棒振りだけの剣士見習い
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俺が剣士見習いになってからもう半年。
やってることは、ひたすら――棒振りだ。
「え〜い、え〜い、え〜い」
棒振り、棒振り、棒振り……。
……いや、ちょっと待て。
これで戦士になれるん?
ここ、あの名高い首都ヴァルクレインの王立剣術院だぞ?
剣士の登竜門とか言われてる場所で、やってることがこれって。
ただ飯食いに来てるだけじゃねーか。
北部に生まれたものの宿命か。
泣けるぜ、ほんと……。
姉ちゃんも妹も売られちまって、あのクソみたいな暮らしから抜け出すためにここに来たってのに。
剣士になって、金を稼いで、買い戻す。
そのつもりだったのに。
「……はぁ」
気づけば、最初にあったはずのやる気なんてとっくに消えてる。
今じゃもう、
「棒振ってりゃメシ食える」
それだけだ。
まあ、楽っちゃ楽だけどなぁ。
「え〜い、え〜い……」
……あれ?
なんか、今日――
妙に振りやすくね?
手が勝手に動くっていうか、変な感じだ。
さっきの一振りも、なんかやけに綺麗だった気がする。
いや、気のせいか。
どうせ俺だしな。
「……あ」
やっべ。
鬼のケッヒル隊長、見回り来てんじゃん。
あーあ、今日はちょっとは“それっぽく”やっとかねーと。
「ええいっ! ええいっ! ええいっ!」
……うわ、汗出てきた。気持ち悪。
だりー。早くどっか行ってくれよ。
――って、あれ?
なんでだよ。
隊長、こっち見てね?
いやいやいや、ちゃんとやってるって。ほら、真面目に素振りしてるだろ俺。
……いや、なんか来るんだけど。
マジで?
やめてくれって。
「おい」
来た。
「お前、名は?」
「えっ、俺っすか?」
「お前に聞いているんだろうが! このバカちんが!!」
えー、なんでだよー……。
「あ、エ、エイゼン……シュ、シュトック・エイゼンシュタインです」
噛んだ。最悪だ。
「……ほう」
隊長の目が、細くなる。
なんだよその顔。怖えよ。
「エイゼンシュタインを名乗るか。どうりでな」
……は?
どうりで、ってなんだよ。
俺、ただの貧民出身なんだけど。
「お前」
ぐっと、肩を掴まれる。
思ってたより、ずっと強い力で。
「今の一振り――誰に教わった?」
「え?」
「とぼけるな」
低い声だった。
さっきまでの怒鳴り声とは違う、妙に静かな声。
「それは“型”だ。しかも――」
一瞬、言葉が途切れる。
「……あり得ん」
「いや、だから俺、普通に振ってただけで――」
「いい。ついてこい」
え、ちょ、待って。
なんで?
「お前はもう、この場で棒を振っていていい人間じゃない」
――は?
なにそれ。
意味わかんねえんだけど。
「来い」
ぐい、と引かれる。
周りの連中がざわついてるのがわかる。
え、なにこれ。
俺、なんかやらかした?
それとも――
やばいことになってる?
……嫌な予感しかしねえ。
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