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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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試験の異変

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「次で終わる」


カイゼルの言葉が、頭に残っていた。



終わる。


試験が?


ただの交流模擬戦だろ。


終わるも何も、最初から終わりは決まってるはずなのに。



「……なんだよ、それ」


小さく呟く。



そのまま戻ると、グリードが眉をひそめた。


「何言われた」



「別に」



「別にって顔じゃねえだろ」



うるせえな。


「ちょっとムカつくことっすよ」



「そりゃいつものことだろ」



……まあ、それはそう。


でも今回は、ちょっと違う。


ただ腹が立つとか、そういう感じじゃない。


胸の奥に、小さい棘みたいなのが残ってる。



「エイゼン」


声。


レオンだった。


「何を言われた」



「お前まで聞くんすか」



「答えろ」



圧があるなあ、ほんと。



「……次で終わる、って」



それだけ言うと、レオンの目がわずかに動いた。



グリードも笑わない。


「なんだそりゃ」



「知らねえっすよ、こっちが聞きたい」



「……」


レオンは少しだけ考えるように黙る。



その時だった。



カン――


鐘の音。



さっきまでとは違う。


短く、鋭い。



観覧席のざわめきが、一瞬で静まる。



「なんだ?」


グリードが言う。



「休憩……じゃないっすよね」


嫌な感じしかしない。



前に立っていた教官が一歩下がる。


代わりに、剣術院の上役らしい老人が中央へ出てきた。


濃紺の外套。胸元には王立剣術院の紋章。


その脇には、見慣れない軍服の男が二人。



……軍?


ただの交流試験に?



「諸君」


老人が声を張る。


「ここまでの結果を踏まえ、本日の試験内容を一部変更する」



ざわっ――と空気が揺れる。



やっぱり来たよ。


絶対ろくでもねえ。



「変更後は、対個人戦ではなく、混成形式とする」



「は?」


思わず声が出た。



周りも一気にざわつく。



「混成ってなんだよ」



「聞いてねえぞ」



「合同戦か!?」



老人はざわめきを無視して続ける。


「王国側三名、東方側三名」


「即席の隊を組み、指定区域内で旗を奪取せよ」



旗取り?


いや。


そんな軽い空気じゃない。



「勝敗条件は旗の確保、または戦闘不能の判定」



「なお――」


少しだけ、間が空く。


嫌な間だ。



「武器制限を解除する」



空気が凍った。



え?


今、なんつった?



「模擬剣の使用義務を外す」


「実剣を許可する」


「ただし急所への致命打は禁止とする」



……いやいやいや。


待て待て待て。



「それ模擬戦じゃないでしょ」


思わず口に出た。



グリードも真顔だ。


「急所禁止で済む話かよ……」



レオンは黙っている。


でも、表情がいつもより硬い。



観覧席の上段。


軍服の男たちは何も驚いていない。


最初から知っていた顔だ。



「……なんなんだよ」



喉の奥がざらつく。


嫌な感じがする。



試合じゃない。


選抜でもない。


選んでる。


見てるんだ。



“使えるかどうか”を。



その時。



「エイゼン」


小さな声。



振り向く。


陽の光の中で、柔らかい金色の髪がふわりと揺れる。薄い緑の瞳が、真っ直ぐこっちを見ていた。


リシェルだった。


いつの間にか、場の外れまで来ていた。



「……顔、悪いよ」



「そりゃそうでしょ」


「剣の試験に実剣持ち込まれたら、誰だって顔悪くなりますよ」


冗談っぽく返したつもりだったけど、声は少し硬かった。



リシェルは笑わない。


「やっぱり変だよ」



「うん、それは俺でもわかる」



「違う」


少しだけ首を振る。


「空気」


「さっきから、東の人たちだけじゃない」


「この場そのものが変」



……この子、たまにそういう言い方するよな。


ふわっとしてるくせに、妙に当たってる感じの。



「ケッヒル隊長は?」



聞くと、リシェルは目だけで一方向を示した。



石柱の影。



そこに、隊長がいた。


腕を組み、中央を見ている。


まるで最初から全部わかっていたみたいな顔で。



「……隊長」



近づくと、低い声が返る。


「なんだ」



「なんだ、じゃないっすよ」


「これ、聞いてないんですけど」



「俺も細部までは聞いていない」


意外な答えだった。



「ただ」


視線を中央から動かさないまま言う。


「東は最初から“試す気”だった」


「交流ではなく」


「測る気だ」



「何を」



「こちらの底だ」



……っ。


背筋が冷える。



「お前たち見習いが、どこまで使えるか」


「王国の剣が、どこまで通じるか」



そこまで言って、隊長は初めてこっちを見た。


「だから言った」


「もう内側の人間じゃない」



……はぁ。



最悪だ。


ほんとに最悪。



「逃げたいっす」



「逃げるな」


即答。


知ってた。



「……めんどくせえ」


本音が漏れる。



でも。


その時、中央でさらにざわめきが起きた。



東側の列から一人、前に出る。


黒い装束。


細身。


長い剣。


シン・ルォ。



「異議あり」



初めて、はっきりと声を聞いた。


静かなのに、妙に通る。



「三対三ではぬるい」



会場がざわつく。



ぬるい?


何言ってんだこいつ。



老人が眉を寄せる。


「では、そちらの提案は」



シンは少しだけこちらを見る。


その視線が、選抜組をなぞる。



レオン。


グリード。


カイゼル。


そして――


俺で、止まる。



「五対五」


「王国側は選抜全員でよい」


「東方側も、同数出す」



ざわっ――と空気が爆ぜた。



「ふざけんな!」



「人数まで増やすのかよ!」



「そんなの聞いてねえ!」



俺も聞いてねえよ。



老人は軍服の男たちの方を見る。


小さくうなずきが返る。



……おい。


おいおいおい。



「認める」



は?


嘘だろ。



「本試験、最終戦は混成五対五で行う」


「両陣営、準備に入れ」



観覧席がどよめきで揺れる。



何人かの教官まで顔をしかめてる。


なのに、中止にはならない。



「……終わる、ってこういうことか」


ぽつりと出る。



カイゼルの言葉。


次で終わる。


試験が終わるんじゃない。


“普通の試験”が終わるって意味だったのか。



「おい」


グリードが近づいてくる。


珍しく、笑ってない。


「五対五だってよ」



「聞こえてました」



「やべえな」



「だいぶ」



レオンも来る。


「組むぞ」


短い一言。



「誰と誰だよ」


グリードが聞く。



「俺、グリード、エイゼンは確定だ」


「カイゼルも入る」



「あと一人……」



その時。



「私も入るよ」



え?



全員が振り向く。


リシェルだった。



「いやいやいや」


思わず言う。



「なんで」



「混成形式って言ったでしょ」


「戦える回復役は必要だよ」



……そうか。



そうだけど。


そうなるのかよ。



「危険だ」


レオンが即座に言う。



「知ってる」


リシェルは引かない。


「でも、ここで外に置かれる方が嫌」



その目は、思ったよりずっと強かった。



ケッヒル隊長が口を開く。


「アストリアを入れろ」



全員が隊長を見る。



「隊長?」



「必要だ」


短く言い切る。


「この試験、負傷で済めばマシな方だ」



……ほんと嫌なことしか言わねえなこの人。



でも。


たぶん、正しい。



「決まりだな」


グリードが息を吐く。


「最悪の五人だ」



「誰が最悪っすか」



「お前ら全員だよ」


それでも少しだけ笑う。



笑えるうちは、まだ大丈夫だ。


たぶん。



中央では、東側の五人が静かに揃い始めていた。


シンの隣に、見たことのない女剣士。


その後ろには、双剣を持つ小柄な男。


さらに、大剣を背負った無言の巨漢。



……なんだよ、それ。


急に世界広がるじゃねえか。



「……マジで始まるんすね」


小さく呟く。



誰に向けたわけでもない。


でも、全員が聞いていた気がする。



レオンが剣を握る。



グリードが肩を回す。



リシェルが深く息を吸う。



カイゼルは何も言わない。


ただ、東の五人を見ている。



そして俺は。


棒――いや、もう棒じゃない。


握り慣れない実剣の重さを確かめながら、息を吐く。



「……めんどくせえ」


本音はそれだ。



でも。


「やるしかねえな」



その言葉も、もう癖みたいに出てくる。



たぶん。


ここから先は。


今までの“交流試験”じゃない。



ほんとの意味で、戦いの入口だ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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今後も更新していくので、よろしくお願いします!

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