差
お読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
「――軽く合わせる」
教官の声。
東の剣士たちと、選抜組。
対面。
正式な試合じゃない。
ただの“確認”
……のはずなんだけど。
「空気おかしくねえか」
グリードが小さく言う。
「おかしいっすね」
軽いはずなのに。
軽くない。
誰も笑ってない。
「順にやる」
名前が呼ばれていく。
まずは、他の選抜。
打ち合いが始まる。
カンッ――!
音が響く。
でも。
「……」
一方的だ。
東の剣士。
無駄がない。
動きが読めない。
見習い側が、完全に押されてる。
「おい……」
グリード。
「やばくねえか、これ」
「……はい」
思った以上だ。
そのとき。
「カイゼル・ラント」
来た。
「対――シン・ルォ」
黒い剣士。
あいつだ。
空気が変わる。
さっきまでと違う。
一段、静かになる。
「始め」
――動かない。
二人とも。
「……?」
なんだこれ。
にらみ合い?
いや。
違う。
「……速っ」
一瞬。
見えなかった。
カンッ!!
音だけが遅れて来る。
次の瞬間。
もう一度。
カンッ!!
速い。
速すぎる。
「見えたか?」
レオンの声。
「……無理っす」
正直に言う。
グリードも黙ってる。
ついていけてない。
でも。
「……」
止まらない。
二人とも。
間合いが崩れない。
攻めてるのか。
守ってるのか。
わからない。
ただ。
“噛み合ってる”
「……なんだよ、これ」
思わず漏れる。
その瞬間。
シンの剣が、わずかにブレた。
ほんの一瞬。
そこに――
スッ――
カイゼルの剣が入る。
止まる。
喉元。
「……」
静寂。
「そこまで」
教官の声。
終わり。
……え?
今ので?
「……」
シンが一歩下がる。
表情は変わらない。
でも。
ほんの少しだけ。
目が細くなる。
「……なるほど」
ぽつりと。
それだけ。
勝負は、終わってる。
「今の、見たか」
グリードが呟く。
「……いや」
見えてない。
でも。
わかる。
「次元違うでしょ、あれ」
「……ああ」
レオンも、静かに頷く。
そのとき。
「エイゼンシュタイン」
呼ばれる。
……来た。
「対――」
名前は知らない。
東の剣士。
さっき戦ってた連中の一人。
「……はぁ」
前に出る。
さっきのを見た後でこれかよ。
最悪だな。
「始め」
来る。
速い。
でも。
見える。
――ズラす。
スッ――
避ける。
振る。
ガンッ!!
当たる。
でも。
浅い。
「甘い」
弾かれる。
返される。
「っ……!」
受ける。
重い。
でも。
前よりは動ける。
ズレる。
崩す。
もう一度。
ガンッ!!
今度は流す。
「……」
相手の動きが、少しだけ変わる。
「ほう」
初めて。
反応された。
でも。
その瞬間。
一歩、踏み込まれる。
速い。
「っ!」
間に合わない。
――やば
カンッ!!
ギリギリで受ける。
でも。
体勢が崩れる。
ドンッ!!
地面。
「……そこまで」
教官の声。
「勝負あり」
負け。
……まあ、だろうな。
「……はぁ」
息を吐く。
悔しい。
でも。
それより。
「……見えたな」
ぽつりと出る。
さっきより。
確実に。
「どうだった」
グリード。
「……やれる気はします」
嘘じゃない。
でも。
「勝てるとは思わねえ」
正直。
「だろうな」
グリードが笑う。
そのとき。
視線。
シン。
また、こっちを見ている。
「……」
今度は。
逸らさない。
ほんの一瞬。
目が合う。
その中で。
一つだけ、はっきりする。
――まだ遠い
「……」
わかってる。
でも。
「……追いつく」
小さく呟く。
誰にも聞こえないくらいの声で。
その言葉だけが。
やけに、はっきりしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、
・ブックマーク
・評価(☆☆☆☆☆)
・感想
などいただけるととても励みになります!
今後も更新していくので、よろしくお願いします!




