第57話 接触
舟から降りると役目を終えたかのように潮に流され。
アッと言う間に沖まで運ばれてしまっていた。
「斡旋所は……流石にありますね。
あまり仕事がなければ次の街に向って稼ぎましょうか」
港町。普段港町などはどこも栄えてはいないが
此処は太陽の島をつなぐ港町。
太陽の島行きをキャンセルする人を更に待つと言う
物好きが多数押し寄せ結果……
宿屋などは常に満員だった。
「さっさとこの場所は出ましょうか?
町の出口で待ってなさい。あたしはお金を貰って来るから」
「……ジェシカさん大丈夫ですよね?
貰うとか言ってるんですけど……稼ぐんですよね?」
「どっちでも一緒でしょ?」
ジェシカさんは適当に辺りを見つつ姿を消していった。
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「……待つってこの辺りで良いのかな?」
人通りが少なく見晴らしの良い場所。
目印になりそうな大木にチョコンと腰掛け
金を貰うらしい金髪の少女を待つ。
「多分知り合いがいてその人に借りるのかな?」
そう言い聞かせて自分を納得させる。
程なくすると二人の人影がリアに向かい歩いて来た。
一人はとても大きく……5メートル程。
蛮族の子供だろうか?
北に住む蛮族の大人は背丈は10メートルを楽に超える。
もう一人はとても小さい。120程の女の子。
二人は一直線にこちらに歩き。
そしてリアを見下ろす。
「失礼。亜人の魔法使いだな?少々聞きたい事がある。」
大男が丁寧な口調で決して高圧的ではない態度で
リアに対して片膝をつく。
「…………。」
リアは答えない。魔法使いなど自分から喋る
メリットなどない。ましてや会った事もない人物に。
「ふむ。ファティマを知っているな?
1週間前に《悪魔の法》を使った。間違いないか?」
リアの額から脂汗が滲み出る。
答えてもいないのに断定されている。
そして魔法の使い方……更に力を使う条件を知っている。
この大男は魔法使い?違う!この存在は
「落ち着け。貴様と事を荒立たせるつもりはない。
ファティマが消滅した。貴様に力を貸したのを最後に。
我はその原因を突き止めたい。何に力を使った?」
リアは考え込む。声に出さず。
1週間前……間違い無く金髪の少女ジェシカに戦意喪失の
魔法を使った。悪魔の力で。その後悪魔が消滅した?
「……大した事はしておらんな。
その程度で消滅させられたなど我も納得いかぬわ。」
この大男は思考を読んでいる。
こちらの考えを波紋を伝えるように
まるで吸い取られるように読まれている。
小さな女の子。銀髪の少女が空に手をかざす。
「この亜人は 危険 」
「殺るならお前が責任をとれ。我はトルコマンと
違い、ソナタに助言などせぬ。」
大男が立ち上がった瞬間。
リアは一目散に駆け出した
「ハァ!ハァ!…………悪魔!なんで悪魔が……二人も」
私に力を貸した悪魔が消滅させられた?
誰に?そんな事が出来るのは龍種だけじゃないのか?
私は何も関係ない!一度身を隠してそれから……
「がッ……ああア」
空からの穿孔がリアの脇腹を抉る。
小さな足跡を立てて銀髪の女の子が近づいて来る。
脇腹からはドロドロと血液以外の物が流出している。
それに驚いたのは他でもない自分自身。
「何?これ?」
脇腹を触るとウネウネした不定形の物体が
再びリアの体内に入り込もうと藻掻く。
「亜人 何故魔物を 使役している?」
「魔物?知りません!私は何も知りません!」
銀髪の女の子は瞳を閉じ指を回す
「確実に 殺す 昼だけど 問題無い 筈」
「一周目……」
少女は指で小さな円を描く。
暗黒のが人差し指に集まり
「二週目……」
一回り大きな円を描く。
周囲の闇全てを取り込んだかのような漆黒。
リアは悟る。自分の死を。
紅い髪の少女。アサミが似た事をやり周囲を爆発四散
させた事を忘れてはいなかった。
流出した不定形が短剣をリアに握らせていた。
「これ……アサミさんのお父さんの……魔剣」
「死ね 混合種」
指をリアに向けて振り降ろす。
同時にリアは短剣を抜き刃を銀髪の女の子に向ける。
「月雫」
光が天に向かって照射される。
それで終わり。何も起きない。これから起きるのか?
「 なんで ワタシを 否定するの!?」
銀髪の女の子は空高くそびえる太陽に向かって
語りかける。偉大なる物を直視した眼球は焼けただれ。
それでも少女は太陽を直視する事を止めない。
リアは訳もわからずに魔剣を悪魔に向けている。
「クレッセント!地の底へ隠れろ!」
大男が叫びをあげる。
しかし銀の少女はそれを無視するように
太陽を直視し続ける
「あぁぁああア!! なんで!? なんで!?
ワタシは 太陽アナタを 愛してるだけなのに!」
焼けただれた眼球はまるで涙の様に少女の頬を伝う
そのまま崩れ落ち大地に両手両足を付きガックリと項垂れた。
「……。気が済んだのならその魔剣を収めてやれ。
我は貴様を殺してまで事を収めようとは思わん。」
大男はリアに向けて言葉を述べる。
「え?……ハイ。」
ギキン 鈍い納刀音を響かせると何かが消失していく
「ウッ。うぅ〜 なんで? なんで!?」
銀の少女は泣き崩れたまま。
大男はその光景に軽い溜息を吐く。
「これだから赤子の子守は嫌なのだ。
亜人の魔法使いよ。落ち着いたらこちらから接触を計る。
立てクレッセント。一旦帰るぞ。」
「イヤ! ほっといてよ! デカブツ!」
銀の少女の片腕を掴もうとして払われる。
深い溜息を吐き、もう一度腕を掴もうとしたその時
「待ちなさーーい!!」
元気の良い声が響く。風が声を運ぶようにとても透き通った声。
「レディを泣かせる悪者はこのあたしが許さないわよ!」
金髪の少女が一瞬で3人の間に入り込む。
「ジェシカさん!?なんですかその仮面は?」
リアは素っ頓狂な声をあげる
目元を覆う仮面。それは蝶を彷彿とさせる
パピヨンマスクを身に着け
「ジェシカ?勘違いしてるのね。あたしの名前は
ゴールド.J!正義の味方よ!」
軽い目眩を抑えつつ立ち上がるリア。
誰がもう見ても彼女はジェシカ.ドーソン。
本人だけがバレないと思っていた。




