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-23-「貴様もたいがい輩だろうが。」

神戸

「お金、お金、お金ーえ。お金ーをー貯めーるとー。


輩、輩、輩ーあ。輩ーがーよくー来るー。」



金のためならなんでもする男、神戸。金の亡者とは此奴のためにある言葉である。



神戸

「おぉー、アンプさぁん。さ、僕の拝観料1000円お納めくださーい?」



挨拶の次には金をせびるような銭ゲバである。とはいえ、一応此奴にも救いはある。二つだけ。


殺人強盗はしないと宣言してること。あと、累進課税的なモットーを持っていることだ。要は、金の無い人からはわずかしか徴収せず、金持ちや大企業相手にはとことん吸い取るというスタンスらしい。


まぁどっちにしろ金取ってるんだが。



アンプ

「吸血鬼のような男だな。」



神戸

「あ、血で払いますう?」



アンプ

「鷲巣か!てか貴様に拝観なんて言葉がもったいないわ!


いい加減にしたまえよ。そんなに金が欲しいならGAFAとか相手にすればいいではないか。」



神戸

「そうですねぇ。国家とか財団とか大企業とか、あるいは『裏』の組織とか相手のが効率いいですよねぇー。


やっだなーアンプさん。そんなの、とっくに……ね?」



なんか寒気がする。


冗談、言ってるんだよな?こんな河川敷をふらつく一人の優男に、世界を相手取る力……無いよな?



私は余計なイメージを振り払い、斜面に座る。すると、1mほど横に離れたところへ神戸も座った。



神戸

「あ。あー、あっあ。あの雲ぉ、1セント硬貨に見える。」



真上をその糸目で眺めている。此奴が見た空の色は金色なのかもしれない。



神戸

「アンプさんはぁ、お金好きくないんですかー?」



アンプ

「別に。生きていく分だけあればいい。」



神戸

「ほんとぉ?」



アンプ

「本当だ。


あ、いや嘘だ。」



神戸

「あは、素直ですね!やっぱり大金持ちになりたい?」



アンプ

「そういう意味ではない。


生きていく分だけはさすがに蓄えもできなそうだ。そうだな……。」



私が欲する給与の量、か。例えば……。


平日は、ランチとささやかな晩餐でいい。食事と風呂を済ませたら、少々ラジオを聴き流した後に眠りにつければいい。


週末には一人で呑みに行く。春と秋には我が愛車に跨って、近くの道の駅にでもミニツーリングができればいい。


長期休暇では、少し気合を入れて1泊2日、あるいは2泊3日の旅に出る。その先々で、ご当地の飯でも食べたいものだ。土産は要らない。旅は家にまで引きずらない性分だ。


そして、全日に渡って……この河川敷へ行くだけのわずかな資金があればいい。それ以上はすべて老後の資金に回せればいいのだ。



アンプ

「のだ。」



神戸

「なんかセピアな人生ですねぇ。」



アンプ

「貴様、よく失礼なヤツと罵られないか。気持ちは分かる。」



神戸

「あはは、思ったことを言っただけですよう。


もうちょっと色味をつけてみたらどうですかー?はいっ。」



唐突に懐へ手を入れてまさぐる。


そこからポンと出てきたのは……へっ。


さ……札束。



アンプ

「ど……どういうつもりだ、そんな大金。私を品定めしてるのか?」



神戸

「そんなぁ、怯えないでくださいよ。なんの意図もないですからねぇ?


僕にとってはそんな大金でもないしー。」



アンプ

「この札束が大金じゃないって貴様、石油王か……!?」



神戸

「いにゃあ、いいから受け取ってくださいよう?」



ご、ごくり。


こんな大金をちらつかされたら、思いもしないことを考えてしまうじゃないか。欲しいとも思ってなかったのに、一軒家とか考えちゃうだろう。



……だが。


私は至って冷静に札束を突き返した。



アンプ

「ふん。要らないわ。」



神戸

「どーして?」



アンプ

「人生を彩るのは金じゃなく、知恵と工夫であると信じていたい。


制限があるからこそ、創意工夫を凝らし、自らの内に人生をより良くする精神的向上心が作り出されると考える。大金がもたらすのは外的な生活向上でしかなく、生活水準の上昇が私を真に幸福たらしめるものかは甚だ疑問だな。」



神戸

「お金持ちになっても幸せにはなれないって、お金無い人はみんなそう言うんですー。」



アンプ

「るっさい!じゃあ貴様は金持ちで幸せなのか!?実は空虚なんじゃないのか!?」



神戸

「あはは。考えたこともないですよう。


幸福なんて、不幸な人が使う言葉でしょ。本当に幸せな人は幸せについて考えないですって。お腹いっぱいな時にご飯のこと考えないじゃないですかぁ。」



ぐ……そ、そうとも、捉えられるか。


人は自らに足りないものばかり考える。人間とは欲しがりな生き物なのだろう。


だからこそ、とある哲学者は『満足な豚より不満足なソクラテスたれ』と語り、人の渇望する力に期待していたわけだ。満足な神戸にとっては、幸せを渇望することなんてナンセンスなのだろう。それはそれで人間味がないが。



……む?


では、逆にだ。



アンプ

「貴様はなぜ金を集める?金持ちになって幸せになることが夢なわけではないのならば……。」



神戸は軽く笑って、斜面に寝転んだ。


すぅと、深呼吸をする。



神戸

「拝聴料1億円ですよ。」



……あんまりそこには触れられたくないようだった。


絶対ろくでもないこと考えている。国家転覆とかじゃないのか、此奴……。

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