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GOD HAND  作者: ホムポム
第5章
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第56話 迎えに行こう

太陽の島に降り立ち1週間。


リアは巨大な屋敷に身を寄せ

魔狩人とシェリルは島の宿で観光を満喫していた。





リアは何度も屈伸し

「……よし。」

全身を動かし確認する。身体が思い通りに動く。

リハビリと称して屋敷の子供達。

親が居ない孤児らしいが、その子達と色々遊んでいた。



この場所に種族の差別などなかった。皆平等。

いや、唯一の不平等は人気の遊び《戦いごっこ》は

ジェシカさんがいつも悪者役だった。


何と言うか……ぴったりだ。



……………………



「あたしよりも強いケモ耳がいるから他に人は

要らないわよね?」


ジェシカさんは髪をかきあげながら確認する。

そして誤解している。


私がジェシカさんより強い?冗談じゃない!

彼女が指を向けるだけで私は消し飛ばされるのに……

誤解だけは解いておこう。


「あ、あのジェシカさん?私よりも貴女の方が

何百倍……いやもっと強いですからね?

私はたまたま」


「他人のあたしを持ち上げるなんてアナタ、

中々のレディじゃない?気に入ったわ。」


聞く気がない。また今度説明してみよう。


見送りはアサミさんと両親。

魔狩人先輩とシェリル先輩は先に斡旋所に帰ってしまった。

二人共名残惜しそうだったが緊急らしく

渋々と行った感じだった。


「…………。」

2枚の紙を改めて見る。


1枚は斡旋所のマスターから。

私がやりたい事が見つかったと手紙を頼んでもらった。

その返信。



〈リアくん。君がやりたい事が見つかって良かった。

君が離れても、僕達は仲間だ。

困った事があれば遠慮せずに相談してくれ。

               A.へロー   〉


ありがとうございます。マスター。

私の我儘なのに仲間と言ってくれて。



もう1枚。謎の紙。


〈私は先生の事を教えて貰いました。

もう5回目だそうです。

なので今回を最初で最後にしたいと思います。

覚えていないだけで間違い無く

私は何度も先生に会いに行っているそうです。

どうか今回こそは、覚えていますように。

私の手紙が必要ありませんように リア.カーティス〉



私の目的。太陽の島に居る筈のイーディス先生に会う事

何故なのか私は何度も聞いて何度も忘れているという。


私の筆跡。間違い無い。

まだ会ってくれないだけだ。私が一人前になれば……

イーディス先生は会ってくれる。



小さな舟に乗り込む。船員も居ない。

漕ぐ為のオールもない。浮かぶだけが目的の舟。


「アサミさん。出来るだけ早くマリーさんを

連れて来ますので」


「うん!リアちゃんもお姉ちゃんも気をつけてね!」



ジェシカとリアが小さな舟に乗り込むと

「これ。君の短剣溶け落ちてたから代わりにあげるよ。」


アサミさんのお父さんが私に手渡してくれた。

随分古い短剣だなぁ。手入れは……されてないかな?

最近使われた形跡がない。


「ありがとうございます……失礼します。」

鞘から刃を確認する。


黒ずんだ刃。錆び付いた匂い。

人を傷付ける事は不可能という事は一目で理解出来る。

何より……これは……


何度も何度も血を啜っている。それも強大な力を。

極上の血を啜り短剣の意思とは無関係に成長した剣。



「君の先生は俺に『使わないに越した事はない』と言って、

無償で力を貸してくれた。

だから俺からも言わせてもらう。

それを使えば大抵の出来事は解決出来る。

使わないに越した事はない。君を守る為の短剣だ。

誰かを傷付ける為の短剣じゃない。」



「……はい。心に刻んでおきます。」


これは……この短剣は魔剣だ。

本で読んだ事はあるけど実物を初めて見た。



「……あたしにも……なにか頂戴よ。」


「ジェシカは別に要らないだろ?強いんだし。

……ドングリで良かったらあげるよ。お守りにでもしたら?」



「も〜。ジェシカちゃんにはこれをあげちゃおう!」

アサミさんのお母さんが小さな袋を渡す。

ジェシカがチラリと中を覗き込むと……


「……これって。」


「島の外は危険なんでしょう?きっと守ってくれるよ。」


「……うん!ありがとうミカお姉ちゃん!」



「……そろそろ良いみたいだよ〜。

忘れ物はない〜?…………それじゃあ

二人共気をつけてね〜!また一緒に寝よ〜ね〜!」



アサミさんのお母さんが手を振ると潮の流れが途端に

変化していく。ゆっくりと島から離れ

ボンヤリと見える大陸へと確実に進んでいる。



「お姉ちゃんリアちゃん!

あたし待ってるからねーー!」


アサミさんは私達が見えなくなるまで

ずっと手を振り続けていた。



…………


……………………


「よっぽど気に入ったの〜?あの子のこと〜。」


「ん?気に入ったっていうか……心配かな?

ジェシカと一緒だぞ?俺なら胃薬が必要だよ。」


「フフフ。ジェシカちゃんが聞いたら怒るよ〜。

それにあれがあれば大丈夫だよ〜。

二人の分もあるからね〜!特別に今あげちゃおう!」


ジェシカに渡した物と同じ物を父と娘に手渡す。

母が苦労して作ったであろう手作りの一品。


「……ママ……ありがとう」

「……ありがとう……。勿論ミカの分もあるんだよな?」

有り難くもないのにお礼を言わされる父娘。



「ある訳無いじゃん!恥ずかしい〜!」


「「……へぇ。」」




ーーーーーーーーーー


「これは……術ですか?潮の流れにのるだけで

舟がどんどん大陸に近付いてますが……それに速い。」


何より全く揺れない。

まるで陸地を歩いているかのような安心感。


「ミカお姉ちゃんの力よ!安心して良いわよ!」

ジェシカさんが自分の事のように自慢する。


「…………。」

ジェシカはポケットをゴソゴソしながら

島の方角を見定める。



「……お金。忘れたわ。」


「ジェシカさん。私少なからずお金持ってますので。

あまり無駄使いは出来ませんが大丈夫ですよ!」


「ケモ耳!アナタ役にたつわね!」



バッグに500ルドン程入っている。

ヴァイス王国までは流石に足りないかな?

2人分の食費……仮に足りてもその後の事もある。



「王国までは保ちそうも無いので近くの街で

稼ぎたいのですが、それでも良いですか?」


ダメかな?でもお金がなければ何も出来ない。

一旦もどっでお金を取りに行く案もあるが

私のお金では無いので自分から提案は出来ない。




「稼ぐかぁ……。久しぶりね。

その街に長く滞在しないならあたしが稼ぐわ!」

ジェシカさんは自信たっぷりに胸を張り 


瞬間


悪寒が走る。

「ジェシカさん……危険な事はやめましょうね?」




何と言うか大丈夫だろうか?





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