第52話 刻まれた恐怖
「この辺で良いかしら?村の人に血生臭いのを
見せるのも嫌だし。」
金髪の少女はくるりと身を翻し
ワンピースの裾を持ち上げ丁寧にお辞儀する。
「名前を言ってなかったわね。あたしの名前は
ジェシカ.ドーソン。アサミの保護者よ。」
「リアです。約束して下さい。
貴女が謝ったらアサミさんの好きにさせるって。」
ジェシカは髪の毛をかき上げならが悠然と言い放つ。
「勿論良いわよ。でもアナタが謝ったら金輪際。
島には来ないでちょうだい!殺しはしないから安心なさい。」
リアは返事はせずに短剣の鞘を抜きその場に投げ捨てる。
その光景に少しだけキョトンとしながらも理解する。
「あぁ。降参するのね。アナタここまであたしを
怒らせておいて 今更済むと思ってるの?」
「…………。」リアは無言で大地を両手につける。
パン 小さな炸裂音がリアの両腕に小さな穴を穿つ。
「フン。流石 詐欺師の弟子ね。」
出血が大地を滲ませる。
「い……痛い……貴女は……魔法使いに言ってはならない
言葉を言った。私は……それを抉る。容赦はしません。」
四つん這いになりながらもジェシカを睨みつけるジェシカ。
リアは動かない、ボソボソと喋るだけ。
聞き取りにくい。聞く気もない。
「…………………………。」
短い時間。リアは動かない。
「もういいわ。アナタが動かなければ、
あたしからやるわ!いつ謝るのかしら?」
ジェシカは歪な笑みを浮かべながら指をリアの腹部に向ける。
「ジェシカ!今からでも遅くないならその子に謝った方がいい。
この子はヤバい事をやろうとしている。」
「……ジェシカちゃん……わたしからもお願い。
わたしの言う事を聞いてくれるよね!?」
「……?このケモ耳が気に入ったの?良かったわね。
内臓は止めておくわ。四肢に限定してあげる」
アサミの母と赤い髪の青年は理解した。
リアが何をやるのかを。
青年に至ってはその魔法を使った事がある。
わかってないのは……ジェシカと……
「ねぇパパ!二人を止めてあげて!
リアちゃん傷付いてる!
ママ!リアちゃんを治してあげて!
あたし……あたしもう島から出たいなんて言わないから!」
アサミの二人だけ。リアは振り向かずに語りかける。
「大丈夫ですよ。アサミさん。
ちょっとだけお姉さんに謝ってもらうだけです。
それは……とても簡単な事なんです。」
「……ジェシカ……それを…………見るな……」
パパと呼ばれた青年がジェシカに警告を促す。
「五月蝿いわね!もう終わらせ…………あ……アア……
ち……違うの!そんなつもりじゃなかった……あたしは……ごめんなさい!ごめんなさい!あたし……あたし……」
突然空中の何かに目を心を奪われ怯えだすジェシカ。
その光景に目を瞑るアサミの両親。
リアはゆっくりと立ち上がり
「謝りましたね?約束を守って下さいくださいよ?」
「あぁぁああアァア!!やめて!やめて!やめて!」
その場で溺れた様に藻掻く少女。
「……え?ちょっと……大丈……なんで?」
ーーーーー
なんでここまでの効果になってしまっている?
私がやったのはただの戦意消失だ。
人間の恐怖を抉り出して戦意を亡くさせる魔法。
アサミさんのお姉さんは殺すのは嫌がっていた。
何らかのトラウマを抱えている。
魔法使いに対しての禁句 それは
『自らの弱点を喋ってはならない』
魔法使いはぜったいに弱点を抉る。徹底して抉る。
抉る方法を模索する。弱点を炙り出す。
お姉さんが私を殺せない時点で……
1回限りなら……初見なら私はこの少女に……勝てる!
でも……これは……
誰でも効く変わりに効果は見込めない。
恐怖の無い人間は少したじろぐ程度だ。
あそこまで怯えるなんて……
私より年下なのに、どれだけの恐怖を抱えていたのか?
でも結果 効いてしまっている。必要以上に……
これ以上魔法を解除しなければ……あの少女は……
精神が 壊れる。
少女人間駆け寄り両肩を掴み。「ッツ〜〜」手が痛い。
いや痛いのはアサミさんのお姉さんの心だ。
私の手の痛みはそのうち治る!今は
アサミさんのお姉さんにかけた魔法を解かなければ
「落ち着いてください!……動かないで…………よし!
大丈夫ですか!?スイマ…………コブッ……ガハァッ……」
口から大量の血液を流し
腹部は空っぽ。服も皮膚も骨も内臓も消し飛ばされている。
倒れる間際 金髪の少女が指を向けて
涙を流しながら私を見つめていた。
……お姉さんに……腹部を消し飛ばされたのか……
流石に…………簡単な訳ないですよね?
でも確かに……謝りましたよね?
私は…………勝ったんですよね?
視界1面赤に覆われている。あぁ。先生……エリスさん。
何が起こったのか……でも、もういいや。疲れた。
エリスさんに会えるかな?約束…私生きたいように………
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ジェシカは見てしまう。赤い髪の忠告を聞かずに。
自分はどんな事が起きようとも対処出来る自信故に
このケモ耳……魔物でも召喚する気なのかしら?
ちょっと面倒だけど、流石に2.3体が限度でしょう。
にしても……どうやって謝らせれば良いのかしら?
何発か撃ち続けたら謝ってくれるかしら?
正直あんまりレディを傷つけたくないわね。
少しだけ首を振り決意を秘める。
ダメよ!あたしが弱気になったら……アサミを守れない。
あたしは、お姉ちゃんなんだから強くならなきゃダメ!
お願いだから……早く謝って……ケモ耳……
アサミの悲しむ顔を見たくないの……お願いだから……
諦めて
ジェシカはリアに目線を落とす。
両手両足を地面につけた亜人に見据え……
当然視界に入る。入ってしまう。
鞘から抜かれた鉄の…………今は刃は無い短剣。
短剣の刃は溶けていた。
ドロドロと地面と同化していき。1つの形を創り出す。
少女にとっての恐怖の対象を……唯一の絶望を……
「あ…………あ…………アナタ……は……」
『君にとっての恐怖は僕なのかい?』
溶鉄は色を声をつける。大地が……空が心をつける
それは頼りない優男。しかし少女にとっては紛れもなく
『君に習って僕も名乗ってあげようか?
自己紹介は結局出来なかったからね。
僕の名前はイーディス.へロー
リア.カーティスの……先生だ』
その恐怖はジェシカの心に具現した。




