白い影
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「白甲冑です!!」
「南門外で、“白い影”が――!!」
ミオの声が、廊下へ響く。
空気が、一瞬で変わった。
さっきまでの別れの余韻が、全部吹き飛ぶ。
レオンの目が細くなる。
グリードが舌打ちした。
「……まだいやがったのかよ」
リシェルの顔が青い。
東嶺の三人も、足を止めていた。
シンが静かに振り返る。
「終わっていなかったか」
嫌な汗が背中を流れる。
……いや。
正直。
終わったと思いたかった。
やっと一息つけると思ったのに。
なんなんだよ、あいつら。
その時だった。
重い足音。
廊下の奥から、誰かが歩いてくる。
コツ。
コツ。
妙に静かな足音だった。
視線が向く。
長い銀金髪。
白い本軍軍装。
細身の男だった。
腰には、一振りの剣。
男が、こちらを見て笑う。
「へぇ」
「君が、例の見習い?」
軽い声だった。
でも。
妙に、空気が変わる。
強い。
一瞬で分かった。
レオンですら、少しだけ目を細めている。
男が、ゆっくりこちらへ歩いてくる。
自然と。
廊下の兵たちが道を空けていた。
なんだ、この人。
「アルス・レイヴァルト」
「本軍剣士だ」
にこっと笑う。
爽やか。
なんだか、妙に目が離せない。
その時。
廊下の奥から、低い声が響いた。
「アルス」
ケッヒル隊…、大佐だった。
灰銀の髪を揺らしながら、こちらへ歩いてくる。
その姿を見た瞬間。
廊下の空気が、さらに引き締まった。
「南門外へ向かう」
「遊びの時間は終わりだ」
アルスが、小さく肩をすくめる。
「了解」
笑みが、少しだけ消えた。
その時。
さらに奥から、細い声が響いた。
「巡回隊三名が負傷」
「うち一名は錯乱状態」
「“白い鎧が立っていた”と繰り返しています」
片目に銀のレンズを嵌めた男だった。
細身。
軍服を隙なく着込んでいる。
鋭い目が、こちらへ向いた。
「……クレイス」
レオンが小さく呟く。
その男が静かに口を開く。
「エイゼンシュタイン」
「君は、白甲冑を間近で見ているな」
「……まあ」
空洞みたいだった兜の奥。
赤い光。
嫌な汗が滲む。
クレイスが淡々と続ける。
「確認したい」
「奴らは、本当に呼吸をしていなかったか?」
空気が冷える。
喉が、ひどく乾いた。
白い鎧。
揃いすぎた動き。
あの動き。
どう考えても、人間じゃなかった。
「……してなかった」
「少なくとも、人間には見えなかった」
沈黙。
クレイスが静かに目を閉じる。
「やはりか」
なんなんだ、この人。
圧が半端ねぇ。
遠くで。
重い角笛が鳴った。
ボオォォォ――。
低い。
腹に響く音。
ケッヒルが振り返る。
「南門外を確認する」
「エイゼンシュタイン」
「お前にも見てもらう」
「はぁ!?」
思わず声が裏返る。
「いや待ってくださいよ!」
「俺まだ怪我人なんですけど!?」
アルスが、くすっと笑う。
ミオも、小さく吹き出した。
クレイスだけが真顔だった。
「君は、もう当事者だ」
さらっと怖ぇこと言うなよ。
その時。
リシェルが、一歩前へ出た。
「む、無茶です!!」
珍しく強い声だった。
「シュトックは、まだちゃんと治ってないんですよ!?」
「……だよな」
「わ、私も行きます!」
「いや、お前は休めって」
「嫌です!!」
涙目で睨まれる。
……なんなんだよ、もう。
その時だった。
廊下の窓の外。
白い何かが、一瞬だけ見えた。
ぞくりとする。
王城の外壁。
そこに。
白い影が立っていた気がした。
瞬きをした瞬間。
もう消えている。
背筋が冷えた。
……いや待て。
今の。
なんだ。
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