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貧民出身の俺、王立剣術院で半年間ただ素振りしてただけなのに“完成された剣”だと見抜かれて最強への道が始まった〜姉妹を取り戻すために成り上がる〜  作者: シラセユウ


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勝ったあとの面倒ごと

お読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


レオンに勝った、その翌日。


……いや、翌日じゃなくてもよかっただろ、これ。


なんでこうもすぐ空気変わるんだよ。


「おい、あいつだろ」

「昨日、ヴァルハルトに勝ったっていう……」

「マジで?」


やめろやめろ。


聞こえてるから。


めちゃくちゃ聞こえてるから。


「……はぁ」


だるい。


こういうの、ほんと苦手だ。


昨日まで誰も見てなかったくせに、急にこれだもんな。


静かに棒振って飯食ってるだけでよかったのに。


「よぉ」


聞き覚えのある声。


振り向くと、グリードがいた。


今日もでかいな、こいつ。


「……なんすか」


「なんすか、じゃねえよ」


にやっと笑う。


昨日みたいな刺々しさは、もうほとんどない。


「やったな」


「何が」


「何が、じゃねえだろ。レオンに勝ったんだぞ」


あー、そこね。


「たまたまっすよ」


「お前、それ好きだな」


「便利なんで」


「便利で済ますなよ」


グリードは呆れたみたいに笑った。


なんだよ。


昨日まで敵みたいな感じだったのに、今日はやたら距離近いな。


……いや、別に嫌じゃないけど。


「でもまあ」


グリードが腕を組む。


「昨日のは見てた」


「二回も俺を転がしたやつが、今度はレオンを転がすんだからな。そりゃ認めるしかねえ」


「転がしたって」


「転がしただろ」


いや、まあ、尻もちつかせたけどさ。


「……お前、思ったよりいいやつっすね」


「思ったより、は余計だ」


すぐ返ってくる。


その感じ、ちょっとおかしくて、少しだけ笑いそうになる。


――その時。


「エイゼンシュタイン」


うわ、来た。


この声だけで胃が重くなるの、どうなんだろうな。


ケッヒル隊長だった。


相変わらず、でかい。


声も圧もでかい。


「ついてこい」


「またっすか?」


「まただ」


「俺、今日休みたいんすけど」


「知らん」


ですよねー。


「おい、どこ行くんだよ」


グリードが聞く。


隊長はちらっとだけそっちを見た。


「選抜組だ」


ざわっ、と周りの空気が揺れた。


……はい?


「は?」


思わず声が出た。


「お前は昨日の試験を通った。今日から選抜組に入る」


いや、待て待て待て。


「早くないっすか?」


「遅いくらいだ」


なんでだよ。


いや、昨日初めてまともに戦ったんだけど。


「ヴァルハルトも、バルツァーも来い」


「はっ」

「おう」


あ、グリードもか。


ちょっとだけ安心した。


いや、別に一人でもいいけど。

……いや、よくないな。全然よくない。


一人で知らん場所に放り込まれるの、普通に嫌だ。


「行くぞ」


歩き出す隊長の背中を追う。


レオンはいつも通り静かに、グリードは少し面白そうに。


で、俺は。


「……なんでこうなるかな」


ぼそっと呟く。


「ん?」


グリードが横から覗いてくる。


「いや、なんでも」


「お前、顔に出すぎなんだよ」


「だって面倒なんすもん」


「ははっ、言うなぁ」


笑うな。


こっちは割と本気で言ってるんだぞ。


けど。


選抜組、か。


レオンと同じ場所。

グリードもいる。


昨日より、少しだけ上に行く。


「……悪くない、のか?」


自分で言ってて気持ち悪いな、それ。


でもまあ。


ほんのちょっとだけ。


昨日の勝ちが、ただの偶然じゃなかった気もしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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