第62話 獄中面会
バシッ バシッ
薄暗い日の光が差し込む牢獄から
耳障りな音が聴こえてくる。
ガンッ 一際大きな鈍い音
硬い棒で何かを殴ったような感触。
「…………。…………。」
「やっぱり男はつまんね〜な〜。ヒヒヒヒ。
国王様の側近ともなると声1つ。あげねぇ
エライエライ。ヒヒヒヒ。」
両手両足をそれぞれ壁に埋め込まれた錠に
繋がれた衛兵。いやもはや衛兵ではない。
ただの反逆者。
醜悪な顔付き体臭を纏った男が隣の女性の前に立ち
パァン パァン
更に一際大きな音を立てながら棒で打たれている
獣耳が特徴の女性。
「ガァァ!!イギイィィ」
歯を食いしばりながらも必死に痛みに耐えようとしている。
「ヒヒヒィ!やっぱり女子はイイ!
亜人でも叫び声はおんなじだぁ。イヒヒヒヒ」
ヨダレを獣耳の亜人に滴らせゲヒタ笑いを
上げながらリアの身体を打ちのめす。
衣服を剥ぎ取られた亜人の身体を見つめる醜悪な男。
「亜人じゃなかったらなぁ……そうだ!!イヒヒ」
奥へ引っ込み巨大な鋏を取り出す男。
「その汚い耳がなければ我慢出来る。
人間の女みたいにしてやれるぞ!ヒヒヒヒ!」
男は亜人の特徴である。リアの獣耳を切り落とすと。
笑顔でリアに近付き安心させるように
「嫌そうな顔をするなよ。少しずつ切り刻んでやるから。
そのうち気持ち良くなるからよ〜。イヒ!」
ハサミが獣耳に僅かに触れる。
ほんの少し両手を閉じるだけでリアのは切り落とされる。
「ほら〜我慢しろ〜我慢。ヒヒ 「出来ないわね。」
最後の下卑た笑いを言い終える前に
醜悪な男の脳漿が地面にぶち撒けられる。
薄暗い室内。悍ましい部屋には似つかわしくない少女。
ジェシカ.ドーソンが壁に埋め込まれたを錠に指を向けると
音も無く粉々に砕け散る
力無く倒れるリアを抱きかかえ
「クッ……重ッ!」
汚い血潮を避けた場所まで引きずり、寝かせる。
「ごめんなさい。アナタにも考えがあったのよね?
でもアレ以上は見てられなかったわ。」
「ァ……ジェシ…カ…さん…あり……が……」
腕があらぬ方向に曲がったリア。
指をリアに向けるが光は届かない。
「……なんで信仰ってのがないのよ。
今からでも毎日祈ってなさいよ。」
意識があるかもさだかではないリアに愚痴をこぼし、
その頭を優しく撫でる事しか出来ない少女。
「フー。ケモ耳の服もないし。
……あの死体の服は流石にイヤよね?」
「…………」
返事はないが僅かに首を動かしたリア。
少女の膝の上で意識をまどろみの中に落とし。
「……良いわよ。アナタはそのままでいい。
優しいままでいなさい。」
数年ぶりに殺人を犯した少女に
優しい眼差しを向けられながら
ーーーーー
絢爛な部屋の中でも特にきらびやかな一室。
長女エリザベス.ヴァイスの部屋で
その主は恐る恐る。1つずつ慎重に確認していた。
亜人の持ち物。1つはサイドストラップのついた本。
付き人の兵士達は落書きにしか見えなかったが
エリザベスは違った。
食い入る様にページを捲り感嘆の声を漏らす。
「魔導書……それも解読が美しいわ。
あの汚い亜人が成したとは到底思えないわ。」
最初の3分の1程はエリザベスも意味がわからなかった。
次の3分の1はエリザベスでも所々理解出来た。
残りは空白。《お酒》にバッテンをつけられた下に
調整中と書かれた魔法陣を最後に
白紙が続く。
次に取り出したの古い短剣。
「……?なにか込められてるのかしら?
不用意に抜くのは危険ね。」
なにかを察知した王女は短剣をテーブルの隅に置き。
古代遺物、お金が入った袋。空の小瓶。木の実。
次々と取り出し。
薄汚れた3つの物体に手を伸ばす。
汚い物を片手でつまむ様に1つを持ち上げる。
それは人形。目元はボタン。口元は色のついた糸。
可愛らしいがかなり精巧な人形というのが理解出来た。
メガネをかけた優男。表情はない。
それを興味なくテーブルに置く。
次に取り出した人形は 人間の女性に似ていた。
決定的に人間ではないのは。
耳の位置。耳の形。耳の特徴。
その人形は獣耳の女性を模していた。
表情はやはり無表情。
王女は呆れたように鼻を鳴らす
「フンッ。自分の人形を造ってますの?
気持ち悪い種族ね。」
亜人の人形をテーブルに投げ捨てる。
「最後も……人形……あぁー!気持ち悪い!…………。」
バッグに残された最後の人形。
王女はつまむ事はせずに両手で掬うように
優しく抱き上げる。
黒髪を束ねた女性。片目のボタンはホツれ
眉は下がり口はヘの字。
悲しい表情をしている事は一目で理解出来た。
「…………。」
王女は何故かその人形にだけは興味を示した。
魔導書を見た瞬間察した。
亜人は魔法使いだ。ならば呪いにも正通している。
父を助ける術が何処かにあるかもしれない。
そう思い。亜人の持ち物を漁っていたが、
何故か人形から目を離せない。
そして見つける着させられた服の襟首の刺繍
《03 エリス.カーティス》
「エリ……エリス?……エリス!!」
エリザベスは立ち上がりテーブルを見渡す。
テーブル転がされた獣耳の襟首を確認する。
《01 リア.カーティス》
「…………。……リ……亜人はまだ殺してないわよね!?」
返事も待たずに扉を開け放ち地下へと向かうエリザベス。
賊はまだ潜んでいる。その事など気にも止めずに。
それ以上に重要な事。やっと見つけた手掛かりの元へ




