)と義姉さん(撫子)は私に監視カメラの画像を見せる。日本に帰ってきたら実家に帰ってるから場所はばれてるんだよね。その画像は別府厳島神社周辺の監視カメラの一つ。そこには女性二人と帽子を深くかぶった茶髪の男性が移っている。
(界君の思惑通り、二人のことはばれてないみたいね)
「久しぶり、二人とも。そうよ、望に探してもらって遊びに行ったのよ。お土産食べる?」
母さんたちにも渡したフグせんべいを渡す。兄さん達はお土産を横にずらしにらみつけてくる。
「なんで、場所を教えてくれないんだ?」
「なんでって、界君の敵でしょ?兄さんたち」
私の言葉に黙る二人。その顔は苦しそうだ。私は昔から人の表情から感情を読むのは得意。まあ父さんたちのポーカーフェイスは読めないし、界君もたまに読めないんだけど。ふーん、界君家出当時より不安と困惑の色が強くなってるね。家出当時のリモートでは怒りとあきれだったから。少しは界君のこと考え始めたのかもしれないね。まだまだだと思うけど。まあ、追及の手は緩めないけどね
「そもそも名取島にいたメイド達含め界君のこと何もわかってないんでしょ?数回しか会ってない望のほうが彼のことはわかってるみたいだし」
色々文句は言ったけど、兄さんたちは文句は言ってこず黙って聞いていた。
「もういい?なら帰ったら?」
私の言葉に二人はソファから立ち上がり扉に向かっていく。その後ろ姿は少し寂しそう・・・はぁ、しょうがない、少しヒントを上げようかな。
「二人は界君に家族と思われてないからまだ名前呼びなのよ」
二人は振り返る。私は続けて話す。
「理由は教えないけど、界君の認識では親は真さん・夕陽さん、祖父母は父さん・母さん・真柴家の祖父母、家族は由利ちゃん・私・望・天草の祖父母ってところね(今は秘密だけどクロエちゃん・ロアちゃんも含まれてるわね)。今日会ってみてわかったけど界君の認識は当然ね。二人はまず私に聞かな変えればならないことがほかにあったはずよ?」
「え?」
「ヒントはここまで。望、送ってあげて?」
「わかりました」
まだ二人は聞きたそうにしてるけど、望に頼んで二人を追い出す。本当にあきれるわ、まず息子の居場所が分かったなら
『無事なの?』『けがはしてない?』『元気にしてる?』
とか聞くものでしょ?
俺が山口県に来て約3週間、もう次の県に行くから雄一さん達に挨拶してくるか。Xを更新。
『出現予報!明日13時千畳敷』
長門市の高原の一番高い333m付近の草原を千畳敷と呼ばれている(石碑あり)。この位置からは草原・木・海が組み合わさった大パノラマを楽しめる。
「界様、ご武運を」
「もしもの時は迎えに行きますので」
二人から激励の声をもらいいざ戦場へ。千畳敷がある草原の近くの森で二人と別れ目的地に向かう。草原に入って1分後早速メイド隊に見つかり、遠目から監視される。あれ?捕まえに来ないんだ。そのまま監視するメンバーが増えながら千畳敷につくとそこには東条さん・レジーナさん含むメイド隊主力部隊と婚約者候補の女の子たちと
「あれ?雄一さん達もいるんだね?その恰好、まさか自分自身たちで俺を捕まえるつもり?」
そこには雄一さんと撫子さんもいる。服装がスーツ姿ではなく動きやすい格好。
「せっかく息子と遊べる機会だからね」
「この年になって息子と本気で遊べる機会なんて無いからな。さあ、ルールは全壊と一緒でいいか?」
「ふーん、ルールは前回と一緒、2時間の間はここ付近を逃げるから捕まえてみなよ」
「わかった。こっちも2時間逃げきられたら、今日一日は追いかけない」
「いいの?」
「ああ、ゲームなんだからルールは守らないと」
何か心境変化でもあったのかな?さらにもう一人テレビクルーを連れてきた男性がいきなり頭を下げてくる。
「前回はうちのクルーが申し訳ありませんでした」
「え?いきなり何?」
「名取界君、君のことを勝手にカメラに移したことを謝ってるんだ。本来ならきちんと君に相談してカメラを回さなければならなかったが、君が家出した以降体調が悪くほかの者に任せてしまい説明が足りなかった。私の権限で広島・岡山で撮った映像は取り下げた」
「なるほど。まあ、もう顔は知れ渡っているので使ってもらっていいですよ。でも番組向けに行動しませんよ?こっちは本気なんですから」
「わかった。ありがとう。編集した映像の確認を取ってもらいたいんだけどどうすれば?」
「だったら名取一郎・佐那の家に住んでいる名取舞さんに渡してください。彼女なら俺に連絡取れるので」
「わかった」
テレビ局でも話が分かる人いるんだね。
「さて、始めよう」
俺の合図でみんなの雰囲気が変わる。でも周りはメイド隊が包囲していて隙が無い。まあ地上わね。俺は右手を上げメイド隊の包囲網の奥にある背の高い樹に向け発射!
「!ワイヤーショットよ。あれは名取製ということは舞様経由」
俺が発車したワイヤーは狙いをつけた樹に刺さり、ワイヤーを巻き取りながらメイド隊の頭上を移動して樹に着地。舞さんと連絡を取れるってことで名取製の装備を付けててもクロエたちのことはばれにくくなった。なのでこのワイヤー移動も解禁。そのままいくつか樹を経由しつつ地面に着地。後方ではレジーナさんが鞭を使って俺と同じように気に移動している。予定通りこのままキャンプ場抜けて千年の森の方に逃げていくか。
「ふぅ」
大きな樹に背を預けで休憩しながら周囲を警戒する。頭上ではヘリの音が聞こえる。あれから20分何度か襲撃をかわしつつ息を整える。!!もうばれたか。森の中を走っていくと
「界様発見」
俺が走り出したのをみて、身を潜めていたメイド隊が追いかけながら連絡を取る。今回のメイド隊、訓練でもしたのか隠密性が上がっており、森の走り方もそこそこ慣れている。これはうかうかしてると捕まるぞ。
がさッ
森の中を移動していると周囲の草むらからメイドが3人飛び出てくる。二人はそのまま向かってきて、もう一人はテーザー銃を構えている。
ガン
「くっ」
移動しながらテーザー銃の斜線をメイド一人で遮りながら、メイドの攻撃をかわしながら地面の石をつかみテーザー銃へ投擲。テーザー銃を破壊して、近づいてきたメイドにスタンロッドをお見舞いしてその場から逃走。森から飛び出ると
シュ
拳が飛んでくる。体を傾けかわすとそのまま何度も鋭いジャブが飛んでくる。全てかわしてるとジャブの連打が停まり横からなぎなたの一振りが襲ってくる。バク転でかわし永距離を取ると目の前には雄一さんと佐那さんがそれぞれ拳となぎなたを構えている。今回初めての接触だ。
「へぇ、結構動けるんだね?」
「千光寺から体を鍛えなおしたからな。腕が落ちない程度に体は動かしてたんだけど」
「私もよ。でも思っていた以上に腕が鈍ってて驚いたわ」
「名取島の図書館で二人の資料は見てたけどどっちも鋭くて驚いた」
軽い世間話を交えながら二人は迫ってくる。それらをかわしながら草原の方に逃げていく。
カン カン カン
狛犬さんと東条さんのレイピアの一撃をスタンロッドで弾きながら周囲を警戒。二人が攻撃をやめたタイミングでバックステップ。さっきまでいた場所にテーザー銃が突き刺さる。
!
さらにバク転。
バチン
今度はレジーナさんの鞭が飛んでくる。バク転途中の逆立ちの状態で東条さんのレイピアが襲ってくるので腕をひねり体勢を変えかわす。今俺はメイド隊たちに崖際に追い込まれている。ここの位置だとワイヤーショットを使うための大きな樹はない。彼女たちもそれに気づいており、主に攻撃するのはMRが高いメンバーで、それ以外は俺が逃げれないように包囲網を狭めていく。
「もう逃げれませんよ、界様」
東条さんがレイピアの泥を振り落としながら話しかけてくる。
「なかなかいい手筈だよ。さすがメイド隊。でももう一歩だったね」
そう告げると崖から飛び降りる。そのままワイヤーショットを崖に打ち込みながら壁走り。そのまま反対の手についてるワイヤーショットを先の崖に打ち付け勢いをつけながら壁走りを継続して別の草原の上に飛び乗る。ふぅ、無事成功、でもこれ体力が消耗するからしたくないんだよね。練習では何度かがけ下に設置したネットに落ちたし。
森の中で潜んでいると
「見つけた」
シャルロットが現れる。すぐに逃げようとすると
「待って。少し話したいんです」
「・・こっちは君に興味が無いんだけど。そっちも雄一さんのためなんでしょ?」
「最初は雄一さん達のためだった。でもある人に言われたの。『結婚って何なの?』って。それからいろいろ考えたの。確かにあなたと直接会って話すまでは雄一さん・撫子さん達の恩返しのために大会に参加したわ。でもそんな理由で参加する自体他の参加者や界殿自身に失礼だった。結婚はお互い理解し愛し合い一緒に暮らしたいという誓いのようなもの。それに気づいた時この大会をやめようと考えた。でも界殿と戦って心に何かが残ったの」
彼女はうつむいていた顔を上げる。顔には森の中を駆け回り泥などもついているがその表情は凛々しい。
「改めて私の名前はシャルロット・ジークハイド。騎士の一族ジークハイド家の娘の一人。君の腕の強さ、自分の信念のためなら戦おうとするその姿勢・行動力に魅かれたの。この思いが友情なのか・尊敬なのか・恋なのかはわからない。それをこれから君と話して知っていきたいの」
「・・・わかった。そんなに真剣ならこの家出が終わったら連絡するよ」
「ええ、じゃあもう行って。私は少し休憩してから追いかけるわ」
「わかった」
界がその場から離れるとシャルロットは気が抜けたようにその場で座り込む。その表情はやり切った顔をしている。
そして15時
「ハァ ハァ ハァ 今回は私達の負けね」
「ハァ ハァ あまり疲れてないのね?界」
「そこそこ鍛えてるからね。物陰に隠れて休憩もしてたし。じゃあ帰るね?」
「ええ。約束通り誰も追わないわ」
しかし一人撫子さんの意見に反論する人が。
「旦那様・奥様、やはりここは界様を追いかけましょう。この場所なら逃しません」
「霧子ちゃん、きちんと話したでしょ?」
「しかし」
「霧子、お二人の決定ですよ」
東条さんに止められ下がる狛犬さん、その程度で下がるなら反論するなよ。
「じゃあ、ばいばい」
こうして山口県での逃走劇は終了した。




