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【エッセイ】田舎で起こった忘れられない珍事件を思い出した順に  作者: 来須みかん


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【珍事件①】悪役令嬢みたいに冤罪をかけられそうになった話

 《20××年△月〇日》

 普段は行かない遠くのスーパーマーケットにて。


 店内に入ると、入り口でメロンの試食を配っていた。


 男性が試食をもらっていたので、私ももらおうとその後ろに並ぶ。私の後ろには赤ちゃんを抱っこしている女性が一人。


 私が試食をもらう番になったので、メロンが入った小さな紙コップを手に取ったとたん。


「きゃああああ!」


 辺りに女性の悲鳴が響いた。

 ビクッと体を震わせた私は、気がつくと試食を配っていた年配女性に人差し指をさされていた。試食係さんは「この人がっ、この人が!」と叫んでいる。


 私、大混乱。


「えっ、メロン取ったらダメでしたか?」


 そっとメロンを元の位置に戻したけど、試食係さんは、ただ怯えるように、「この人が!」を繰り返しながら床に座り込んでいる。


 そうしているうちに、店の奥から青年が走ってきた。エプロンを着けているので、お店の人っぽい。その青年は、怯える試食係さんを支えて立ち上がらせた。その二人は、親子くらいの年齢差があるように思う。


 でも、親子ではなさそうな雰囲気。


 青年に「どうしたんですか⁉」と尋ねられた試食係さんは、私を指さしながら、まだ「この人が」を繰り返している。それを見た若い店員は、キッと私を睨んだ。


「店の奥まで来てください」

「は?」

「話は店の奥で聞きます!」


 私が一体、何をしたってんだ!?


 驚きすぎてとっさに何も言えないでいると、背後から「その人、何もしていませんよ?」と聞こえてきた。


 それは、私の後ろに並んでいた赤ちゃん連れの女性だった。


「後ろからずっと見てたけど、メロンを取った瞬間に、試食の人が急に叫び出したんです。だから、その人は何もしていません」


 わぁああ、援軍がいたぁああ!と喜んだのも束の間。


 若い店員は、今度は赤ちゃん連れの女性を睨みつける。


「じゃあ、あなたも店の奥に来てください」


 その偉そうな態度にカチンときたのか、女性の声には怒りが含まれていた。


「だから、何もしていないっていってるでしょう!?」

「話は店の奥で聞きます! していないなら、来たらいいでしょうが!」

「じゃあ、行きますよ! その人、本当に何もしてませんから!」


 売り言葉に買い言葉。

 若い店員は、私たちを睨みつけてから、年配の試食係さんと一緒に店の奥へと向かう。そのあとに続こうとした赤ちゃん連れの女性の腕を、私はつかんだ。


「え?」


 驚く女性の腕を引いて、そのまま店の外に出る。そして、少し店から離れた場所で女性と向き合った。


「行かないほうがいいです」


 私の言葉に女性は困惑している。


「どうして? あなた、何もしていないでしょう?」

「してないけど、あの二人、だいぶおかしかったですよね?」


 若い店員さんは、正義感に酔っているような感じだったし、その店員さんに支えられている試食係の年配女性は、そんな青年にどこかうっとりしていた。


 そう、親子ほど離れた青年相手にっ!

 試食係さんは、恋愛的な意味合いでの熱がこもったような目を向けていたんですよっ!


 それに気がついてしまった私は思った。


『こういうの、なろうで読んだことあるぞ』と。


 ここからは、すべて私の妄想だけど、おそらく試食係さんは以前にこの若い店員さんに守ってもらったことがあったのではないかと?

 それがとても嬉しかった。だから、もう一度その気持ちを味わいたくて、同じような状況を無理やり作り出した。


 その姿は、まるで悪役令嬢に冤罪をかけるおバカ令嬢のごとく。


 そんなわけで、なろうでヤバイ男女の予習復習が完璧だった私は、こういう人種の危険さを知り尽くしていた。なので、私は赤ちゃん連れの女性にこんなことを説明した。


「あのまま着いて行ったら住所とか名前、電話番号を書かされるかもしれませんよ。家がバレたら何をされるかわかりません。だって、いきなり叫び出すような人と、相手の話を聞かずに睨みつけてくるような人たちですよ? 逆恨みで攻撃されるかも……」


 女性の顔が青ざめていく。


「危ない人達には、絶対にかかわらないほうがいいです!」

「わ、わかりました」


 というわけで、私達はスーパーで買い物をせずに解散した。


 別れる前に私は、赤ちゃん連れの女性にめちゃくちゃお礼を伝えておいた。


 いくら断罪劇の予習復習が完璧でも、冤罪をかけられたら実際はとっさに何も言えないし、助けてくれたら本当に涙が出そうなくらい嬉しかった。


 そりゃ、悪役令嬢も冤罪で婚約破棄された場で、助けてくれた隣国の王子と即結婚するわ。


 その後はこれ以上、被害者を増やさないようにスマホでお店のサイトを調べて【お問い合わせ】から今回の件を報告しようと思ったけど、住所やメール入力が必須。


 悩んだ末に偽名、偽住所、捨てメールアドレスなどを入力して、「こんなことがあった」と報告。「防犯カメラがあるなら、事実確認して同じことが起こらないように対処してほしい」旨を書いて送っておいた。


 お店から返事はこなかったけど。

 あの二人が、もう誰にも迷惑をかけていないことを祈る。


 そして、このことをきっかけに、私は思った。


「本当は本店や本社に苦情をいれたいけど、こちら側の住所・氏名・メールアドレスの入力が必須だから、被害者側は自分の情報を入力したくなくてXに晒すという選択をする人もいるだろうなぁ」と。



別の珍事件へとつづく


『【エッセイ】都会で見かけた忘れられない出来事3選』はこちらから↓

https://ncode.syosetu.com/n3988kj/

なぜか結構な頻度で駅員さんが可哀想な目に遭います。

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― 新着の感想 ―
読ませていただきました。大変な目に遭われたのですね、でも、逞しかったです! 私なら絶対ついていってしまったかも。
こ、怖すぎます(゜o゜; やだ、そんなスーパーもう行きたくない(涙) 災難でしたね、来須先生。 赤ちゃん連れの女性の善意が救い…!
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