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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第6章 【最後の魔神】
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後日譚その5 夜の王都にて

本作のコミカライズはナナイロコミックスとPixivコミックにて6-2話まで公開中です!


よろしくお願いします!

 月が輝く夜更け、星明かりの海の中。

 俺はローアと共に空にいた。

 夜風が吹き付けるローアの背から、人々の暮らしの証である街の光を覗き見る。

 王都は夜分であるのに、随分と活気があると上空からでも見て取れた。


「王都には遊びに来たかったんだけどな。まさか事件解決に駆り出されるなんて……」


「仕方ないよー。魔物絡みの話だもん」


 呟くと、ローアが苦笑したような声を出す。

 そう、今回俺たちは王都の夜景を楽しむために飛んでいるわけではない。

 クズノハからの協力要請があったのだ。


「王都に人間に擬態した魔物が入り込んでいるって、クズノハもよく尻尾を掴めたな」


「九尾だけに?」


「そういう話じゃないぞ」


 言いつつローアとクスリと笑い合う。

 少し緊張している時、こうやって冗談を言い合えると何だか心が和む。

 けれど頭の中ではクズノハの話を思い返してゆく。


(クズノハ曰く、王都に入り込んだらしいのはシャドーグールって魔物。そいつは本気になれば小さな街を半壊させられるほどの力を持っていて、隠密にも長けている上、食った人間に擬態できると……)


 流石のクズノハも神獣の力なしで人間に擬態したシャドーグールの正確な位置を割り出すのは困難らしい。

 そこで今夜、クズノハが持つ闇に紛れて人目を避ける能力を使いつつ神獣の力も解放し、シャドーグールを発見するのだとか。

 ちゃんと住んでいる王都を魔物から守るあたり、クズノハの律儀な性格を感じる。

 ……普段は割と適当だったりするけど。


「で、シャドーグールを見つけたら地上から光を三回点滅させるんだったか。ローア、クズノハの姿は?」


「王都は広いし、闇に紛れてて見えないよー。でも気配はあるから、ちゃんと神獣化してるはずかなって」


 俺も目を凝らし、夜の闇を見据える。

 そのままいくら時間が経過したか、王都の外れから三度強い光が点滅した。


「あそこか、ローア!」


「飛ばすよー!!」


 ローアは一気に光の直上へと向かう。

 俺はそのまま武装から神獣の力を解放し、全身を魔力で強化する。

 すると視力も向上したためか、闇に紛れるクズノハと、襲いかかる魔物の姿がうっすらと見て取れた。

 漆黒の人型の影、あれがシャドーグールか。

 奴が腕を一振りした途端、とっさに伏せたクズノハの背後の廃屋が、バラバラに砕けたのが分かった。

 人間大の魔物にしては確かに桁違いの力だ、あんなのが王都のど真ん中で暴れたら何人犠牲者が出るか分かったもんじゃない。


「お兄ちゃん!」


「作戦第二段階だ!」


 クズノハがシャドーグールを引きつけ、合図をしたらローアがその直上まで来るのが第一段階。

 続く第二段階は、俺の仕事だ。


「ふっ!」


「気をつけてねー!」


 ローアの声を聞きつつ、俺はローアから飛び降りた。

 そのままフィアナの力が篭った長剣を抜剣し、爆炎を刃から吹かせて降下しながら位置調整する。

 シャドーグールは危機を感じると、素早く影へと逃げてしまうらしい。

 そこでクズノハがシャドーグールの注意を引いているうちに、俺が上空から降下して一気で仕留めるのが作戦第二段階だ。

 みるみるうちに地表が迫る。

 だがシャドーグールも馬鹿ではなかった。


「GRRRR!!!」


「あやつ、もう影へ潜る気か!?」


 クズノハが叫んだ時には、シャドーグールは建物の影へと潜ろうとしていた。

 完全に潜られてはクズノハでも追うのは困難だと聞いている。

 ならばと俺は、長剣をしまって背負っていた弓を構える。

 そのまま弓をつがえて、ヒュン! と放った。


「GRRR!?」


 どん! とシャドーグールの背に矢が突立ち、奴の動きが痛みで一瞬止まった。


「今こそ好機!」


「はぁっ!!」


 クズノハが青白い狐火を放ったのに合わせ、俺も着地して地を蹴って、シャドーグールの胴を長剣で切り裂く。

 次いで長剣から出た不死鳥の爆炎が奴を包み、地に伏せて燃やし尽くす。

 クズノハは倒したシャドーグールの灰を眺めて「手間をかけておいこんだ甲斐があったわ」と満足げに息を吐いた。


「お主よ。久方ぶりの戦闘と言えど、腕は鈍っていないようだな」


「一応鍛えているからな。ちゃんと力になれてよかったよ」


 クズノハと話していると、人間の姿になったローアも駆けてきた。


「お兄ちゃーん! クズノハ! 無事に終わった?」


「ああ。ローアのおかげだ」


 頭を撫でてやると、ローアは気持ちよさそうに目を細めた。


「あ。それとクズノハ。こんな夜中にちゃんと王都まできたんだから。約束通りに美味しいクレープおごってよね?」


「任せるがよい。明日はたらふく食べさせてやろう」


 わーい! と両手をあげるローアに、俺とクズノハは揃って微笑んだ。

 こうして王都の危機は、ひっそりと守られたのだった。




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