壁画
お読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
階段は。
長かった。
石。
石。
石。
どこまでも。
下へ続いている。
先頭はレオン。
その後ろに。
ドルガン。
ヴェルナ。
フィオ。
ルー。
アルス。
俺は。
最後。
頭の奥。
声。
今は。
何も言わない。
それが。
逆に怖かった。
冷たい風。
雪の匂い。
ここ。
地下のはずなのに。
何故か。
冬の山みたいだった。
やがて。
通路が終わる。
広い。
地下とは思えない。
巨大な空間。
天井は高く。
柱が並ぶ。
中央。
祭壇。
そして。
壁一面。
巨大な壁画。
全員が。
足を止めた。
ドルガンが。
思わず呟く。
「何だよ……」
白い外套。
長い髪。
剣。
雪。
そして。
男。
壁画の中央。
そいつが。
立っていた。
俺は。
息を呑む。
似てる。
違う。
俺が。
そいつに似ている。
ドルガンが。
俺を見る。
壁画を見る。
また。
俺を見る。
「おい」
「マジかよ……」
フィオも。
声を失っていた。
ルーの笑顔も。
消えている。
ヴェルナが。
珍しく。
言葉を失っていた。
レオンだけが。
じっと。
壁画を見ている。
俺は。
近づく。
男の顔。
優しそうだった。
少しだけ。
困ったように笑っている。
知らない。
知らない顔。
なのに。
何故か。
泣きそうになった。
何だこれ。
本当に。
何なんだ。
頭の奥。
声。
今度は。
はっきり。
聞こえた。
『久しぶり』
「っ!」
思わず振り返る。
誰もいない。
レオンが眉をひそめる。
「どうした」
「今」
言いかけて。
止まる。
言えるわけない。
また。
声。
優しい。
懐かしい。
『帰ってきたね』
俺は。
壁画を見る。
男も。
笑っていた。
『待ってた』
「誰だ」
気づけば。
そう呟いていた。
頭の奥。
少しだけ。
笑う気配。
『ひどいな』
『忘れたの?』
知らない。
知らねぇよ。
俺は。
お前を知らない。
壁画の下。
文字。
古い。
読めないはず。
なのに。
読める。
口が。
勝手に動く。
「シュトック――」
全員が。
俺を見る。
俺も。
止まる。
嫌な汗。
文字は。
まだ続いている。
読める。
読めるのに。
読みたくない。
頭の奥。
声。
少し寂しそうに。
『そこまでか』
その瞬間。
頭が。
割れるみたいに痛んだ。
白い旗。
雪。
鐘。
泣いている女。
笑う男。
誰かが。
名前を呼んだ。
聞き取れない。
なのに。
胸の奥が。
強く。
締めつけられる。
知らない。
知らないはずだ。
それでも。
その声を。
聞いてはいけない気がした。
「やめろ!!」
叫んだ。
世界が。
揺れる。
フィオが叫ぶ。
「エイゼン君!」
レオンが。
駆け寄る。
ドルガンも。
ヴェルナも。
皆の声が。
遠い。
壁画の男だけが。
ずっと。
俺を見ていた。
困ったように。
優しく。
笑って。
『またね』
意識が。
落ちた。
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