選ばれる側
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「――選抜対象者を発表する」
空気が変わる。
ざわついていた訓練場が、一瞬で静まる。
前に立つのは、教官と――
ケッヒル隊長。
「呼ばれた者は前に出ろ」
来たよ。
グリードが小さく息を吐く。
「緊張するな」
「してないっすよ」
嘘だけど。
「では――」
名前が読み上げられていく。
「レオン・ヴァルハルト」
当然。
ざわめき。
レオンが一歩前に出る。
迷いなし。
「カイゼル・ラント」
……やっぱりいる。
静かに前へ。
あいつだけ、空気が違う。
「グリード・バルツァー」
「っしゃ」
グリードが軽く拳を握る。
前へ。
まあ、だろうな。
あとは――
誰だ?
聞き慣れない名前がいくつか続く。
……終わりか?
「以上――」
ああ、やっぱりな。
そんなもんだ。
「……ちっ」
グリードの声が少しだけ悔しそうに聞こえる。
「仕方ねえか」
自分に言い聞かせるように呟く。
そのとき。
「――エイゼンシュタイン」
……は?
一瞬。
何を言われたのかわからない。
「前に出ろ」
……俺?
「おい、呼ばれてるぞ」
グリードが肩を叩く。
「いやいやいや」
「間違いでしょ」
「いいから行け」
背中を押される。
「……マジかよ」
前に出る。
視線が集まる。
……なんだこれ。
めちゃくちゃ居心地悪い。
「以上だ」
そこで終わる。
本当に、俺で終わり。
「……なんで俺?」
思わず漏れる。
「知らねえよ」
グリード。
「でもよ」
にやっと笑う。
「いいじゃねえか」
「選ばれてんだから」
いやまあ、そうだけど。
「……納得いかねえ」
そのとき。
「当然の結果だ」
横。
レオン。
「は?」
「昨日の動き」
「見ていた」
……見てたのかよ。
「未完成だが」
「可能性はある」
相変わらず上からだな。
「……どうも」
適当に返す。
でも。
少しだけ。
引っかかる。
「では説明する」
教官の声。
全員が前に集められる。
「今回の選抜は、他国との合同訓練に向けたものだ」
来たよ。
やっぱそれか。
「対象は東方諸国」
ざわつく。
さっきの連中だ。
「形式は模擬戦」
「だが」
少しだけ間。
「実戦に準ずる」
……はいはい。
つまり。
ガチってことね。
「負傷の可能性もある」
「覚悟しておけ」
軽く言うなよ。
「三日後の開始だ」
早すぎだろ。
「それまでに各自、調整を行え」
「以上」
解散。
ざわざわと空気が戻る。
「三日か」
グリード。
「短いな」
「短すぎるでしょ」
「でも面白そうだな」
ほんと楽しそうだなお前。
「……俺はめんどくさいです」
本音。
「だろうな」
笑うな。
でも。
「……まあ」
完全に嫌かって言われると。
そうでもない。
「やるしかねえか」
自然に出る。
「その通りだ」
レオン。
「勝つ」
即答。
ブレないなこいつ。
そのとき。
少し離れた場所。
黒い装束。
昨日のやつ。
……いた。
こっちを見ている。
また。
視線が合う。
今度は、逸らさない。
「……」
向こうも逸らさない。
ほんの一瞬。
でも。
はっきりわかる。
――敵だ。
「おい」
グリードが声をかける。
「どうした」
「いや」
目を離す。
「なんでもないっす」
でも。
胸の奥が、少しだけざわつく。
三日後。
あいつらとやる。
……マジかよ。
「……めんどくせえな」
ぼそっと呟く。
それでも。
足は止まらない。
選ばれた。
なら――
やるしかない。
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