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020 欄外スキル

 手足を動かすことをやめ、惰性で空中を流されていた私の身体が霧の海の終わり間近で静止する。


 霧の海から頭を出した状態のシャチと見つめ合う。


「私はあなたの仲間じゃないよ」


 メール本文が私にもわかる言葉が記されていたので、こちらの言語を理解しているのだろうと思って語り掛けたのだけれど、シャチからの反応は芳しくなかった。


 もしかしてメールのスキルが勝手にシャチの言葉を翻訳してた?


 ヌシとのやり取りの最中にスキル効果が上がっていたようだし、新たに機能が追加されたのかもしれない。


 だとしたらメールを通じてなら動物とも意思疎通が可能になったのかな。


 目の前のシャチが私を仲間だと思い込んだのは、おそらく私がヌシ宛に送った『睡眠』を添付したメールだよね。


 シャチのスキルが睡眠に関するものだし、それを感知していたとしても不思議じゃない。


 私は改めてメールでシャチにメッセージを送る。


『私はあなたの仲間じゃないよ』


 するとシャチはわかりやすい反応を見せた。


『同じ声、さっちと違うけど同じ声、話せる仲間』


 種族的にじゃなく、会話可能な仲間ってことなのかな。


 今回も『睡眠』が添付されてたところを見ると、目の前のシャチと会話するには最低でも『睡眠』を無効化するようなスキルを持ってないと話にならない。


 それなら私はシャチの仲間認定されても不思議じゃないのかも。


 だからといってシャチの遊び相手をするためにここにとどまってはいられない。


 霧の外にまで出て来る様子はないし、ひとことふたこと残してこのまま置いて行っても問題ないよね。


『急いでるからまた今度来るよ。だから今はここでお別れ』


『待って、待って、一緒に行くから置いて行かないで』


 シャチは縋るように私へと寄って来る。


『そこから出れるの? 出れないなら無理だよ』


『大丈夫、大丈夫』


 そう言ったシャチは何でもないことのようにあっさりと霧の海から出て、私の周囲をぐるりと巡るように泳いでみせた。


 ずっと霧に潜ったままだったので、出れないのだろうと思っていただけに困ってしまった。


 このままついて来られてもヘラシャードで絶対に問題になるのが目に見えてる。


『私について来てもいいことないよ。ごはんとかどうするの?』


『平気、平気、何でも食べれるもん』


 全長4mくらいあるし、かなり食べそうというか。


 人間も簡単に噛みちぎっちゃいそうだよ。


 街に近付いただけで魔獣として攻撃される未来しか見えない。


『それに私の仲間はあなたを敵だと思って攻撃するかもよ』


『なんで、なんで、悪いことしないよ』


『あなたの見た目が大きくて怖いからだよ』


『ひどい、ひどい。んー、それならちいさくなったらいいの?』


『なれるならね』


『そっか、そっか……』


 シャチは動きを止め、悩ましげな様子で空中を漂う。


 さすがに無理だと諦めたのだろうと判断した私は『じゃあね』とひとこと告げてヘラシャードに向けて再び泳ぎ出した。


 空を掻き分けながら一気に加速していき、最終的には自動車並みの速度にまで達した。


 びゅうびゅうと吹き抜ける風を突っ切り、来たときとは比べ物にならない速さで森の外縁部にまで至った。


 しばらく何もない平原を眺めながら進んでいたけれど、代わり映えのしない景色に飽きを覚えた私は、充分な速度を維持したまま仰向けになり、夜空を眺めながら空を泳いだ。


 星空と大きな月を眺めながらの空中遊泳は、しばし時を忘れさせてくれた。


 ぼんやりと空を流れながら頭の片隅に追いやっていたものを思い返す。


 鑑定に表示されていないスキルを持っているかのような魔獣に関してである。


 でも少し考えてみれば簡単なことだったかもしれない。


 元に私自身がメールの力を借りてとはいえ、複数のスキルを使用しているのである。


 彼らがふたつ目みっつ目スキルを持っていても不思議じゃない。


 鑑定結果にそれらのスキルが表示されなかったのは、ひとつ目のスキルまでしか鑑定出来ないからなんじゃないかな。


 そもそも『鑑定』ってスキルじゃなくてヘラシャードの入出記録を登録する認証装置の機能だからランクとかなさそうだし、決まった結果のみを表示するだけなんだろうしさ。


 道具じゃなく、スキルツリーと強固に繋がった高ランクスキルの『鑑定』があれば所持スキル全て鑑定結果として表示させることも出来るのかもね。


 なんてことを考えながらルートコンダクターのナビゲートから外れないよう手足を軽く動かして軌道を修正していると、遠くから特徴的な高音が私の耳に届けられる。


 まさかと思いながら身体を起こすように姿勢を変え、進行方向とは真逆へと目を向けた。


 すると夜空にぽっかりと穴を開けたような真っ黒い何かが、物凄い勢いで迫って来ていた。


 何をどうしたのかわからないけれど、全長4mはあったはずのシャチの身体は明らかに私よりもちいさくなっていた。


 ついさっきの鳴き声と一緒に届けられたらしきメッセージを今になって受信する。


『見て、見て、友達に頼んでちいさくしてもらったよ』


 そんなシャチからのメッセージに私は軽い頭痛を覚えた。


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