勝ったあとの面倒ごと
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レオンに勝った、その翌日。
……いや、翌日じゃなくてもよかっただろ、これ。
なんでこうもすぐ空気変わるんだよ。
「おい、あいつだろ」
「昨日、ヴァルハルトに勝ったっていう……」
「マジで?」
やめろやめろ。
聞こえてるから。
めちゃくちゃ聞こえてるから。
「……はぁ」
だるい。
こういうの、ほんと苦手だ。
昨日まで誰も見てなかったくせに、急にこれだもんな。
静かに棒振って飯食ってるだけでよかったのに。
「よぉ」
聞き覚えのある声。
振り向くと、グリードがいた。
今日もでかいな、こいつ。
「……なんすか」
「なんすか、じゃねえよ」
にやっと笑う。
昨日みたいな刺々しさは、もうほとんどない。
「やったな」
「何が」
「何が、じゃねえだろ。レオンに勝ったんだぞ」
あー、そこね。
「たまたまっすよ」
「お前、それ好きだな」
「便利なんで」
「便利で済ますなよ」
グリードは呆れたみたいに笑った。
なんだよ。
昨日まで敵みたいな感じだったのに、今日はやたら距離近いな。
……いや、別に嫌じゃないけど。
「でもまあ」
グリードが腕を組む。
「昨日のは見てた」
「二回も俺を転がしたやつが、今度はレオンを転がすんだからな。そりゃ認めるしかねえ」
「転がしたって」
「転がしただろ」
いや、まあ、尻もちつかせたけどさ。
「……お前、思ったよりいいやつっすね」
「思ったより、は余計だ」
すぐ返ってくる。
その感じ、ちょっとおかしくて、少しだけ笑いそうになる。
――その時。
「エイゼンシュタイン」
うわ、来た。
この声だけで胃が重くなるの、どうなんだろうな。
ケッヒル隊長だった。
相変わらず、でかい。
声も圧もでかい。
「ついてこい」
「またっすか?」
「まただ」
「俺、今日休みたいんすけど」
「知らん」
ですよねー。
「おい、どこ行くんだよ」
グリードが聞く。
隊長はちらっとだけそっちを見た。
「選抜組だ」
ざわっ、と周りの空気が揺れた。
……はい?
「は?」
思わず声が出た。
「お前は昨日の試験を通った。今日から選抜組に入る」
いや、待て待て待て。
「早くないっすか?」
「遅いくらいだ」
なんでだよ。
いや、昨日初めてまともに戦ったんだけど。
「ヴァルハルトも、バルツァーも来い」
「はっ」
「おう」
あ、グリードもか。
ちょっとだけ安心した。
いや、別に一人でもいいけど。
……いや、よくないな。全然よくない。
一人で知らん場所に放り込まれるの、普通に嫌だ。
「行くぞ」
歩き出す隊長の背中を追う。
レオンはいつも通り静かに、グリードは少し面白そうに。
で、俺は。
「……なんでこうなるかな」
ぼそっと呟く。
「ん?」
グリードが横から覗いてくる。
「いや、なんでも」
「お前、顔に出すぎなんだよ」
「だって面倒なんすもん」
「ははっ、言うなぁ」
笑うな。
こっちは割と本気で言ってるんだぞ。
けど。
選抜組、か。
レオンと同じ場所。
グリードもいる。
昨日より、少しだけ上に行く。
「……悪くない、のか?」
自分で言ってて気持ち悪いな、それ。
でもまあ。
ほんのちょっとだけ。
昨日の勝ちが、ただの偶然じゃなかった気もしていた。
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