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仕事は忘れた頃にやってくる⑨

それから、美和子さんの夫は、カリーナのボデイーガードに引き渡された、どこかへドナドナされて行った。どこへ連れていかれたのかは知らない。聞かない。きっとこの世には知らない方がいいこともある。


その後、小一時間程、おなじみテマソンの小言を右から左に聞き流し、リ―シャのおじいさんはあれから、何度も娘と孫に頭をさげて謝っていたようだった。


そのすぐ後で、美和子さんのお母さんという人が駆けつけてきた。

どうやら、美和子さんのお母さんは仕事関係で半年前からアメリカにでかけていて今回のアトラスでのことは知らなかったようだ。ここまで大げさになったのは美和子さんの夫が強引に圧力をかけようとしたからなのだが、そもそもアトラスに孫に会いに行っていた時に、孫が夢中になっていたのを知った美和子さんのお父さんが、AOKA SKYの詩と書道のコラボ作品を作りたいという呟きが発端だったようで、それを聞いていた美和子さんの夫がこのコラボが成功したら商売になると見込んで強引にディオレス・ルイ社に強引に依頼したり圧力をかけたようだった。

話を聞くにつれ、美和子さんのお父さんも知らなかったなどと言っているがかなり胡散臭い感じがただよってくる。この男二人の暴走を今日帰国してきて知った夫人があわてて東京から大阪まで飛行機でやってきたようだった。どうやらカリーナとは面識があるようで、夫人もAOKA SKYの大ファンだったようでことの顚末を聞いた夫人はなんと夫である美和子さんのお父さんの頬をはり倒していた。


この家庭は奥さんの方が強いのかと何も言わずに見守って、同じく何度もカリーナやテマソンに頭をさげ、何やら難しい話合いをしていたようだったが、それが終わると、ゆっくり大阪を楽しんできなさいと、財布から束の冊を娘にポン渡すと、先に嫌がる夫の首根っこを掴んでドナドナして行った。

なにやら、リ―シャの本がみたい~とか叫んでいたが、リ―シャがそれからおじいさんに見せてあげたかはわからない。ちなみに、おばあさんにはみてみてと真っ先にみせてはいたが、お座りさせられていた彼には見せてあげていなかったようだ。どうやら、日本に留まってもリーシャ君の未来は大丈夫なようだ。


「うううう~ん、さ~て、ふう~なんかどっと疲れたわね。でも、栞、やっぱりやり残した事あるわよね」

大きく伸びをしてから栞に向かって言った。

「何ママ? なんか忘れてたっけ?」


「何言ってるのよ、ガチャ結局全部みてないじゃん、あそこ4階フロアガチャあるんでしょ。昨日は1階しかみてないじゃん。家の近くのガチャあんなに種類ないし、まだ夕方だからたっぷり楽しめるよ。小説のチェックややり直しは明日頑張ればいいんじゃない。まだ、少し背中から仕事する気分じゃないしね」


そう言って、もう一度新しくできた詩集をみていたテマソンの方をチラッとみて言った。

「いいわよ、いってらっしゃい。色々な手続きなんかはやっておくわ。美和子さんでしたかしら、後で寄ってくださる」


「はい」

「ママ、ぼくもガチャいきたい」

「そうね、昨日はできなかったものね。カードじゃない現金もあるし」

「やったあー」


「美和子さん、リ―シャ君、じゃあ一緒に行こうか」

「うん、でもこれへやにおいてきていい?」

「ええいいわ。1階のロビーでおちあいましょ」

「わかった」

そういうとリーシャは大切そうに紙袋を抱えて駆け足で部屋を出て行った。その後ろを美和子さんとボデイーガードが慌ててついて行った。

それを見送った後、碧華と栞の二人がコートをきて鞄を持って出かける準備をしていると、どうやら、エンリーやライフ、それに優までもが一緒に行くようだ。その様子をみていたシャリーもどこにいくのか理解していないようだったが、ついていくと言い出し、カリーなまでもが行くといいだした。


「ちょっと、カリーナ、ガチャガチャなんか興味あるの?」

「なんですの? そのガチャとは。わたくし、存知あげませんの」

「えっ?ガチャ知らないの? あっでも確かアトラスにはないよね。なんていうのかな、硬貨を入れて、レバーをまわすと、カプセルに入った玩具や雑貨や小さなフィギュア何んかがでてくる小型自動販売機みたいなのがたくさん置いてあるのよ」


碧華が簡単に説明すると、カリーナがしばらく考えて答えた。

「ああ、もしかして、碧ちゃんの家の玄関やリビングにたくさん飾ってあったものですか?」


「うーん大体そうかな。まあいろいろあるけどね。でもカリーナ現金持ってるの? 支払いとかいつもカードでしょ。あそこほとんど硬貨だと思うよ。お札は両替機があると思うけど」


碧華の簡単な説明に興味がわいたのか、カリーナはすぐに電話をかけると、秘書らしきお付きの一人が札束を持って戻ってきた。これで足りるかしら?」


「えー! あなたも束! 多すぎだよ、そんなに使わないよ、逆にそんなに両替できないんじゃないかな。まあ、いいか。みるだけかもしれないしね」


碧華はやれやれと言った様子でみんなを連れて、いざガチャへ、そうそうなんと、編集部のみんなも結局印刷とかしばらく休憩ということで、ガチャに参戦、団体様でガチャを楽しんだ。みんなめいめいに好きなガチャを回しに回し、みんながホテルに戻ってきたのは夜の8時を過ぎていた。子どものリ―シャに負けず劣らずアトラス人の大人たちは珍しくしかもクオリティーの高い玩具や雑貨のガチャにメロメロになり、ものすごい数のガチャをまわしたのはいうまでもない。中でも一番をあらそったのは、ボンズ編集長とカリーナだった。一緒について周ったボデーガードの両手には大量のガチャの入った袋を抱えていた。


「カリーナまわし過ぎ~」

碧華が笑いながらつっこむと、カリーナが真面目な顔で言い返した。

「あらだって、どれも小さくてかわいいんですもの。日本はすごいですわね。早速アトラスでも販売できなか検討いたしますわ」


「あっそれいいね。きっと大ブームになるよ」

すかさずライフがいうとシャリーも頷いていた。


「そうね、本当に楽しいわね。みてみて碧ちゃん、小さいカメラのキーホルダーがあったのよ」

嬉しそうに見せるシャリーの両腕にも大量のガチャの袋がぶら下がっていた。


その後、いろいろバタバタしたがなんとか修正や追加の編集が終わりボンズ編集長のオッケイがでたところで、小説の方の出版のめどがたったようで、日本での編集作業はどうにか31日で終わることができた。結局、日本に来日していたスタッフたちは年が明けて4日まで休暇をゲットし、お正月真っ最中の日本を満喫したようだった。若い子達は急きょ、ホテルから行ける範囲の大阪市内のデパートやその他専門店の福袋をネットで調べ、1日と2日はチョーお得な福袋をゲットすべく栞や優たちと一緒に福袋争奪戦に乗り出して行ったようだ。


テマソンは停滞していた仕事があるからと嫌がるライフだけを連れて1日には早々にアトラスに戻っていった。


碧華はカリーナとシャリーを誘い京都へでかけ、蘭の案内で京都観光に出かけて行った。

3日の日にはカリーナやシャリーも含め、娘達とエンリー6人で碧華の実家に年始の挨拶に豪華なカリーナが手配したリムジンでむかい、手土産にと京都で大量にカリーナが購入したお高い手土産を景品に碧華の兄弟家族全員でトランプ大会を開催し、大いに盛り上がった。


その後、お正月も終わり、一月の2度目の日曜日の優の二十歳の集いの日には、帰国を伸ばしていたカリーナやシャリーによる優の振袖姿の写真撮影大会をした後、ようやく、カリーナやシャリーもアトラスでしなきゃいけないことがあるとかでいったん帰国して行った。


バタバタとした年末年始だったが、3月には栞とエンリーの大学の卒業式があった為、再びシャリーはまた日本に戻ってきた。


なんと、忙しいはずのテマソンが、先に行われたエンリーの大学の卒業式の前夜に来日し、エンリーと栞の二人にファミリー全員からのたくさんの卒業のお祝いを渡しにわざわざ来日してきた。


さらに、エンリーの大学の2日後にある栞の大学の卒業式の日には、開催される会場の前にはエンリーと碧華とシャリーと共にテマソンも帰国の前に立ち寄って、アトラスとは違った袴姿の日本の女子大生たちの大学の卒業式の様子を感動しきりにキョロキョロ眺めていた。栞は会場近くの別の会館で袴の着付けをして、会場入りするのを四人でしばらく待っていた。会場の前の広場には子どもと共に写真を撮る親御さんの姿が多くみられていた。


「栞ちゃん大学卒業おめでとう」

袴の着付けが終わって会場前にきた栞の姿を見つけると、テマソンが会場近くの花屋さんで購入したバラの花束を栞に手渡した。

シャリーも同様に花を栞に手渡していた。


「シャリーママ、テマソン先生ありがとう」


「栞ちゃん、素敵よその姿、実はねリリーやヴィクトリアおば様からも写真撮ってきてって頼まれてるのよ」


そう言ってカメラを構えると栞を撮影しだすシャリーに笑顔を浮かべてエンリーとの腕を組んで写真に写っていた。ひとしきり撮影を終えた後、テマソンが栞に小さな紙袋を手渡していた。


「これは?」


中身をのぞき込みながら尋ねる栞にテマソンが言った。


「それは我がレヴァント家の家紋入りのピンバッチよ、結婚はまだ先だけど、4月から我が家のファミリーの一員になる栞ちゃんにママンからのプレゼントよ。二人とも来たかったんだけど、無理だったから私が代理、ママンから、栞ちゃんの大学の卒業式の日に渡すように頼まれていたの。我がレヴァント家の伝統なの、学生を終える日に家紋入りのピンバッチを送るのがね。エンリーは、アトラスの大学院に今後入学予定だからピンバッチはまだ先よ」


テマソンの言葉に栞の瞳が潤んだ。


「栞いいなあ~私も後数年したらレヴァント家の人間になる予定なのに、そんなの貰う予定ないのに~」

碧華がうらやましそうにいうと、すかさずテマソンが言った。


「あらあなたはしょうがないでしょ、もういいおばさんなんだもの、そのピンバッチはね子どもから大人になる証しみたいなものなのよ、学生から社会人になるファミリーへのはなむけみたいなものなのよ。安心しなさい、あなたがレヴァント家の戸籍に入る時に別の何かが送られると思うわよ」


「へえ~楽しみ。そうだ栞、ママからは花束はないけど、でっかいホールのケーキ用意してるから楽しみにね。帰りは遅くなると思うけど、終わったら連絡ちょうだい。大学の近くまで迎えに行ってあげるから」


「ありがとうママ」

碧華も栞を抱きしめた。


「そうそう、リリーがね、四月きっちりにアトラスにこなくても、ゆっくり日本観光とかして、5月ぐらいでもいいっていっていたわよ」


「ありがとうございます。でももう友達と卒業旅行には行ったし、高校の同窓会もあったし、今日が終わったら、エンリーと車で旅行に行って予定通り4月からアトラスにはいくつもりです。ヴィクトリアおばあ様とリリーおば様にはよろしくお願いしますと伝えてください」


「了解、待ってるわね」

テマソンもそっと栞を抱きしめた。

その後、碧華はテマソンとシャリーを連れて先にその場を離れ、会場の保護者席へと向かった。あまり多くの保護者はきていないようだったが、そこそこ席は埋まっていた。


碧華が二人と会場の中へ入る時、ちらりと後ろを振り返ると、エンリーが栞に可愛い小さな袋を渡しているのが見えた。あとから栞に聞くと、栞の好きな青いきれいな二輪の花びらのそれぞれの花びらの真ん中には栞の誕生石とエンリーの誕生石の二つの宝石がうめこまれたネックレスを貰ったようだった。栞もまた、2日前に同じようにエンリーには万年筆をプレゼントしたようだ。


そうして二人の卒業式の後、エンリーと栞は引っ越し準備も済ませ、それぞれに日本での日々を思う存分楽しみ、予定通り二人で車で国内のあちこちにドライブ旅行にも出かけて行ったようだ。そうして4月二人はアトラスへと旅立って行った。


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