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GOD HAND  作者: ホムポム
第6章  弔いへの復讐者達
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第81話 月の悪魔


「うっ……バカー。バカー!名前……なんで名前を

呼ばないの?せっかく神様が付けてくれたのに。

ワタシの大事な……ワタシだけの名前なのに!」


長い銀髪を揺らしながら悪魔の少女クレッセントは

溢れ出る涙を片手で拭いながら平坦な道を歩き続ける。


もう片手には自分の背丈ほどある杖。

両端にはそれぞれ太陽と三日月を模したアクセサリー。

それぞれが杖に当たるたびにカチャカチャと

小気味好い音を奏でいる。



「……お日様は……まだ怒ってる?

なんで?理由を教えて?ワタシ悪い事したの?

ワタシちゃんと謝るから。ねェ……答えて。」

クレッセントは太陽を直視しないよう目を細めて

視界に僅かに捉えて語りかける。


「ハァ……。答えてくれる訳ないよね。」

溜め息をつきつつ日の光を一切浴びることなく

クレッセントは道を歩く。


「でも夜になったらワタシだけを見てくれるよね?

またワタシだけを愛してくれるよね?」


やはり応えなどありはしない。

日の光が彼女を拒んでいるかのように。


「もう1000年だよ。アナタに会いに来ただけなのに。

なんでワタシはこんな事に。」



「嬢ちゃん。パパとママは何処だい?

最近は物騒だから一人は危ないよ?」


後ろから馬車が駆け寄りクレッセントの道を塞ぐように止まり。

優しく声をかけられる。


「ワタシは 一人 一人で 平気」


「嬢ちゃん言葉ちゃんと喋れないのか?」

「……近くまで送ってやるから乗りなよ。」


「まぁ いいかな」


男達に促されて馬車に押し込まれたクレッセント。

外から鍵をかけられ。

中には女性が何人も詰め込まれていた。


「ヨシヨシヨシ!!5人目だ!

チビが二人だからそこまで高値にはならかもしれねぇが

暫くは食うに困らねぇ!」


「兄貴。さっきの銀髪はまだしも、もう一人は

6つって言ってましたよ。そんな娘誰が買うんですかい?

昔は小さい娘は放っておいたのに。」


「知らねぇよ。ユウゴ児院のせいで商売上がったりだからな。少しでも稼いどかねぇと。

危ねえ橋だが悪魔教の奴等なら相応の額で取り引きする!」


小声過ぎて人間には聞き取れない音量。

悪魔にはしっかりと届いていた。


クレッセントは馬車に揺られながら事情を察する。

ああ。これから人身売買に出されるのか。

悪魔教の奴に本物の悪魔を売りに出すのは滑稽な気もする。

悪魔に値が付けられるのなら、幾らになるのだろうか?


逃げようと思えば逃げれる。

存在を液状化してしまえばいい。

存在を気化させればいい。


殺そうと思えばいつでも殺せる。

太陽に向かって指を回すだけ。

大好きな太陽はいつもワタシの力に……

「……なってくれる?」


思い出してしまう。

1ヶ月前に亜人に向けた力。太陽は力を貸してくれなかった。

それどころかワタシを怒りワタシを焼こうとした。


あんなに大好きな太陽に嫌われた。

ワタシを好いてくれてたと思ってた太陽に嫌われた。



「怖い。」


クレッセントは杖を握りしめる。

両端の月と太陽を引っ張りお互いをくっつけようと

試みるが、紐が邪魔して一定以上近づけない。


近付いては離れる。離れては近づける。



「なにが怖いの?」

狭い馬車の中で不意に手を握られた。

その手は小さくクレッセントの不安を包み込むように優しく


隣を見ると小さな子供。クレッセントよりもさらに小さい女の子。くすんだ金髪が日の光に照らされ黄金に輝いて見える。


こんな小さい子供にまで心配される自分が情けなくなる。


「嫌われたから ちょっと拗ねてる だけ」



「そっか〜。…………でももう怒ってないよ!」


その無遠慮な言葉が感に触る。

なにも知らない子供に悪魔(ワタシ)のなにがわかるのか。


幼女の手を振り払いソッポを向き。


…………チラリと隣に目をやると

涙目になりながらクレッセントを見つめる幼女。


「ごごめんね。ごめんね。アンはそんなつもりじゃなかったの。でも仲直りだけでも今からしよ?」


幼女は馬車から漏れる日の光を指さし。

釣られてクレッセントも太陽を薄っすら目を向ける。


先程よりも輝きをました太陽。

クレッセントが手のひらを向けると

「……うん。…………うん。ゴメンね。」


目元をゴシゴシと拭い去り。

「本当に 仲直り できた」小さな笑みを零す。


「そっか!良かったね。

…………おじさん達ー!アンはここで降りるから止まってー!」


しかし馬車は止まらない。幼女の声は届いている筈だ。


「あれ〜?止まってくれない。ドンドン遠くなってく〜。」


クレッセントは

不安そうな幼女の顔を無視し床に向けて呟く

「 無様 お前はこれから 売られる」


「売られる?アンは道の途中まで乗っけてくれるって言うから乗ったんだよ?う〜〜ん。どうしようかな〜?」


幼女はコトリとクレッセントに寄りかかり

「 邪魔 どい―― 寝てる。」


まぁいいか。どうせヴァイス王国に行っても

クズ悪魔とデカブツがいる。アイツ等が何をするつもりか知らないけど、また銀チビとかバカにされたら耐えられない。


暫くはフラフラ自由気ままに太陽に愛してもらいながら。目的なき目的を達成しよう。




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