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占いの館で彼女を奪われ、異世界で王族の婚約者にされたので、僕は必ず取り戻す  作者: 播磨 颯太


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15.アデンの決闘

アデン国 パール城 中庭 10:00


昨日クリスとヒーダの裁判が行われた広場が、今日は一騎打ち戦の会場となっていた。

朝の柔らかな日差しが、静かに敷き詰められた芝生を照らしている。だが、その光景とは裏腹に、会場にはすでに熱気が渦巻いていた。


前方には、豪奢な衣装をまとった貴族たちが椅子に腰掛け、冷たい視線を投げかけている。その後方には、試合の行方に興奮する平民たちがぎっしりと群がっていた。怒号にも似た声が飛び交い、既に賭けの金があちこちでやりとりされている。


中央には、王族席。

ガウバー王がどっしりと玉座に座り、その隣にはニヒルが優雅にワインを傾けている。そして、その少し離れた席に――のぞみ。


彼女はうつむき、視線を落としていた。


ゆうは、貴族席の奥にのぞみの姿を見つけると、心の中で強く誓った。


「のぞみさん、僕が――僕が必ず、救い出すから」


その瞬間、のぞみも顔を上げた。


「……ゆう君!?」


大きく目を見開く。


どうしてここにいるの? どうしてこんな危険な場所に?

のぞみの胸が締めつけられた。


「ダメよ! こんな決闘の場に来たら、殺されてしまう!」


だが、ゆうはのぞみの視線に答えることなく、静かに前を見据えた。


「第一試合!」


突如として、場の空気を切り裂くような野太い声が響いた。


進行役のシャッセ。

熊のような巨体を持ち、腹の底から絞り出すような声は、それだけで観客の心臓を震わせる。


「ベルマー VS ラスジ!!」


歓声が沸き起こる。


闘士たちが姿を現す


まず現れたのはベルマー。

細身でしなやかな体つき、筋肉は研ぎ澄まされており、何よりも目を引くのは彼の両腕に装着された鋭い鉤爪。

軽やかな足取りで、風のように歩く。

目元には仮面がつけられ、その隙間から覗く瞳には鋭い獣のような光が宿っていた。


次に、地鳴りのような足音と共に現れたのはラスジ。

全身が岩のように分厚い筋肉で覆われ、胸板の厚さはまるで鋼鉄。

顔には数えきれぬ傷跡が刻まれ、片手には、恐ろしいほどの質量を誇る大きなハンマー。

彼が一歩踏み出すだけで、地面が沈むように揺れる。


観客たちはすぐに判断した。


「こりゃベルマーの負けだな!」

「ラスジの一撃を受けたら、一発で終わるぞ!」


賭けの金が飛び交う。

ラスジは大男の喉を鳴らしながら、余裕の笑みを浮かべていた。


「試合開始!!」


シャッセが拳を振り下ろす。


ラスジが一瞬で間合いを詰める。

鈍い轟音とともに、巨大なハンマーが振り下ろされた。


ドガァァン!!


芝生が爆ぜる。土が飛び散る。

ベルマーはすれすれでかわし、一瞬の隙に横へと跳ぶ。


ラスジはすぐに追撃。

「喰らえッ!!」


怒声とともに、二度、三度とハンマーが叩きつけられる。

その度に地面が抉られ、クレーターのような穴が次々と生まれた。


観客たちは総立ちになり、興奮の叫びを上げる。


「うおお! やべええ!!」

「ベルマー、どこまで逃げられる!?」


ベルマーは冷静だった。

地を滑るように動き、寸前で回避。決して無駄な動きはしない。


だが――


ラスジが一瞬動きを止めると、ハンマーを横殴りに振り抜いた。


「喰らええぇぇ!!!」


強烈な一撃が、バットのようにベルマーを捉えかけた。

鉤爪を交差させてガードするが、その衝撃で体が吹き飛ばされ、背中から転がる。


「おおおおお!!!」


観客が沸く。


だが――ラスジが息を荒げたのを、ベルマーは見逃さなかった。


反撃の刻


ベルマーは起き上がると、急に笑った。


ラスジの額に、じっと汗が滲んでいる。


「お前、もう息が上がってるな?」


ベルマーの声に、観客がどよめく。


ラスジがハンマーを振るう。だが、ベルマーは容易くかわす。


そして――鋭い鉤爪の一撃が、ラスジの脇腹を貫いた。


「ぐあっ……!」


続く二撃目が太腿を裂く。三撃目が肩口を抉る。


ラスジは堪えきれず、膝をついた。


「うおおおおお!!」


観客の歓声が爆発する。


決着


ベルマーは、大きく息を吸い――


「ッシャアアアァ!!!」


奇声とともに、跳躍。


鉤爪がラスジの胸を深く切り裂いた。


巨体が揺らぐ。


ドサァァァァァン!!!


ラスジが倒れた。

その衝撃で、地面が揺れる。


会場は一瞬、静まり返る。


次の瞬間――


「うおおおおおおおおお!!!」


大歓声が巻き起こった。


シャッセが拳を突き上げる。


「勝者!! ベルマー!!!」


観客の熱気が爆発する。


倒れたラスジは、ピクリとも動かない。

数人がかりで、大きな手押し車に乗せられ、場外へと運ばれていく。


王族席。


ニヒルが、ニヤリと嗤った。


のぞみは、耐えられず目を伏せた。


ゆうは――

握った拳の震えを抑えられなかった。


「これが……アデンの決闘……?」


その迫力に、全身が凍りつくような感覚を覚えていた。

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