混成戦
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「配置を確認する」
レオンの声。
短い。
迷いがない。
「前衛は俺とグリード」
「カイゼルは中央」
「エイゼン」
来たよ。
「遊撃だ」
「遊撃?」
「自由に動け」
「だが、勝手に死ぬな」
雑だなあ。
「了解っす」
でも。
その方がいい。
決まった動きは、もう通じない。
「私は後ろにいるね」
声。
振り向く。
柔らかな金色の髪が風に揺れている。
リシェルだった。
「無理しないで」
「それ無理なやつでしょ」
軽く返す。
でも。
「……頼む」
レオンが言う。
一瞬、全員が止まる。
「死なせるな」
短い言葉。
でも、重い。
リシェルが少しだけ笑う。
「任せて」
その声は、妙に落ち着いていた。
「配置完了!」
教官の声。
広い訓練場の中央。
石畳の区画の奥に、一本の旗。
あれを取る。
それだけのはずなのに。
空気が、違う。
「……来るぞ」
レオン。
その瞬間。
東の五人が、動いた。
速い。
でも――
「……違う」
思わず出る。
速さじゃない。
“形”が違う。
一斉に来ない。
散る。
「は?」
グリードが声を上げる。
東の五人が、五方向に分かれる。
「囲む気か!?」
「違う!」
レオンが即座に否定する。
「分断だ!」
次の瞬間。
シンが動いた。
真っ直ぐ、中央。
カイゼルへ。
ギィンッ!!
低く、鋭い音が響く。
始まった。
同時に。
「っ!」
横。
双剣の男が、リシェルに向かっている。
「おい!」
思わず叫ぶ。
でも。
遠い。
間に合わない。
「……っ」
リシェルが一歩引く。
速い。
でも、戦い慣れてない。
「ちっ……!」
足が動く。
考える前に。
「エイゼン!」
グリードの声。
「行け!」
言われなくても行くっての。
踏み込む。
ズレる。
一直線じゃない。
“崩す”
スッ――
間に入る。
ギィンッ!!
双剣と刃が噛み合う。
火花が散る。
重い。
振り切る前に、止まらない。
棒みたいに、戻ってこない。
流したつもりでも、腕が持っていかれる。
……雑に振れば、斬れる。
“当てる”じゃない。
“通る”。
「……」
相手の目が、わずかに動く。
「悪いけど」
息を吐く。
「そっちは通さねえ」
言った瞬間。
背後で――
ドォンッ!!
鈍い衝撃音。
振り向く。
グリードが吹き飛ばされていた。
「は!?」
巨漢。
大剣。
あいつかよ。
「くっ……!」
グリードが地面を擦る。
「やべえな、これ……!」
レオンが前に出る。
止めに入る。
でも。
「……遅い」
ぽつりと声。
女剣士。
レオンの横を抜ける。
「っ!?」
速い。
完全に。
「エイゼン!」
リシェルの声。
振り向く。
旗。
そこへ向かってる。
――いや、違う。
取れる距離なのに、取らない。
一瞬、間合いの外で止まっている。
「……なるほどな」
ぽつりと出る。
これ。
勝つ気じゃない。
“崩す気”だ。
俺たちを。
終わらせる気がない。
この試験自体を、壊しに来てる。
……俺たちも、巻き込んで。
「……上等っすよ」
足を踏み込む。
ズレる。
今度は、自分から。
「止まれ」
ギィンッ!!
刃を叩き落とす。
止まる。
一瞬だけ。
「……」
目が合う。
冷たい。
でも。
ほんの少しだけ。
楽しんでる。
「……めんどくせえな」
口から出る。
でも。
「嫌いじゃねえ」
踏み込む。
崩す。
不格好でもいい。
止まらなきゃいい。
ギィンッ!!
刃がぶつかる。
軋む音。
弾く。
崩れる。
でも――
「……浅い」
届かない。
まだ。
その瞬間。
中央。
カイゼルとシン。
動いた。
スッ――
見えない。
次の瞬間。
ドォンッ!!
地面を打ち抜くような衝撃。
「……は?」
誰かが呟く。
空気が変わる。
一段。
重くなる。
「……これ」
リシェルが小さく言う。
「まずいよ」
「何が」
聞き返す。
「止まってない」
「……何が」
「この試験」
取れるはずの流れなのに、
誰も終わらせようとしない。
背筋が冷える。
その時。
観覧席の上。
軍服の男が、静かに言った。
「――いい」
「続けろ」
……おい。
おいおいおい。
「……やっぱりかよ」
小さく呟く。
これ。
もう。
模擬戦じゃねえ。
「エイゼン!」
レオンの声。
振り向く。
「崩すな!」
は?
「崩し続けろ!」
……なるほどな。
言われなくても。
「そのつもりっすよ」
息を吐く。
目の前の相手を見る。
東の剣士。
その奥。
旗。
さらに奥。
シン。
「……遠いな」
ぽつりと出る。
でも。
「行くしかねえか」
足は、止まらない。
むしろ。
さっきより。
前に出てる。
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